第4話

「私は、そうちゃんのことが好きなの」


「……俺も、モモが大好きだよ? でも……」


「そうじゃなくて、妹みたいじゃなくて……そうちゃんが好きなの……」



そして私は、いつからかお兄さんみたいにじゃなくてそうちゃんを好きになっていた。


憧れが恋に変わるのはそんなに不思議なことでも劇的な変化でもない。


いつも優しくて、私よりもずっと大人だったそうちゃん。

そんな彼の同級生の綺麗で大人に見える女の人たちが、私は羨ましくて堪らなかった。



――空は桃子みたいなガキ相手にしないだろ……



同じ歳のりっくんは、そうちゃんに比べれば一緒に過ごす時間はやっぱり長くて、そんな風にじわじわと芽生えた私の恋心に早々に気が付いていた。


りっくんにはいつもそう言って私をバカにして、ひどいと思いつつも私も心のどこかで納得してた。


そうちゃんは綺麗で優しい大人の女の人を好きになって、きっと私は永遠に妹なんだと。



だから、四年前のその告白は、勢い余ったものでしかなくて。

私にとっても予定外の出来事で……


そうちゃんはものすごく驚いた様に目を丸くして私を見ていた。


私ですら自分の言葉に驚いて癖に、そうちゃんの表情に私は傷ついて、ふて腐れたように目を逸らした。



「……もういい」


「モモ!」



どうしたらいいか分からなくてついに背を向けてしまった私を、そうちゃんは焦ったよう引き留める。



「モモ。今のは本気?」


「何それ! 私はずっと……」


「……俺で、いいの?」



そうちゃんは頭が良くて、なんでも知ってて、英語も数学も、私の好きなことも嫌いなことも全部知ってて答えてくれて。


優しくて大人で、私の憧れで……


だから、そうちゃんから何かを問いかけられるなんてことは滅多になくて……


そうちゃんより素敵な人なんている筈がないなんて事は私には分かり切ったことで……



だから、初めて聞いたそうちゃんが不安気に問いかけるその声に、私の方が不安になった。



「……私は、そうちゃんがいいの……」



そんな不安を払拭するかのように、私はそうちゃんを強く見返した。

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