シャチホコ十一匹目 ドラマチックな前世が立て続けにわかりまーす!

 だからこそ、信じられないと申しますか。

「ついでにお聞きしますが、どのような前世だったのですか?」

 まあ、そうですわね。

 まず、古代エジプトの巫女で、風詠みの力を持っていましたが恋に落ちまして、男を愛して結ばれるのですが、そのせいで「力」を失い、それを死ぬまで後悔していました。

「何かどこかで聞いたことのあるような、話ですな。まあでも、他にもあるのですよな?」

 N様、さすがにお鋭いですわっっっ!

 ですが、それは後で言及するとして、次の前世は平安時代の貴族でした。

 多分、中流の貴族ですね。

 紫式部のように物語を書くのが好きな女性だったのですが、旦那にそれを世に出すことは反対されておりました。

 どうやら、紫式部のようなことをするのは「はしたないこと」だと、その頃は思われていたようです。

 なので、物語は書くものの読んでくれるのは旦那だけ。

 真面目で良い夫だったようですが、「私を縛った人。本当にやりたいことをざてくれなかった」という思いを死ぬまで抱いていたようです。

「なるほど……お屋形様が憧れるあの世界は、決して優雅なものではなく、ある意味『恥べきこと』だったのですな」

 そうですわね……。

 「女」は「家」にいろという時代でしたからね。

 風のように自由に生きていける時代ではなかったのでしょう。

「……。あ、他にも何かあるのですか?」

 後はそうですわね―、とある大名の側室でした。

「おおっ! それはっっっ」

 奥方様に仕える侍女の一人でした。

 一生懸命働いていたら、その夫である大名の目に留まったらしく、側室になっちゃったんですよ。

 子どもも一人、女の子ですけど跡継ぎを産みました。

 その子以外、大名には子どもがいなかったみたいなので。

「大出世とは思わなかったみたいですね、そのお顔では」

 だって、奥方様がいたんですよ!? 

 大名は良い方でしたし、わたくしを大切にしてくださいました。

 娘もかわいかったですけど……。

 侍女の頃に戻りたくて戻りたくて仕方なかったみたいですわ。

「どうしてですか?」

 だって自由がないんですよ!?

 大好きだった奥方様を哀しませて、「奥」と言われる場所に閉じ込められて……いっちょんいいことなかったですがっっっ!

「前世から、貴方様はあまり変わっていないような気もしますぞ……」

 そうですか?

「まるで、風のように自由に生きることを求めるところは、一貫して同じです。あなたにとって、『結婚』とは、あなたを『縛る』ことであることも」

 ぎっくーん!

「今も独身であわれるのは、失礼ならが、それがトラウマになられているのでは……と―待たれよ!」

 はい?

「前世がわかっても、それで開運しなければ意味がないではないですかっっっ!」

 本心全開にされしたわね……。

「ですがそれが、この体験談を読まれている方々の本音であろうっっ!」

 と言うか、今気付いたのですが。

 わたくし、今気付いたのですがっっっ!

 N様が、出だしからついさっきまで、突っ込みをしていらっしゃいませんっっっっ!

 何があったのですか、N様っっっっっ!? 

「ふっ。そのようなこと、当たり前でござろうっっ!。前回に続いて今回もこのように長期に待たされれば、無駄にあがいても意味はござらぬ。わたくしのくだらぬ足掻きで読者の方々をお待たせするとは、愚の骨頂っ」

 すいません、愚の骨頂の極みで。

「なれば、きちんと説明をされいっ! この『前世』とやらを知って、どのように開運するのかを!」

 よーするに、トラウマを癒すんですよ。

 「催眠」を使って、前世で傷ついた出来事を癒すことが、このヒプノセラピーの目的でもあります。

 ちなみに、幼少時に傷ついたトラウマを癒すのも、ヒプノセラピーでは行ないます。

「催眠!?」

 あ、はい。催眠を使って、自身の記憶を探っていくんですよ。

 逆行催眠と言う―

「何を暢気にされているのですか! 催眠と言えば、人を操る恐ろしい幻術ですぞっっっっ」

 えーと……。

「その方を催眠状態にして、自由に操り殺人を起こさせ、挙句の果てには自殺させると言う、恐ろしいものでござろう!!!」

 誤解ですから、それ!

「はい?」

 N様、それ誤解でございますっっ。

 というか、何ですか、そのどこかで聞いたことがあるような、そのストーリーは!

「テレビで拝見しましたぞ!」

 テレビを百パーセント信じるのは止めてくださいませっっっっっ。

「それでは、嘘なのですか!?」

 基本的にですね、ヒプノセラピーの催眠状態って、眠っていないんですよ!

「それで催眠と言えるのですか!?」

 言えるみたいです!(どきっぱり!)

