6話 図書館にも本はあるんだよ
提出した作文のコピーを、
幸子はクラスのみんなに見せびらかした。
ビックリするくらいの大反響が
教室に巻き起こっている。
「かっこいいっ!」
「なんかわかんないけどすごいっ」
作文をゼッサンする声が、
ドシドシ幸子におくられてくる。
「すごいねぇ。
作文じゃなくて、詩みたいだったよ」
和葉が言った。
「あんなの、ゼンゼン大したことないよー」
幸子が首を振ると、
和葉はますます興味シンシンになっていく。
「どうやって書いたの?」
「それは・・・インスピレーションってやつ?
まぁ、めんどくさくて20分くらいで書いたんだけどさ」
「インスピレーションかぁ。
きっと幸子ちゃんには才能があるんだね」
「才能?」
「いつか作家さんになって、有名になるんだよ」
「作家さん? 有名?」
和葉にほめられて、
幸子は有頂天になった。
「まぁ、そのくらい私ならカンタンだし?」
「すごーいっ!
今のうちにサインもらっとこうかな」
「サインかぁ。
ちょっと練習してみるかぁ」
昼休み。
クラスのみんなにちやほやされながらローカを歩いていると、
担任の先生に声をかけられた。
幸子は先生から、
「今度の全校集会で、作文の音読をしてほしい」
と言われた。
「すごいすごいっ!」
「先生も幸子ちゃんのすごさを
認めたってことだよねコレっ!」
「幸子ちゃんって、ホントに作家さんになれるかもっ」
「そ、そうかなぁー? でゆふふ」
みんながはしゃいだので、
幸子はもっと有頂天になった。
☆彡
幸子は作文の提出が終わってからも、
美咲の家に通い詰めていた。
本の話を一緒にするのが楽しかったのだ。
「美咲さーん。
あの本おもしろかったよぉ」
「もう読ん―――だの。
ずいぶん早いね」
「美咲さんの本。
ゼンブ面白いんだもん」
「幸子でも読める本が―――まだまだあるわよ」
「ちょっと上から目線だぁ」
「ふふ。
私のが―――おねぇちゃんだしね」
「おねぇちゃーん」
幸子は美咲の肩にもたれかかって甘えた。
乾いた地面に水が染みわたるような音が、
体の中からひびいてくる。
「―――調子がいいんだから」
幸子はいつの間にか、
美咲のことが大好きになっていた。
美咲は他の大人のように、
タテマエという名のウソをつかない。
いつも幸子を
対等な人間としてあつかってくれる。
美咲と一緒にいると、キレイとかキレイじゃないとか、
そういうのはカンケーないって思える。
「作文―――音読するんだって?」
「うん」
「フンイキが大事―――だからね。
途中でかまないように」
「分かってるって。
そんなにドジじゃないよぅ」
「幸子」
「なぁに?」
「図書館にも本―――はあるんだよ」
「・・・そぉだね?」
意味がわからずに幸子が首をかしげると、
美咲が笑った。
「まぁいっか。
音読―――頑張ってね」
「うんっ。がんばるぅ!」
「じゃあ、ちょっと読んでみるから、
美咲さん聞いてください」
「―――いいよ」
美咲が見守ってくれている前で、
幸子は音読の練習を重ねた。
野原で風にゆれるたんぽぽを眺めるような、
優しい時間だった。
だが。
音読の前日、
美咲は『きんきゅー入院』をすることになった。
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