第15話 春を迎えるエピローグ

 春を迎える。アメリカ合衆国が一度戦争を交え、交友関係を結び、旅立っていった日本からの贈り物である桜が咲き誇る。その桜が植えられている広場はピンク色に染まる。


「Wow! 流石に人いっぱいだよ!」


 見に来たリチャードは感想を述べながら、その光景を眺める。桜の木の下で、レジャーシートを敷き、ランチを楽しんだり、昼寝をしたりしている人々がいる。


「そうだな。満開の報せがあった。そうなると駆け付けて来るのも道理だ」


 PZは穏やかな笑みでリチャードに付いていく。その足取りはとてもゆっくりとしたものだった。男の視線は着いてからずっと、桜に向いていた。


「ただ戦っているだけの日々では分からないことだな」


 PZが呟いたことで、リチャードの足が止まる。PZは少し大きくなった少年の反応を見つつ、柔らかい声で言い続ける。


「平穏な日常だからこそ、見ることが出来る景色もあるのだと思い知らされる」


 リチャードはPZがいる後方に振り向く。


「うん。俺は愛する人と一緒にそういう景色をもっと見たい」


 屈託のない笑顔をして、心から生まれた言葉を素直に言った。数十年前のように、優しい日差しと肌に当たる暖かな風があるわけではない。それでも今の二人にとっては心が温まる日常のひとつだ。

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プロトタイプ・ゼロ~特殊部隊員の探索譚と出会い いちのさつき @satuki1

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