第26話
卒業式の日まで一週間。
私とりっくんはその日から一度も口をきくことは無かった。
川野のおばさんからりっくんの引っ越しの日と、そうちゃんが帰ってくる日を聞いて。
ああ、本当にりっくんの口から何も聞くことなくりっくんは行ってしまうんだなぁと実感した。
『空くんが大学生になる時はあんた大泣きしたのにね』
お母さんにはそうからかわれ、もうそんな子供じゃないからと私は泣きも笑いもせず返した。
それでも、そうちゃんがいなくなってしまう時よりもぽっかりと心に穴が開いてしまったみたいだった。
りっくんはそうちゃんと違って、本当に私から離れて行ってしまうんだと……
そうちゃんはお兄さんで、私の憧れの人で、手が届かないと思っていた人だった。
けどりっくんは私の双子の片割れみたいに思っていた人だったから……
いつでも手をつないでいた人だったから……
まるで半分を失ってしまったように引きちぎられた心が痛くて、一人になればまた、涙が込み上げた。
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