第19話 「香りの手紙」

郵便受けに、見慣れない封筒が届いていた。


差出人の名前を見て、息をのむ。


——祖母?


震える手で封を切ると、柔らかな紙の感触とともに、かすかな香りが広がった。

それは、祖母がいつも纏っていた香水の香り。


懐かしさに胸がぎゅっと締めつけられる。


亡くなって、もう半年。もう二度と会えないと思っていたのに——。


便箋に滲むインクの文字を、ゆっくりと目で追う。


「あなたなら大丈夫。自分を信じて生きなさい」


その言葉に、頬を伝うものがあった。


思い出すのは、祖母の温かな手。

優しく背中を押してくれた声。

いつも香っていた、あのやわらかな甘い匂い。


香りとともに届いた祖母の想いが、

心の奥にそっと染み込んでいく。


私はそっと目を閉じ、深く息を吸い込んだ。


「ありがとう、おばあちゃん」


「香りは、愛する人のぬくもりを残していく。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る