全日本しりとり選手権in武道館
石束
全日本しりとり選手権in武道館
「抜け殻」
「ら、ライバル」
「瑠璃」
「り、竜胆」
「うる星やつら」
『挑戦者の攻勢。定石通りの『ラ行攻め』チャンピオン劣勢です!』
「ら、ランドクルーザー」
「ざる」
「る、留萌駅っ」
「キル・ビル」
「る、ルーレット!」
「トトロ」
「ろ、ロカビリー」
「リリカル」
ラ行の殴り合いに応じるが……
「る、ルバイヤート」
「トリ」
「り、リックドム」
「無理矢理」
「り、リング」
「ぐりとぐら」
「ら、ラリアット」
「虎」
「ら、ララ・ランド」
「銅鑼」
『苦しい! チャンピオン苦しいっ!』
「ら、ランバ・ラル!」
「ルール」
『反撃不発っつ! 挑戦者が冷静だっ』
「る、ルビーの指輪」
「ワンダフルライフ」
「ふ、布団……がふっとんだ!」
それは一瞬のスキだった。思考がラ行警戒に寄っていた。だから切り替えができず、『ん』と言いかけ、踏みとどまる。
『これは――これはさすがに審議でしょう! 審判団が集まります』
『ラ行に振り切っていたところに、二重底のワンダフルライフ。チャンピオンの失着をよんだのは間違いなく彼の仕掛けのタイミングです。見事な戦略でした』
『……おっと、これは技あり! 挑戦者の技ありです』
『いよいよ後がなくなりました』
『さあ! だ、から試合再開です!』
「ダンス」
「スルメイカ!」
「カリカリ梅」
「メガネクロハギ!」
「ギギ・アンダルシア」
「アケボノチョウチョウウオ」
『おや? 流れが変わりましたね』
『チャンピオンの得意技「海鮮尽くし」ですね』
「お、オリオン座」
「ザトウクジラ!」
『止まらない止まらない、チャンピオンの海鮮尽くしが止まらない』
「ら、らっきょう」
「ウラシマチョウチョウウオ」
『武道館が揺れる! SNSが沸き立つ! これぞ、魅せるしりとり! これぞ、高曲木新次郎!』
「オクラホマ」
「マナガツオ」
「お、オズマ」
「マッコウクジラ!」
「ラ、ら……」
『ここで挑戦者が詰まりました』
『ラ行攻めは諸刃の剣です。自らのボキャブラリーも削っていく……先ほどの攻防で攻めきれなかったのが、残念でした』
『投了ーっ 挑戦者投了っつ。この瞬間、チャンピオンのタイトル防衛が決まりましたー』
『チャンピオン防衛! 全日本しりとり選手権『the天下無双!』 優勝は高曲木新次郎――っ』
完
全日本しりとり選手権in武道館 石束 @ishizuka-yugo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます