邪魔すんな!
そして――植物園に行く日。
「ユメー! 迎えに……」
勢いよくドアを開けて迎えに来た私服のアラタの表情が……固まった。
「アラタ、遅かったじゃーん」
「み、みみ、ミナト!? なんでここに!?」
動転するアラタにミナトはニッコリ笑って、ヒラヒラ、とチケットを見せてくる。
そう……あの植物展覧会のチケットを。
「たまたま、この展覧会のチケット貰ってさ~。2枚あったからユメちゃんのことデートに誘おうかと思って昨日来たら、ユメちゃん持ってるしー。なら、一緒に行こうと思ってー」
ワナワナと震えてたアラタは。
「はぁーッ!? ふざけんなッ!」
と、爆発した。
「ユメは俺と行く約束してんだから、邪魔すんなっつの!」
「えー、聞こえなーい」
まるで大型犬に吠える小型犬のように怒鳴るアラタ。
そして、もう1枚チケットを持ったカヅキがやってくる。
ちなみにミナトもカヅキも私服。
「すまない、遅れた」
「カヅキ!?」
「揃ったし、行こっかー。あ、ユメちゃん、エスコートする?」
「え……だ、大丈夫」
「ユメ、悪いな……アラタとミナトの我儘に付き合わせてしまって」
カヅキの謝罪に首を横に振ると、アラタが「我儘?」と聞く。
「アラタ。ユメにチケットを渡して、潜入する俺たちと同行するように言ったらしいな。勉強にはいいだろうと思って目を瞑ったが、ユメにはユメの予定がある。今後は控えないとダメだぞ」
注意するカヅキの言葉にアラタは「はぁ!?」と声を荒げた。
「何の話!? 俺は休み! ユメと出掛けたくて誘ったんだよ!」
「? 展覧会で不穏な動きがあると情報があるから行くんじゃないのか? 私服で怪しまれないように忍び込みたいと騎士団長に交渉していたと、ミナトが言っていたが?」
それを聞いて、固まるアラタ。
一方のミナトは「さて、いーこうっと」と一足先に道具屋を出る。
「……ッ、ミーナートーッ!」
怒り心頭のアラタが追い駆け、カヅキは「?」状態。
そのまま植物園に向かったあたしたち。
初めての王都以外での外出は何だか新鮮だった。
結局……アラタたちは不穏分子の拘束に時間をとられて、あたしはジュースを飲みながら待ったり植物園を見回ったりした。
帰ってきた頃には日が暮れつつあって、アラタはお出掛けを邪魔された挙句に仕事までやらされ、泣いていた。
「なんでだよぉ……くそ、ミナトのせいで……!」
「えっと……また、行こうね?」
「うん……」
その後は後処理とやらで王都まで戻ってきて詰所まで連行されたアラタ。
――ちょっと、かわいそうだったかも……さすがに同情した。
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