第二話

 そして今、理央りおさんと正悟しょうごが話をしている。僕がどうしようかと考えていると、何と理央さんが僕に向かって手を振っていた。

「ねえ、浜野はまの優太ゆうた君! こっちこっち!」


 え? 何で僕が理央さんに呼ばれてるの? 全然、心当たりが無かったが、とにかく行くことにした。そして理央さんと正悟の近くに行くと、正悟は言い放った。

「優太。これから俺と理央ちゃんとお前の三人で、作戦会議をするぞ」

「え? 作戦会議? 何の?」


 すると理央さんが、説明した。

「あの、AIを使ってお金をかせぐっていう宿題のための作戦会議だよ」


 それを聞いて、僕は納得なっとくした。そうか。一年一組にも、あの変な宿題は出ていたのか。そうすると一年生全員に、あの宿題は出たのだろうか。とにかくそれなら、作戦会議をしたくなるのも当然とうぜんだ。


 なので僕たちは制服に着替えて、僕と正悟がたまに行く赤と青の看板かんばんのファミレスに向かった。そこは学校の、左側にある。


 校門こうもんを出て左に曲がって、国道こくどうを真っすぐに進む。そこにはコンビニなどが並んでいるが、五分ほど歩いて十字路をまた左に曲がるとファミレスがある。そこに入って木製のテーブルと茶色のソファがある席に、座った。僕は正悟の隣に座って、僕たちの正面に理央さんが座った。


 そして、ドリンクバーを注文した。僕はカルピスウォーター、正悟はゼロコーラ、理央さんはリンゴジュースを飲むことにした。僕はあますぎないちょうどいい甘さの、このジュースが大好きだった。


 僕はカルピスウォーターを飲みながら、理央さんをちらりと見た。目は丸い印象で、髪は後ろでまとめているポニーテールが良く似合にあっていた。それに、スタイルも良い。うーん、やっぱり理央さんは可愛かわいい。


 それから僕は、正悟もちらりと見た。正悟は目は少し細いけど顔立かおだちはととのっていて、髪は坊主頭ぼうずあたまのように短くしている。それに身長は百八十センチで、男女関係なく人当ひとあたりが良い。だから女子たちによく、『坊主イケメン』とからかわれる。でも、確かにその通りだと思う。


 それにくらべて僕は、いたって普通だ。目はやさしげだとよく言われる。でも髪は真ん中で分けていて身長も百七十センチで、ごくごく普通の高校一年生だと思う。


 なので正悟と理央さんは、お似合にあいだと思う。まあ、二人は付き合っている訳じゃないけど。見た目が、お似合いだと思う。


 そして僕たちは今、夏服を着ている。僕と正悟は白い半袖はんそでのワイシャツに、グレーのスラックスを穿いている。一方、理央さんは白い半袖のワイシャツに首元くびもとに青いリボンを付けて、グレーに赤いチェックが入ったスカートを穿いている。


 それらを着こなしている理央さんと正悟は、になるなあと考えていると、正悟が聞いてきた。

「で、どう、二人とも? あのAIを使って金を稼ぐって言う宿題、どう思う?」


 すると理央さんも、真剣な表情で聞いてきた。

「まあ一つアイディアが出れば、それでイケると思うんだけど。ねえねえ、お金を稼ぐアイディア出た?」


 僕と正悟は、同時に首を左右にった。すると理央さんは、ため息をついた。

「まあ、そうだよね。この宿題は、さっき出されたばっかりだもんね。それに聞いた話だとこの宿題は、全校生徒全員に出されたみたいなの……」


 ちょっと雰囲気ふんいきが暗くなってきたので、僕は空気を変えようと思った。

「でも、がんばってアイディアを出そうよ。先生たちは本気で、僕たちにAIの正しい使い方を覚えてもらおうとしているみたいだから」


 すると正悟は、疑問の表情になった。

「え? AIの正しい使い方? それ、どゆこと?」


 なので僕は、説明した。

「この学校に入学した時、僕たちはSNSの使い方について注意されたよね。人の悪口を書き込まない、知らない人に写真を送らない、会おうと言われてもすぐに会いに行かない、個人情報を書き込まない、何かトラブルが起きたら、すぐに親や先生に相談することって。だから今回はAIを実際に使ってみて、その正しい使い方を学ぶための宿題だと思うんだ」


 すると正悟は、僕の背中をバシバシとたたいた。

「おう、そうだ! きっと、それだ! だったら、やってやろうぜ! それにお金を稼ぐって何か、アルバイトみたいで面白そうだし!」


 ふと見てみると、理央さんもコクコクとうなづいていた。そして、つぶやいた。

「うーん、確かにそうなんだけど、結局はお金を稼ぐアイディアを出さなきゃいけないのよねえ……」 


 うん、そうだ。確かに、その通りだ。でも僕たち三人とも、アイディアはまだ出ていなかった。なので今日は家に帰って、それぞれ考えることにした。


 僕はファミレスを出ると、まず学校に向かった。僕の家は学校から見て、右側にあるからだ。左側にあるファミレスとは、逆方向にあるからだ。僕の家は学校から出て、右側にあるからだ。


 学校まで戻ってきた僕は、学校の右側に歩き出した。五分ほど歩くと住宅街じゅうたくがいに入って、僕の家もそこにある。青い屋根やねで壁はベージュ色の、普通の二階建てだ。


 僕は家に入って自分の部屋で、Tシャツに黒のスエットを穿いて部屋着に着替えた。そして夕飯を食べてお風呂に入って自分の部屋にいた。僕の部屋は引き出しが四つある勉強机とイス、それにベットとマンガを並べてある本棚ほんだなとエアコンがあった。他には、ほとんどない。なぜならスマホがあれば大体だいたい、何でもできるからだ。


 僕は取りあえず、今日の分の数学と国語の宿題をやった。やっぱり、得意とくい教科きょうかの宿題からやることにした。歴史や生物などは苦手で、それらをやってやっぱり苦手だなとテンションが下がるとこまるからだ。

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