色彩

小槌彩綾

特別な人

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 ひとりで穴を掘っていた。

 ひとりでいるのは、さみしくはなかった。

 ひとりでいるのは、楽だった。

 ひとりでいるのは、心地よかった。

 

 たまに心配そうに近寄ってくる奴らがいた。

 どうでもいい、そう突っぱねていったら一人、また一人と離れていった。

 ついには、アイツだけになった。


 アイツは必要以上にこちらに干渉してこなかった。

 自分と相手との間に作った境界線を超えないようにしていた。

 なんとなく一緒にいてメンドくさくなかったから、ずっと一緒にいた。

 

 ふと、顔をあげた。

 その人は、いつの間にか、アイツの隣に立っていた。


 

 その人は、気づけば、隣に立っていた。

 近すぎず、遠すぎず、居心地のよい距離にその人はいた。


 どうでもいいや。

 隣に誰がいたって、いなくたって関係ない。

 自分のやりたいようにやればいい。


 ふと、遠くに見覚えのある穴があることに気がついた。


『その人は、気づけば、隣に立っていた』


 って思ってたけど、なんだ違ったんだ。


 近づいたのは、私の方だった。

 


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