不運な俺と幸運な私
左腕サザン
第1話 出会い
俺の名前は
栄運学園高等学校に通う、高校2年生だ。
キーンコーンカーンコーン
「はい皆席ついて〜」
一限のチャイムが鳴り、先生が声をかけると、皆が次々と席に座り、教室は静寂に包まれる。
「あれ? 神代さんは?」
先生が、俺の後ろの席を見ながら、不思議そうに皆に問いかける。
するとその時、教室の扉がガラガラと開き、1人の女子生徒が入ってくる。
「すみません! 遅れました!」
「あぁ良かった。早く席に着いてください」
「は〜い!」
彼女の名前は
神代さんは席につくと、俺の後ろでボソッと小さく呟く。
「あ、影山君、私の前の席だったんだ……」
気まずい!!!
まさか俺の後ろが神代さんだったなんて気まずすぎて死ぬ!!!
前後のどっちかに、1人でも多くいてくれたら、神代さんと前後の席になることなんてなかったのに!!!
あぁ、なんて俺はついてないんだ……
俺は別に、神代さんが嫌いというわけでも、苦手というわけでもない。
ただ、もの凄く気まずいのだ。
なぜ俺がここまで言うのか……それは、今日の朝の事だった……
今日は4月1日……長いようで短かった春休みが終わり、今日からまた学校が始まる。
今日から高校2年生。
学年が上がることで、クラスは変わり、担任も変わり、何もかもが新しくなる、忙しい一日。
そんな今日に備えて、昨日は目覚まし時計をセットして寝たんだ。
だが、なぜか目覚まし時計がなる前に、俺は目が覚めてしまった。
ラッキー! 目覚まし時計より早く起きれるとは、俺の人生初めての幸運?
そう思って俺は目覚まし時計を手に取り、時間を確認する。
「は、はぁぁぁあああ!?」
なんと目覚まし時計は、俺が眠りについた夜11時で止まっていたのだ。
夜は動いていたはずだから、まさかの電池切れ。
俺は急いで扉の上の掛け時計を確認する。
「やば! もう8時!? 遅刻するじゃん!」
俺は急いでベッドを飛び出し、朝の支度を進める。
「優斗〜、早くしないと学校に遅れちゃうよ?」
どう見ても急いで支度してるのに、母さんが急かしてくる。
「優斗? 朝ごはん……」
「行ってきま〜す!」
朝ごはんなんか食べてる暇はない。
電車がやってくるのは8時20分。
急がないと、いつもの電車に間に合わない。
俺は母さんの言葉を無視して、家を飛び出した。
全力で走り、駅へと着いたのは8時15分。
「良かった! ギリギリ間に合った!」
なんとか遅刻せずに済みそう。
俺はそう思って、Suicaを改札にかざすが、画面が赤く光り、改札が開かない。
「うわ! 残高ないじゃん!」
そう、こんな日に限って、Suicaの残高が全く残っていなかったのだ。
「早くチャージしないと……」
俺は急いでチャージ機に向かうのだが、年度の初めと言うこともあってか、いつもより人が並んでいて、かなり混んでいた。
「あぁもう! それじゃあ、券売機……」
Suicaがダメなら切符を買おうと、俺は券売機にも目を向けるが、やはり券売機も人がずらりと並んでいる。
どうしようと悩んでいると、一番端のチャージ機が空いた。
誰も並んでいないことを確認して、俺は急いでチャージ機へと向かい、Suicaを置いて、チャージを始める。
チャージするため、財布を開くが、中に入っていたのは1万円札。
「うわっ、1万円札だけか……両替すれば良かった」
とりあえず俺は、チャージ機に1万円札を投入し、操作を進める。
定期はまた今度にして、今日は今日の分だけをチャージしよう。
そう思って、俺は1,000円だけをチャージしようとした。
だがその時、俺はもの凄く焦っていたこともあって、額から出た汗が、チャージ機の画面にポタっと垂れた。
すると、その汗に反応して、10,000円のボタンが反応してしまったのだ。
「あぁぁぁあああ!!!」
俺の叫び声に、周りからの視線が向けられる。
俺は恥ずかしくなって、急いでSuicaを取り出し、改札を通った。
スマホを確認すると、8時19分。
走れば間に合う! と、俺は1番線ホームへの階段を駆け上がる。
だが、春休みに運動をサボっていたせいで、足に乳酸が溜まり、いつもより足取りが重い。
上を見上げれば、もういつもの電車が止まっていた。
俺は最後の力を振り絞り、なんとか階段を登りきる。
「よし! 間に合っ……」
間に合ったと思ったのも束の間、俺の目の前で、電車の扉がゆっくりと閉まってしまったのだ。
あぁぁぁあああ!!!
