第15話

薄暗い闇夜に湯気がもくもくと立ち昇っているのが目指していた目的地の目印。



暗くて決して治安の良く無い少し裏の通りにやけに眩しいライトがどうにも哀愁を漂わせる。



あたしは張り切って、馴染みの屋台の風除けのビニールを掻き分けた。




小さな屋台で、でも美味しくて密かに有名で。



実は金曜日の夜は行列が出来る人気店だったりもする。





前は同期みんなでよく夜食を食べにここに来た。




屋台の中に入り切れなくて、寒い寒い、と喚きながら外で食べたんだっけ……





「おっちゃん、生二つとあたし豚骨ね」



「俺醤油」



「おー。お前さん達久しぶりだなぁ」




クシャクシャの笑顔を見せる老年の店主とはもう顔馴染みだ。




「おっちゃんのラーメンが恋しかったの」



「奈々ちゃんはいつも嬉しい事言ってくれるよな」



「仕事中じゃないから100パーセント本心お世辞なし! ってか和泉。なんでそんなサッパリなの!? ここ来て豚骨スープを飲まないなんてあり得ない!」



「俺明日も仕事なんだよ。ニンニク入りは無理」



「この草食系!」



「意味わかんねーよ!」




ケラケラと笑いながら話す意味は無く、変わることのない会話は心地良かった。

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