第15話

その時も、荷物を資材室に一人運ぼうとする彼女が目に入った。





誰かに頼めばいいのに、重い荷物を一人抱える彼女。



それに、声をかけようとした。




一緒に行く、と。






「智也!これどーする?」




その瞬間、クラスメートに声をかけられた。




「さっき説明しただろ!」




気が急いて思わず語尾が乱暴になる。




「わっかんねーよ。こっちこいって!!」



「だから…」



「雨宮。」




クラスメートに言い返そうとした瞬間、広輝が唯子を呼び止める声が聞こえた。




「野原。なに?」



「ちょっと、力抜け?雨宮のキャパそんなないでしょ?」




そう言って、広輝が唯子の荷物を奪ったのが目に映った。




「これ、資材室に運べばいーの?」



「・・・え。うん・・・。」




唯子の戸惑った様な声が妙に頭に響く。




「オレが帰ってくるまでサボりなさい。」




広輝の分かっている様な声が耳に障る。








「・・・あたしも、一緒にいく・・・」









唯子が、嬉しそうに、少し控えめに、そう言ったのが聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る