第7話
「りくー!」
ポーンと、高くボールが上がると同時に男子生徒の叫び声が聞こえた。
ボールの落下地点を予測し走り込む複数の男子達。
二人がジャージを着ていて、一人は半そでの体操服。
ジャージを着ているか着ていないかでチームを分けているんだろう。
(頑張れ……っ)
競り合う彼らの中で、頭一つ出たのは半そでの男子だ。
三人中ではひときわ背の高い男の子が胸でボールをトラップする。
太陽の陽を受けた僅かに赤みがかった髪が煌めいた。
「陸! 決めろー!」
彼の足もとに収まろうとするボールを諦めることなく奪おうと競り負けた男子達は体制を立て直す。
地面にボールが着いてからでもまだ間に合う筈だ。
けれどその一瞬前。
ボールが地面につくよりも前に、彼は宙に浮くボールを思いっきり蹴り出した。
ゴールキーパーは反応できず、ボールが緑色のネットを揺らす。
彼はその場でガッツポーズをして、後ろからパスを上げた男子に飛びつかれ、襟足まで伸びた鳶色の髪が揺れる。
「陸かっこいー!」
「川野くーん、すてきー!」
同じクラスの女子が茶化すように、でも多分半分以上は本音で、黄色い声を上げ、パスを上げた男子が自分のアシストのお蔭だと不平を言っているのが想像できた。
ゴールを決めた彼は女子のからかいに応える為に軽く手を挙げて、またボールを追う為に走り出す。
(いいな……)
その姿を、遠くにいる彼を、私はぼんやりと見つめていた。
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