第二章:新たな犠牲者と進化する謎
神崎透は新宿のネットカフェに到着すると、すぐに現場に案内された。相変わらず夜の静けさが漂う街並みの中、暗いビル群に囲まれたその施設は、まるで時間が止まったかのように冷たい空気を放っていた。入り口を通り抜け、廊下を進むと、捜査員がすでに集まっており、現場が囲まれていた。
「神崎さん、こっちです。」
捜査員の指示を受け、神崎は現場に足を踏み入れた。
部屋の中央に置かれた、無機質な金属台の上には、新たな犠牲者の遺体が横たわっていた。彼の顔は川島俊介と同じく、まるでただ寝ているかのように穏やかだった。しかし、やはり頭部に異常があり、脳が完全に消失していることがすぐに分かった。
「名前は?」
「鈴木一郎、31歳、個人でIT関連のフリーランスをしていたようです。死因は不明、脳の消失も前回と同じです。」
神崎は深く息を吸い込んだ。事件は確実に同一の手口によるものだ。そして、鈴木一郎の遺体にも、まるで川島と同じように脳が消失した証拠があった。
「ニューロリンクの使用履歴は?」
「あります。死の直前まで、ニューロリンクを装着していたようです。」
捜査員が取り出したデバイスを神崎に手渡した。デバイスには鈴木一郎が使用したニューロリンクのデータが保存されており、同じく映像データが記録されていた。
「またか…」
神崎はパソコンに接続し、鈴木一郎が最後に視聴していた映像を解析し始めた。画面に映し出されたのは、鈴木が自宅でニューロリンクを装着している様子だった。最初の数分間は普通の映像で、彼がウェブを閲覧しているだけだった。しかし、突然映像がノイズに変わり、鈴木の顔が歪む瞬間が捉えられていた。
「助けて…脳が溶ける…!」
鈴木の叫び声が映像の中で響くと、画面は急激に暗転し、完全に消失した。
「これもだ…」
神崎は画面を凝視したまま、何かを思案している様子だった。ニューロリンクが原因だというのは明らかだったが、これまでの技術ではあり得ない出来事だ。システムが脳に影響を与えるなど、考えられないことだった。
「このままだと、第三の犠牲者が出る。」
神崎は心の中で確信していた。何かが起きている。この事件が偶然の連続ではないことは、誰の目にも明らかだった。
その時、再び捜査員が急ぎ足で部屋に入ってきた。
「神崎さん、新たな情報があります!」
「何だ?」
「鈴木一郎の遺体から、異常なデータが検出されました。」
「異常なデータ?」
神崎はその言葉に反応した。何か新たな手がかりが出たのだろうか。
捜査員は手元の端末を神崎に見せた。データ解析を進めた結果、鈴木一郎の脳波データに異常な波形が記録されていたという。それは、ニューロリンクのシステム内に存在するはずのない波形だった。
「この波形…見たことがある。」
神崎は一瞬、記憶をたどるように目を閉じた。突然、それが脳裏に浮かび上がった。
「Xコード…」
彼はその言葉をつぶやいた。そう、ニューロリンクの内部で働く謎のプログラム、Xコード。その波形は、彼が以前の調査で目にしたことがあった。Xコードは、特定の条件下でのみ現れるプログラムであり、その目的は謎に包まれていた。
「これが全ての鍵だ。」
神崎は即座に決断を下した。鈴木一郎のデータに関連するXコードの詳細を調査し、何が起きているのかを解明しなければならない。
---ニューロリンクの背後に潜むもの---
神崎は、鈴木一郎のデータと関連するすべての記録を手に入れ、さらに深い調査を始めた。彼の脳裏に浮かぶのは、かつて自身が手にしたニューロリンクの開発経緯に関する資料だった。あのシステムは、表向きは単なる脳波記録の装置として発表されていたが、裏では人間の意識をコントロールするための実験が行われていたという噂があった。
「まさか…」
神崎はデスクに広げた資料を見ながら、ある仮説に辿り着いた。ニューロリンクは、単なる情報伝達のための装置ではなく、使用者の意識を操作するためのツールであり、Xコードはそのコントロールを実行するプログラムなのではないか?
そして、その背後に潜む巨大な陰謀…神崎はその真相に迫ろうとしていた。
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