本作はありえない出来事を、あたかも実在の郷土史や地域の著名人の足跡をたどるように語ります。
いわゆるフェイクドキュメンタリーのようでもあります。
作中で起きる出来事は、終始淡々と語られます。
行政手続きや法規制という現実的な要素も、ちゃんと丁寧に描いています。
加えて、地域振興というテーマを持ち込むことで、
〝それほど、変でもないのか?〟
そんなふうに読む者の認識をじわじわと侵食してきます。
出来事の発端から発展に至る展開も自然です。
個人的な体験への思い入れが、研究会に発展。やがて行政に採られイベント化される。
これは実際の地域イベントにも通じる構造だと思います。
そして、小道具や設定の配置も巧みです。
〝天下無双布団〟の来歴や市場価値といった付帯情報がドキュメントとしての本作の物語の強度を底上げしています。
もちろん。この物語自体、立ち止まって考えると完全に現実からは逸脱しています。
ありえない事柄です。
でも、作中の登場人物たちが誰も立ち止まらないのです。
〝オレたち、なにやってるんだ?〟
そんな、現実的なことは一切考えません。
ドンドン進むだけです。
この落差が、作品の面白さを生んでいるのです。
やがて、単なる記録文のようだった文章が、偉業の伝承へと意味を変えていきます。
理由は、わかりませんがそんな雰囲気になるんです。
読後には〝結局、なんだったのか?〟なんて思いつつも、なぜか少しだけ充足感すらあるのです。
心の片隅では、存在しない祭りの記録映像やポスター、パンフレットが欲しくなる。
生成AIにでも作って欲しくなる。
そんな、不思議な体験。
あなたも味わってみませんか?
面白いですよ?