第21話 報告

 やっといつもの静かな日常が返ってきた。相変わらず多くの作曲依頼が両親のもとに来ているが、つい最近まで大仕事をしていたのでまだ手を付けていない。以前よりかは依頼に前向きになってきたと思う。少しずつではあるが、色んな人に自分の曲を聴いてもらえるようにとやる気が上がってきたところだ。


 そんなある日のこと――


 朝倉圭から報告を受けた。


「奏よ、とうとう俺にも彼女が出来てしまった!」


「へぇー」


「なんだよ、反応薄すぎねえか?もっとさあ、あるだろ?お前の親友が彼女作ったんだぜ?おめでとうの一つもないのかよー」


 圭に彼女が出来たらしい。圭は女子人気が高いから、いつかは出来るだろうと思っていたのでそんなに驚かなかった。内心では褒めているつもりではあるのだが、どう反応していいのか分からずそっけない返事になってしまった。


「...おめでとう。よかったね」


「おう、さんきゅー!」


「どんな人なの?」


「奏も知ってるはず。同じクラスでサッカー部マネージャーの片桐結花かたぎり ゆいかだよ」


「........」


 片桐結花らしい。部活動体験に連れまわされたあの日の後に、圭はサッカー部に入ったらしい。同じクラスで同じ部活の彼女との関りが増え、付き合うことになったんだろう。


「まさか....、知らない...のか?同じクラスだぞ?!お前、同じクラスの人の名前を覚えてないのか?」


「えっと...ごめんね?」


「ごめんじゃねーよ!お前、それはヤバいって。流石に、もう少しクラスに興味持とうぜ」


 興味がないわけではない。と思う。そもそも、同性でも話せない人の方が多いのに、異性なんて話せるわけがない。そんな奴に、名前を覚えろというのは少し酷ではないかと、奏は開き直っていた。


「まあいいか。体育祭は終わっちまったけど、文化祭があるから大丈夫だろ。夏休みもあと少しで来るしな!」


「....そうだね」


 夏休みも文化祭も友達がもともといる人たちのための行事ではないのかと、口にしようとしたが、またお小言を言われそうだから心の中にしまっておくことにした。


 圭の報告を軽く流しながら、ホームルームのチャイムが鳴るのを待っていた。少しだけ、早く来ないかと思っていたことは圭には秘密だ。


 少し長く感じた朝も、気付けばもう昼休憩の時間。


「........?」


「どうした?」


「....なんでここにいるの?」


「そんなこと言うなんて、奏くんてば酷い。しくしく」


「いや、彼女と一緒に食べないのか聞きたいんだけど?」


「あぁ、呼んだから大丈夫!」


「............え?」


 そうこうしている内に、後ろの方から女の子がこっちに歩いてきた。茶髪ショートで小柄な体型、小動物のような感じで男子からの人気が高そうな印象だ。圭は身長が高いから、隣に並ぶと身長差が大きい。所謂身長差カップルというやつだ。


「蒼井奏くんだよね?私も一緒に食べてもいい?」


「....いいけど、....僕はいない方がいいんじゃないかな」


「ううん。私も蒼井くんと仲良くなりたいから、蒼井くんがよければ一緒がいいな」


「....分かった」


「よかった!ありがとう」


 いい人そうだ。こんな僕とも仲良くなりたいだなんて、見た目もさながら、中身まで良いとか、他の男子が気になるのも頷ける。


 見た目のことを気にしていたら、陽菜のことを思い浮かべていた。奏は、昔から陽菜のことを見ているため、外見の耐性には人一番強そうだ。陽菜のことを思い浮かべること自体に疑問を覚える奏だが、今はまだその原因については分からない。


「私も、奏くんって呼んでもいい?」


「....うん」


「私のことも、結花って呼んでよ!」


「....片桐さんで」


「結花って呼んで!」


「........はい」


 前言撤回。やっぱりこの人怖いです。

 運動部のマネージャーにもなると、気が強くなるのだろうか。今後、圭は何かと苦労しそうだなと、今のうちにお祈りしておくことにした。


 基本的には、二人が話していてたまに奏に話を振るような感じで雑談をしていた。圭が気をまわしてくれたのか、両親のことや普通科にいることなど聞いてくることはなかった。

 最初は緊張していたものの、圭がいたこともあり、昼休み中に少しだけ仲良くなれたような気がした。


 今まで、陽菜以外の友人がいなかった奏は、高校生になり三人目の友人が出来たことに喜びと成長を感じながら家に帰るのだった。



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会話のところを、一行空けて読みやすくしてみました。

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