天下無双の★休日布団!
工藤 流優空
休日の布団、それは何にも勝る。
「うるさーい!」
鳴り響くスマートフォンを、ベッドからいらだちまぎれに手にとる。
スマートフォンが横に吹っ飛びそうな勢いでスライドしてスヌーズ状態に。
何も考えず、ベッドから起き上がりパジャマから着替えようとした時。
待ち受けに映る日時を見て、動きを止めた。
「ア……、今日は、休み……、休みだ……」
そう! 今日は久々の! 休み! だ!!!
誰に聞かれてるわけでもないけど、我ながらゾンビみたいな一人言だった。
ま、そんなことはどうでもよくって。
休みということを思い出した私。ということで……!
着替えかけたパジャマを着直して!
乱れたパジャマのまま、なぜか部屋の床の上でダンスする!!!
踊りだしたくなるくらい、私の心は今! 満たされている!!!
会社に遅刻する心配もない! 満員電車に揺られる必要もない!
上司に怒られることもない! 最アンド、高! だ!
けれど慢性的運動不足の体はすぐに悲鳴を上げる。
そもそも明日はまた仕事。ダンスのせいで筋肉痛になったらどうする。
ダンスは終了だ、終了。
そもそも汗をかいてしまったら、布団が汚れてしまう。
部屋は汚いけれど、ベッドと布団は汚したくない人、それが私だ。
ベッドにダイブして、布団に体をもぐりこませる。
二度寝、さいこー!
何にも追われることなく、ただ寝られるこの時間、最高。
どんな天下無双の武士さんだって。
どんな大金持ちの人だって。
どんな天下無双の○○さんだって。
今の私の幸せにはきっと及ばない。
今の私こそ、天下無双のOL!
出社しなくていい日の社畜ほど、無敵なものはない(と思う)。
「本当は、何かするべきなんだろうけど……」
ビジネス書には、
「休みの日の前日の夜、明日の予定を決めてから寝る」
「休日はどこかに出かけろ」
などと書いてあるものもあるけれど。
別のビジネス書には、
「休日は家でゆっくり過ごす方が心が休まる」
そう書いてある。結局のところ、どう過ごすのがいいのか。
そんなことに正解はなくて、自分自身で決めることが大事なんだ。
そう思う。だから……。だから……。
「今日は! もう! 寝る!!!」
ただひたすらに! 寝る!
もちろん、お腹がすいたら、起きてご飯を食べる。
布団の中で、冷蔵庫の中身を想像する。
「食べるもの、あったかな……」
確か、冷凍のパスタを買っておいたはず。
いや、あれは一昨日の夜に食べたんだった。
それなら確か、冷凍しておいたご飯があったはず。
あ、あれも確か昨日の夜使い切ったはず……。
「食べ物……、なかったかも……」
いやいや、きっと何かは冷蔵庫にある。
昨日の夜、冷蔵庫は空っぽじゃなかったもん。
そんなことを考えつつ、少しずつまぶたが重くなる。
問題ない問題ない、今日は休みだからもう少し寝たって……。
♢♢
それからどのくらい経ったかは、分からないけれど、目が覚めた。
窓の外には、さっきと変わらずオレンジ色の空が広がっている。
……ん? オレンジ色の空……!?
ベッド下に落としそうなくらいの勢いで、スマートフォンをとる。
「ぎゃあああああ」
それは、リアルホラーな話。
そう、さっき朝の5時だったはずの空は。
夕方の5時へと変貌を遂げてしまっていたのだった。
さよなら私の休日、また逢う日まで。
こうして私の一日は、布団の中で終わりを告げたのだった。
天下無双の★休日布団! 工藤 流優空 @ruku_sousaku
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