{3} 警報

「ふはっ」飛び起きる「ふぅはっふぅはっふぅはっ、ふぅは」自分の呼吸音。「ふぅは…」。動悸が強い。「ふぅはぁっ」。ドクドクとうるさい。「ふぅーはぁっ」。警報の音が耳につく。


見回す。右から。暗い。暗くて何も見えない。


左。窓。窓だ。雨。雨が降っている。夜……か。夜なんだ。


何故か窓を凝視してしまう。しきりに雨粒が打ちつけている。それと磨りガラス。これで表の街頭の明かりがぼんやりしている。


俺の頭もぼんやりしている。


部屋。ここは俺の部屋だ。そう、俺の部屋だ。


部屋は暗い。何も見えない。家電のランプが浮かんでるぐらい。これはいつも通り。


取り敢えず立ちあがり、電気を点ける。シーリングライトがパッと部屋を照らし出す。


部屋はいつも通りだった。それでようやく、ひと心地つく。


夢……か?


とても寝覚めが悪かった。


自分が死ぬ夢を見てしまった。


あの感覚はとても生々しく、本当に死んでしまうと感じた。全身ぐっしょり、嫌な汗をかいている様に思える。でも実際は、そんなこともないみたいだった。


「……よかったァ…………」


死んでなかった。


夢だった。


こんなに嬉しいことはない。


本当によかった。


「めっちゃ怖かったわぁ〜……マジ洒落にならん」


思わず独り言が出るほどだと、自分で思った。


「ふう」


とりあえず、着替えよう。


警報が鳴っているのだから、招集がかかっている。


急いで行かなきゃいけない。


もしやこの音のせいで、あんな夢をみたのだろうか。


でも襲来なんて、いつも安全だろうに。


よくわからない。


まぁいい。


今はとりあえず急ごう。


定位置に掛けた上着を引っ張り取って、下もサッサと履いてしまう。こんなのは五秒と掛からない。ちゃちゃっと支度を済ませてから、持ち物をつかみ、『さあ部屋を出るばかりだ』というところになって、スマホを忘れていた事に気がついた。


ベッドからスマホを拾い上げて、画面を点ける。






6月26日 火曜日

2:04




 

「え」





鳥肌。


一瞬、時が止まったような感覚さえ覚える。

もう一度確認する。





6月26日 火曜日

2:04




そんなバカな。


「……夢と同じじゃないか」


思わず声に出していた。


それくらい、気持ち悪かった。


こんな事は今まで経験したこと無かったし、その夢では俺は……最後……。


すぐさま玄関に向かい、扉を開け、部屋を後にする。何でかあの部屋に居るのが怖かった。いや、あの部屋じゃない。あの時計が怖かった。あの時刻と、あの日付が、怖かった。


共用部廊下には誰もいない。天井照明から降る白色光が、鈍くのし掛かって逃げ場もない。欄干の向こう、『しとしと』と鬱陶しい雨が陰鬱で、夜の闇を更に深くしている。


『早く仲間の元に向かわなければ』


いや。


『早く仲間の元に行きたい』


うん。これも違う。


『早く誰か人の居る場所に逃げたい』


そうだ。

そういう気持ちがチラついて仕方がない。

急ごう。


それで、急いで鍵を閉めたいのに、鍵が上手く入らない。しかも気が動転してか、鍵を落としてしまった。


そんな事は今までしたことなかったのに。


それでもっと焦ってしまって。更には右手が震えている事にも、気がついて。


左手で右手を掴む。


『しとしと』と雨が背後から、うるさいくらいになっている。


腕や首筋の、外気に触れている箇所が粟立つ様な、そんな感覚も覚える。


今にもこの廊下に、何か『よくないもの』が現れんじゃないか。そういう怖気おぞけが、どこからなのか湧いてきて。


全身をピリピリと逆立たせる。気が急く。なのにどうしてか、『動く事』が躊躇われる。まるで天敵に睨まれた小動物の様に。


なんだろう。


何かとても、気味が悪い。


ああもう知るか!


さっさとここから離れよう。


地面をはたくかの様に鍵を拾い上げ、もう一度そいつを鍵穴に差し込み回して施錠した。まだ手が震えて難儀したが、なんとかそそくさとそれをこなした。ついでに習慣で、別に今やらなくてもいいのに、ちゃんと施錠されているかの確認もしてしまう。ええい、もうここに用はない。回れ右して駆け出す。


到底エレベーターなど冗長に思えるし、中階段など論外。それで、裏口に続く非常階段を選んだ。中階段が論外なのは、夢では確かそこを通ったと記憶しているからだ。


あの変に耳についたジャンパーの音も、ハッキリと思い出せる。気色悪い。


非常階段に辿り着く。もちろん今日も開いている。住人の皆が日常的に使っているし、それは俺も例外ではない。だから、普段から使っているはずなのだけど。


そして普段通る時は何も思わないのだけど。


今日は違った。


まず、暗い。


いや、電気は点いている。別に照明が切れているとか、そういうことはない。


それだのに。


それだのに何故だろう。暗い。


そう、感じるのだ。


とはいえここにずっと居るわけにもいかない。


意を決して、南無三と言わんばかりの勢いで、一歩踏み出した。


そして『カン』と金属音がなった途端。


いや。


その音が耳に到達し、脳がそれを音として認識した途端。


何故か全身、総毛立つ。


『ブワッ』という音さえ聞こえたような、そんな急激な体の変化。


背中にもつめたいものを感じる。何ならいっそ、気分が悪い。フラッといって倒れそうだ。


どうしてこの程度のことでこうなってしまったのか。


それは全然わからないのだけど。


とにかくこれは、何か、『マズイ』。


そう思って踵を返ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおいふゃれbv具おいghじゃえりghヴァンpr8おゆん@q946うr9おあ絵80r6vt2y40@9お8ぬvtq5y01100100101001001010001010101001011101001001100100010100100101010111101001010010011

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