第52話

「・・・い、いい男、限定って言ったでしょ!?」




気が付きたくて無くて、焦って言ったあたしの声は、必死で虚勢を張ってる様にしか聞こえない。



そんなあたしにふっと、勝ち誇った様な笑みを浮かべる男。




「水澤のいい男の条件ってなんだっけ?」



「だから、顔が良くて、」




ーー和泉って顔はいいのにねー。




「優しくて・・・」




ーー優しすぎるからだめなんだよ。




「仕事、出来て・・・。」




ーーあんたに負けてるのが1番悔しいのよ!!




「あたしの事・・・。」




え?嘘・・・だよ、ね?









「条件、ピッタリじゃん。」





そう言って、楽しそうに笑うのはいつだって隣にいた筈の男。




「嘘・・・でしょ・・・?」




その問いに、今度は優しく微笑んで・・・。




「帰るぞ。」




そう言って、和泉は目の前に止まったタクシーにあたしを引っ張り込んだ。

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