第2話 助産師の欠点
私は助産師をしている。
多分、妊娠・出産・育児に1番近い職業だろう。
辛い時もあるがやりがいがあって、
私はこの仕事が好きだ。
ただ、この仕事には欠点がある。
それは、妊娠・出産・育児に夢を見られないことだ。
不妊症、不育症、流産、死産、子宮外妊娠。妊娠に安定期はない。出産は命懸け。今まで順調な経過を辿っていた人がある日突然死に近づくこともある。生まれてくる赤ちゃんが必ずしも五体満足で元気とも限らない。
妊娠に至るところから出産・育児までの全てのプロセスが奇跡の連続であるということ。
普通に生きていたらきっと見ることがなかった現実を見続け、全てを知ってしまっているからこそ、怖い。
いわゆる”普通”に何事もなく母児ともに元気でいられる人の方が圧倒的多数だろう。
でも、その少数に当たる可能性は誰しもが秘めている。
“普通”だったか否かなんて結果論に過ぎないのだ。
その少数派になってしまうことを危惧してしまう。
漠然とした不安ではない。
明確な不安が押し寄せてくるのだ。
この不安の正体こそがこの仕事の最大の欠点だと思う。
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