第20話 満身創痍
武蔵の刀が、妖怪の王の体を切り裂いた。しかし、妖怪の王の体は、すぐに再生し、武蔵に反撃した。
「貴様のような人間が、我に敵うとでも思ったか!」
妖怪の王は、嘲笑しながら、武蔵を圧倒した。武蔵は、徐々に追い詰められ、満身創痍となった。
「くっ…!」
武蔵は、膝をつき、荒い息を吐き出した。彼の体は、限界に近づいていた。
妖怪の王は、武蔵に止めを刺そうと、巨大な拳を振り上げた。その時、城の奥から、複数の影が現れた。
「武蔵殿!」
影の中から、凛と俊樹が現れた。2人はかつて、甘味処で出会った異世界から来た人物だった。彼らは、妖怪たちとの戦いで傷つき、瀕死の状態だった。
「凛…俊樹…なぜ、ここに…?」
武蔵が尋ねると、凛は、震える声で答えた。
「私たちは、武蔵殿を助けに来たのです」
凛と俊樹は、残された力を振り絞り、妖怪の王に立ち向かった。しかし、彼らの力は、妖怪の王には及ばなかった。
「無駄だ。貴様らのような弱者が、我に敵うはずがない!」
妖怪の王は、嘲笑しながら、凛と俊樹を吹き飛ばした。二人は、壁に叩きつけられ、意識を失った。
武蔵は、凛と俊樹の姿を見て、怒りを爆発させた。
「貴様…!許さない!」
武蔵は、最後の力を振り絞り、妖怪の王に突進した。彼の刀が、妖怪の王の体を切り裂き、激しい戦いが再開された。
しかし、武蔵の体は、限界に近づいていた。彼は、徐々に動きを鈍らせ、妖怪の王の攻撃を受け始めた。
「ここまでか…」
武蔵は、覚悟を決めた。その時、城の奥から、光が放たれた。
光の中から、安達祐実が現れた。彼女は、神々しい光を纏い、妖怪の王を見据えた。
「貴様のような悪は、私が許さない」
安達祐実は、静かに呟き、妖怪の王に手をかざした。すると、妖怪の王の体は、光に包まれ、消滅した。
「な…何が起こった…?」
武蔵は、信じられないという表情で、安達祐実を見つめた。
安達祐実は、武蔵に近づき、優しく微笑んだ。
「もう大丈夫です。私が、あなたを守ります」
安達祐実の言葉に、武蔵は、安堵感を覚えた。彼は、安達祐実の温もりに包まれ、意識を失った。
次に武蔵が目を覚ました時、そこは、城の中だった。凛と俊樹は、ベッドに横たわり、眠っていた。
安達祐実は、武蔵のそばに座り、微笑んでいた。
「あなたは、もう安全です。ゆっくり休んでください」
安達祐実の言葉に、武蔵は、頷いた。彼は、安達祐実の優しさに包まれ、再び眠りについた。
凛と俊樹の出会いは、決して運命的とは言えなかった。それは、都会の喧騒の中に埋もれてしまいそうな、ありふれた偶然の出会いだった。
凛は、都内の大学に通う、ごく普通の女子大生だった。好奇心旺盛で、少しばかり冒険好きな彼女は、暇さえあれば、都会の喧騒から離れ、まだ見ぬ世界を求めていた。
一方、俊樹は、凛と同じ大学に通う、内気な男子学生だった。彼は、都会の喧騒に馴染めず、いつも孤独を感じていた。そんな彼にとって、凛は、眩しい太陽のような存在だった。
二人が出会ったのは、大学の講義だった。隣の席に座った二人は、偶然にも同じ講義を選択していた。最初は、ただのクラスメイトだった二人は、次第に会話を交わすようになり、互いの共通点を見つけていった。
凛は、俊樹の内気な優しさに惹かれ、俊樹は、凛の明るく行動的な性格に惹かれた。二人は、互いにないものを求め、惹かれあっていった。
ある日、凛は、俊樹を誘って、都会の裏側を巡る旅に出かけた。そこは、普段二人が目にすることのない、危険と隣り合わせの場所だった。
二人は、スラム街と呼ばれる場所で、盗賊に襲われた。絶体絶命のピンチに陥った二人を救ったのは、佐々木武蔵だった。
武蔵との出会いは、二人にとって、忘れられない出来事となった。武蔵の強さと、どこか哀愁を帯びた雰囲気に、二人は心を奪われた。
しかし、武蔵との出会いは、二人の関係にも変化をもたらした。俊樹は、武蔵の強さに憧れ、凛は、武蔵の孤独に共感を覚えた。
二人は、武蔵との出会いをきっかけに、互いの心の奥底にある、まだ見ぬ世界へと足を踏み入れていくことになる。
凛と俊樹は、埃っぽい路地裏を慎重に進んでいた。二人が足を踏み入れたのは、都市の光が届かない、いわゆるスラム街と呼ばれる場所だった。そこは、貧困と犯罪が蔓延り、法も秩序も存在しない、まさに無法地帯だった。
「俊樹、気を付けて。ここは危険な場所よ」
凛は、周囲を警戒しながら、俊樹に注意を促した。
「ああ、分かってる。でも、まさかこんなに酷い場所だとは…」
俊樹もまた、目の前の光景に圧倒されていた。
二人は、目的地へと急いでいた。しかし、その時、背後から複数の足音が迫ってきた。
「おい、そこの二人。ちょっと待てよ」
声の主は、汚れた服を着た、いかにも悪人といった風貌の男たちだった。彼らは、鋭い眼光を放ち、二人に近づいてきた。
「金目の物を置いていけ」
男たちは、有無を言わさず、二人に襲いかかった。
凛は、咄嗟に護身術の構えを取った。しかし、相手は複数であり、武器も持っている。俊樹は、恐怖で足が震え、立ち尽くしていた。
「俊樹!逃げて!」
凛は、俊樹に叫び、男たちに立ち向かった。しかし、多勢に無勢。凛は、徐々に追い詰められていった。
その時、一人の男が、凛に刀を振り下ろした。凛は、覚悟を決めて目を閉じた。
しかし、痛みは訪れなかった。代わりに、鈍い金属音が響いた。
凛が目を開けると、そこには、信じられない光景が広がっていた。男たちは、全員倒れ、一人の男が立っていた。
その男は、古びた着物を着て、二本の刀を持っていた。その姿は、まるで時代劇から抜け出してきたようだった。
「お嬢さん、坊ちゃん。怪我はないか?」
男は、凛と俊樹に優しく声をかけた。
「あ、あなたは…?」
凛が尋ねると、男は、静かに答えた。
「俺は、佐々木武蔵。通りすがりの剣士だ」
武蔵は、そう名乗り、二人に背を向けた。
「こんな物騒な場所は、早く立ち去った方がいい。二度と来るんじゃない」
武蔵は、そう言い残し、夜の闇へと消えていった。
凛と俊樹は、武蔵の姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。
「あ、あれが…佐々木武蔵…」
俊樹は、信じられないといった様子で呟いた。
「ええ…まさか、こんなところで出会うなんて…」
凛もまた、武蔵との出会いに、深い衝撃を受けていた。
二人は、武蔵に助けられたことに感謝しながらも、彼の強さと、どこか哀愁を帯びた雰囲気に、心を奪われていた。
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