『続 アブドラジル』

やましん(テンパー)

『続 アブドラジル』 1


 荒川博士は、謎のロボット従業員キューさんに明言した。


 『いや、費用は、あいつに出させる。いまの観測で、彼を連れ帰る方策は解った。ただ、機械を作らねばならないし、次の機会は、580日ほど後だ。それまでに、完成させる必要がある。会話を聞いた限りでは、その後だと手遅れのようだからな。』


 『あいつって?』


 『ほら、マーシー産業の社長だよ。彼の父親だ。ただし、非情な父親ではあるが、おいらの見るところ、本当は可愛くて仕方がないのだ。しかし、言う通りにならないから、罰を与えている。しかし、あの社長は、おいらを使うだけ使っておいて、事業がうまく行き出したらじゃまになって放逐した。おいらがなにを作ったかをネタにして、口止めしたんだ。で、場末の会社を与えたんだよ。その代わり、資金援助とかいって、口止め料を払ってきている。御互い様だ。しかし、今回は息子の命が掛かるからな。やつには、魔女がついているしな。』


 『信用しませんよ。あなたが犯人にされますよ。』


 『あいつも、一応、科学者のはしくれだ、データの一部を知らせてやろう。まあ、あとは、むこうしだいだな。おいらが、過去を公表したら、困るのは向こうなんだからな。いまや、大企業だしな。コンプライアンスなんて、アンコ・コンプライアンスだからな。』


 『意味不明。』


 荒川博士は、猛然と新しい機械の製作を開始した。



       😡😡😡😡😡😡😡😡😡😡


 

 『バカ息子があ。なにが、ショパンだショクパンだ。』


 マーシー産業の社長、マー・シー・クンは、クラシック音楽は、判らなかった。


 付き合いで演奏会には行くが、なにやってるのかは、ほとんど理解の外である。


 秘書のまやこさんは、いわゆる愛人である。奥様も知っている、公認の愛人である。


 もちろん、奥様が愉しいわけはないが、それで平和が保たれるなら、と、黙認していた。


 長男は専務。長女は、副社長である。


 奥様は、会社には関与していなかったが、本職はピアニストであった。ただし、今は、滅多に外にはでない。


 たまに、会社関係の人に、聴いてもらうことはあった。


 じつは、かなりの名人である。


 次男がピアニストになりたかったのは、母の影響があったからだし、その才能は母から来ているようだった。


 『社長。荒川博士は、邪魔でしょ。可愛そうだけど、ぼっちゃんともども、このさい、消しましょうよ。そうすれば、憂いはなくなる。金星人なんて、あり得ないわ。荒川工業は吸収する。あそこの技術力は、美味しいですわ。』


 『そ、そうだな。うん。』


 社長は、この秘書の正体は知らない。


 まさか、火星人だなんて、知るわけがない。


 

      👾チャウ!💫🚀🚀💫👽️


 


 


 


 

 

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