第10話 環境を守る一杯
朝の光が大きな窓から差し込み、カフェの店内を優しく包み込んでいた。いつものカウンター席に座った莉奈は、ふとレジ横に並べられたカラフルなカップに目を留めた。
「タクミ、これって何?」
カフェラテを作っていたタクミは、手を止めて微笑んだ。
「ああ、それはリユースカップだよ。今日からカフェで導入することにしたんだ。」
「リユースカップ?どうして?」
タクミは丁寧に説明を始めた。
「実は、世界中で使い捨てカップのゴミが大きな問題になっているんだ。コーヒー業界では最近、環境に配慮した取り組みが増えていてね。例えば、大手チェーンではリユースカップを持参すると割引があったり、一部のカフェではデポジット式のリユースカップシステムを導入したりしているんだよ。」
「デポジット式?」
「うん。カフェでリユースカップを借りて、使い終わったら提携店舗に返す仕組みなんだ。返却すればデポジットが戻るし、洗浄・再利用されるから環境負荷も減らせる。ヨーロッパやアメリカの都市ではすでに広まっていて、日本でも少しずつ導入が進んでいるんだよ。」
莉奈はカウンターの上のカップを手に取り、じっと眺めた。シンプルながらもおしゃれなデザインで、色も選べるらしい。
「なるほど……私も何気なく使い捨てカップを使ってたけど、意識するだけで変わるんだね。」
「そうなんだ。リユースカップを持ってきてくれたら割引もあるし、ちょっとしたことだけど続けることで大きな影響になるよ。」
莉奈は少し考えてから、棚の中から一つ選び取った。
「じゃあ、私もこのカップを買う!これで私も地球に優しくコーヒーを楽しめるね。」
タクミは嬉しそうに頷きながら、莉奈の選んだカップに温かいカフェラテを注いだ。カップの中から立ち上る香ばしい香りに、莉奈は自然と笑顔になる。
「ありがとう、タクミ。これからは、このカップと一緒にコーヒーを楽しむね!」
湯気の向こうで交わる二人の笑顔。カフェの新しい試みは、小さな一歩かもしれない。でも、それが積み重なれば、確かに未来を変えるかもしれない——そんな予感が、莉奈の胸に広がっていった。
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