第2話 氷の檻と桜の誓い

唇を奪われた瞬間の感触が、まだ湊の中に残っていた。

冷たく、それでいて熱を持つ矛盾した感触。


「お前、本当に……ふざけるなよ」


湊は怒りを押し殺しながらアレクセイを睨みつける。

しかし、ロシアの男は余裕の笑みを崩さない。


「何をそんなに怒ってるんだ?ただの口づけだろう」


「ただの……?!」


湊の顔が微かに紅潮する。

アレクセイはその様子を見て、ますます楽しそうに笑った。


「お前って本当に素直じゃないよな。そういうところがまた……そそるんだけど」


「ッ……!」


湊は拳を握りしめ、思わず一歩踏み込む。

だが、アレクセイはそれよりも早く、湊の細い手首をつかんだ。


「離せ!」


「いやだね。お前が俺のものになるまで」


「……何を言っている」


湊は目を見開く。

今の言葉が冗談なのか、本気なのかわからなかった。


「なあ、湊。俺たちはずっと争い続けてきたよな?」


アレクセイはそのまま湊の腕を引き寄せ、自分の胸に抱きこむ。

筋肉質な体が湊の華奢な体を包み込むように密着する。


「だがな、戦いってのは、憎しみだけで成り立つものじゃない。

 相手を知り、理解し、支配したいという欲望も、そこにはあるんだ」


「……支配、だと?」


「そうだ」


アレクセイの声が耳元で囁く。


「お前は俺にとって、ずっと手に入らない美しい獲物だった」


「ッ……!」


「だが、もう逃がさない。

 

 お前がどれだけ俺に反抗しようと、俺はお前を支配してみせる。」


湊の背筋がぞくりと震えた。


一一支配。


その言葉に、恐怖と、抗えない甘い期待が入り混じる。


「……ふざけるな」


湊は精一杯の抵抗を見せ、アレクセイの胸を押し返そうとする。

だが、その腕の力は強く、湊の抵抗など無意味だった。


「湊……俺はお前を壊したい」


「ッ……!」


「お前のその強がりを、プライドを、すべて俺の手で崩したい。

 そして、お前が俺以外の誰にも屈しないまま…俺のものになればいい」


湊の呼吸が乱れる。

ロシアの冷たい瞳が、まるで湊の心の奥底を見透かしているようだった。


「俺は……お前には負けない……!」


そう言いながらも、湊の身体は熱を持ち始めていた。

アレクセイはそんな湊を見て、満足そうに微笑む。


「いいね、もっとその顔を見せてくれ」


そして一一再び、唇が重なった。




continue…

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氷と桜 @sakekasulaula

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