第3話

けれど、四年前。


春を待ちきれずに桃の花がほころび始める頃。


私たちは初めて、三人一緒にはいられなくなった。



私とりっくんより4歳年上のそうちゃんの、大学進学という至極まっとうな理由で。



「俺はモモのこと大好きだよ」



それなのに泣いて寂しがる私にそうちゃんは言った。



「嘘だよ。それならどうして遠くに行っちゃうの?」



小さな子供みたいに我儘を言う私に、そうちゃんはただ、少し困ったように微笑んでいた。



「私の傍にいるのが嫌になったの?」


「そんなわけないだろ……」



中学生だった私は大学進学の意味を100%は理解できていなくて、将来の就職の為とか、学びたい分野があるとか、とても頭がいいそうちゃんにとって地元の大学は物足りないだとか、そういう大事な事を分かっていなかった。



ただただそうちゃんが離れて行ってしまうんだということだけしか理解できていなくて。

ただそれが哀しくて、そんなのは嫌だといつも優しい彼に訴えた。


小さな子供をあやす様に私の頭を優しく撫でるそうちゃんの腕を私は強引に振り払ったことを覚えている。

子供扱いされることに腹立って。



そんな私は、本当にどうしようもない程に子供だったと今思い出せば呆れてしまって恥ずかしさばかりが込みあがる。


それでもそれは、幼い私の精一杯の意地だった。

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