布団マン!

羽鳥 雲

ダンス大会

あの夢を見たのは、これで9回目だった。


その夢の始まりはいつもこうだ。


―――――――――――――――――――――


「第28回世界ダンス大会!優勝は布団マン!!」


僕はこれを夢と認識してある程度自由に動けるが、毎回ダンス大会で優勝したところから始まる。


ただ、ここからが問題なのだ。


ここから、コーチがさらなる高みへと指導を始めるが僕はダンスに対してちんぷんかん、これでいいのかと直感で踊るも


「本気を出して踊れ!手を抜くな!!」


と怒られる始末。


どうしようかと考えていると優勝したときの動画を見ればいいと思いついた。


記憶はないけど優勝するに値するダンスを参考にすれば何とかなるかもしれないからな。



早速動画を見せてもらうと僕は布団で寝るところから始まった。


「...え?」


僕が思わず呆然とするも横でコーチは感動したように言った。


「このパフォーマンスがまたできるといいんだがな...」


画面に視線を戻すと僕は寝たままダンスをしていた。


テレビとかでよく見るようにキレッキレだ。僕は早速やってみようと布団に入った。



入ってみるとゲームの視点移動のように瞬時に視点が変わり、自分とコーチを見下ろせるようになっていた。


コーチが曲を流すと僕の体は曲に合わせてあの時と同じようなダンスを繰り広げて行った。



曲が終わるとコーチは感動で涙を流しながらこう言った。


「これなら天下はすでに取ったけど数連覇!天下無双も夢じゃないぞ!!」


その言葉と同時に僕は視点が自身の体へと戻された。


意識が僕に戻ったことを確認したコーチは僕の肩に両手をかけて期待するかのように声を掛けられながら肩を揺らされたが、何を言ってるのかわからず目の前の景色もぼやけていった。




この夢が今回は終わったのかと目を長めに瞑って開けてみるとそこはあのダンス大会の場所だ。


「第29回世界ダンス大会!前回の優勝者である布団マンのパフォーマンスが始まるぞ!!」


その声と共にステージの隅にいた僕はコーチに背中を押されて中心に行くと布団に入った。


瞬時に視点がまた変わると布団に入った僕は、曲に合わせてまたダンスを踊り出した。


この曲どっかで聞いたことある気がするが曲名は思い出せない。夢だからどっかで聞いたことのある曲なのだろう。



曲が終わって視点が戻ると周りから大喝采を浴びながら目の前がぼやけていった。


―――――――――――――――――――――


...ふと目の前を見ると白い天井が目に入った。自室の天井のようだ。


いつものようにベッドの散らかり具合を見ると枕は遠くに飛び......まぁ、どうしたらこうなるの?レベルだ。


夢の内容を覚えてはいるが僕に使う場面はない。


夢の内容的当たり前だが、疲れをとるために寝てるはずなのにこの夢を見ると体中が痛い。


10回目はさすがに勘弁してほしいな......そう思う僕であった。

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