まことですかっっっっ!」

 催眠と申しましても、眠っている状態に近いわけではないみたいですわ。

 何と申しますか……意識を持ったまま、自分の中の潜在意識に潜っていくような感じです。

「よけいわからないのですが」

 でも、本当にそんな感じです。

 わたくしの場合は、頭の中にイメージが浮かんで見えてくる、という感じでした。

 まあ、うすらぼんやりという感じでしたけど。

「何か、あんまり歯切れがよろしくないようですが」

 うーん、悪いのですけど、これは事実なのですわ。

「だから、これはイマイチだと思われたのですか?」

 それはないですね!(どきっぱり)

「即答ですか!」

 だって、確証がないのは、この体験談全部ですから。

 「目に見えない」「確証できない」のは、この体験談全てに言えますわよ。

「そ、それでは何故なにゆえ!?」

 それは後でお話するので、その前にヒプノセラピーについてもう少しお話させてくださいませ。

 ヒプノセラピーは、催眠を用いる精神療法の一種です。

 欧米では、療法家が協会を結成し、催眠療法士を認定する仕組みが一般的になっているみたいですわ。

 日本の場合、催眠は「医療行為」とは見なされていませんので、国家資格などはないんですよね。

 それから先ほども申しましたが、「催眠」とはその人の意識を失くして意のままに操るのではなく、己が意識はきちんと保ったままでいることができます。

 ただ、誘導する人が必要なので、ヒプノのセラピストさんに依頼する必要があるんですわ。

「大変不躾ですが、お値段はおいくらぐらいなのでしょうか?」

 だいたい一万円から三万円ぐらいだと思いますわ。

「高っ!」

 ほんとーに、御自分の心の内をしょーじきに叫ぶ方ですわねっっっっ!

「そうは申されてもですな、やはりできるだけお安く手軽に開運したいというのが皆様の本音でござろう!」

 そんな方々には、CDブックも出ています!

「おお、そうですかっ。ならば、そちらの方がお得なのではないですか!」

 寝ますよ!

「な、なんですと!?」

 実は、リラックスしすぎて、寝ちゃうみたいなんですよね★ 

 少なくとも私はそうでした。

「つまり何ですか、確実に成果を出したいのであれば、それなりにお金をかけなければならないのですか!」

 まあ、世の中そんなもんじゃないですか?

 ただ、絶対に効果があるとは保障できないのですわ、これが。

「それこそ、本末転倒ではないですかっっっ」

 でもそれは、この体験談全てに言えることですわ。

「それは幾度も聞きもうしたわっ!」

 まあ、効果があるないを決めるのは、結局ご本人ですからね。

「……そう言えば、あなた様は今回妙に歯切れが悪うございますな」

 ぎっくーん!

「効果のあるなしを決めるのは、読者様にまかせると申しながら、基本的にあなた様は『効果がある』と思っていらっしゃるのを紹介されておりましたものな……」

 そ、それは……。

「何故、このヒプノセラピーは、信じられぬのです!?」

 だって、あまりにもドラマチックすぎますもんっっっっ。

「はあああい?」

 わたくしの前世は、始めの方にも紹介しましたわ。

「古代エジプトの巫女に、平安時代の貴族の姫に、大名の側室に……何と申しますか、その時代時代の特別な身分の方々ではないですか」

 それ、有り得ないと思いませんこと!?

 だって、そもそも古代エジプトでの巫女の数なんてたかが知れていますし、平安時代の貴族の数なんてほんの数千人ですし、江戸時代の大名の側室なんて、いったい何人の人がなれたと思います!?

「何ですか、その現実的な思考は」

 だって、どう考えても庶民の数の方が多いじゃないですか!

 なのに、どの前世もその時代の特殊的な立場……ちょーと有り得ないかなあと。

 それに前世で体験した話も、どこかで読んだり見たりした話ばっかりのよーな。

「ほんとーに、どーして妙な所で現実的になるんですか」

 まあ、そうは申しましても、「前世療法―米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘」を書かれた精神科医のブライアン・L・ワイス博士によれば、そのようなことはよくあるそうです。

 ただ、「その出来事の本質は変わっていない」らしいんですのよ。

「……どういうことですか?」

 さあ?

「投げやりにも程がありますぞっっっ!」

 だって、わからないのですから、しょうがないじゃあないですかっっっ!

「よーするにや、あんたさんの場合は、どんな前世になろうと、『結婚は縛られる』という思い込みがあるっちゅーこっちゃな」

 こ、このけったいな大阪弁はっっっ!

「お、お師匠様!」

 L様、参上っっっ!

「まあ、確かに『やりたいこと』をすることをことごとく妨害されて、そんな思い込みが魂に刻み込まれたとも言えるで」

 そ、それは言えるかもしれませんわっっっ。

「どんな前世を送ろうと、『結婚は縛られる』という思いが見え隠れしておるもんな。つまり、あんさんの問題は、そこや。どんな前世を送ろうと、その思いを癒さんと前に進めんということやろ。ようはどんな前世になろうと、関係ないってことやな」

 ちゅどーーーーーーん!(爆)

 そ、それは考え付きませんでしたわ……!

「まあ、自分では効果がイマイチと思いながら、それでも公平に紹介しようと思うその根性は、天晴れやと思うで! 思いっきり、できていなかったけどな!」

 やかましいですわっっっっっっっ!

「まあ、でも。ようはご自分の根源を癒したいという方には、オススメの開運方法ではあると言えるのではないですか?」

 しかもN様はまとめに入っているし!

 でも、この流れを利用させてもらいますわっ!

 結局。ヒプノセラピーとは、そのようなものなのではないかと思います。

 ご自身の魂を癒して開運へと繋げたいという方には、利用してみるのも面白いかもしれません。

「ただし、料金は高いですぞ!」

 そこは念押しせんでもええわっっっ!


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