第53話

頭がついていかない。




あたしの家の住所をスラスラと慣れた様に言う男はいつものあたしの知ってる和泉俊樹。




いつも、あたしの隣にいる男。






けど、いつもと違う、離される事の無い手の熱・・・。






いつもと全然違う音を奏でる心臓は、気が付かない振りをするにはうるさ過ぎて・・・。








「オレが狙いを定めたら罠を張って待つタイプだって知ってるだろ?」




なんて不穏な事を言いながら笑みを浮かべる男。






さっきまで泣きそうだったあたしは今、別の意味で泣きそうだ。








あたしは、又、勘違いをしてたんだ・・・。





いつも隣にいる草食動物だと思っていた男は、優しい皮を被ったハンターだ。






本当に、あたしは男を見る目が無い、らしい・・・。

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