俺は心の中で叫び声をあげる。
次の電車は8時35分。これに乗る場合は、駅に着いたら学校まで本気で走らないと、遅刻してしまうことを俺は知っている。
そんな数十分後の未来に不安を抱きながら、俺は電車を待つのだった。
見てもらったら分かる通り、俺は生まれつき、ものすごく運がない。
運は気持ちの持ちようだなんてよく言うが、俺のはそれを遥かに超えている。
登校すれば、鳥に糞をかけられ、道端に落ちているガムを踏みつけ、雨の日はトラックに水をかけられる。
それがほぼ毎日だ。
正直、そんな些細な不運は、もう慣れているから気にしないことにはしているのだが、このままだと、いつか死ぬんじゃないかと不安で仕方がない。
そんなこんなで、8時35分の電車に乗り、学校近くの駅に着いた。
現在時刻は8時50分。9時までにつかなければ遅刻となるため、俺は乳酸の溜まった足を必死に動かし、全力で学校に向かって走る。
そして、ようやく校門前の坂までやってきた。
俺は坂を全力で駆け上がり、校門を抜ける。
その時だった……
「っ!!!」
「キャっ!!!」
俺は誰かと激しくぶつかる。
急いで立ち上がり、相手を見ると、そこに居たのは、学年一の美少女と噂の神代さんだった。
「かかかかかかかかかかかかか神代さんんんんんん!?」
震えてまともに話せない。
なぜなら、俺がぶつかる直前、神代さんは水を飲んでいて、俺がぶつかったせいで、神代さんは水を手放し、その水が制服にビシャビシャにかかってしまっていたからだ。
学年一の美少女に怪我をさせ、さらには制服を濡らしてしまった。
そんな事実が広まれば、ただでさえ嫌われ者の俺は、さらに居場所を失うことになってしまう。
「す、すみません! 神代さっ……」
俺はとりあえず、彼女に謝ろうと思って近づこうとしたら、神代さんの落としたペットボトルに足を滑らせ、盛大に転んでしまった。
加えて、ちゃんとロックをしていなかったリュックからは、大量の教科書が雪崩のように出て来る。
「カァー! カァー!」
ポツン。
さらには、空を飛んでいるカラスに、頭に糞をされてしまう始末。
終わった……
神代さんに怪我をさせ、制服を濡らしてしまった挙句、こんな醜態まで晒してしまったのだから。
神代さんはきっと、こんな俺を気持ち悪がって引いているだろうなと思って、そっと目をやると……
「あははははははは!!!」
なんと、腹を抱えて大爆笑をしていた。
しかも、笑いすぎて目からは涙が出ているし、床に寝転がって笑っている。
なぜこの状況で笑えるのだろうか。
制服を濡らされているのだから、普通、自分の心配をするだろうに……
すると、少しして笑いが止んだ神代さんは、ゆっくりと立ち上がり、俺にティッシュを差し出してきた。
「はい、影山君。これで頭拭いて」
あれ、どうして神代さんが、俺なんかの名前を知ってるんだ?
1年の時、クラスは違ったし、俺なんか眼中に無いはずなのに……
「あ、ありがとうございます……でも、神代さん、制服が……」
俺はティッシュを受け取り、神代さんにそう声をかける。
「大丈夫大丈夫! これくらいすぐ乾くから! それより、早く行かないと遅刻しちゃうよ?」
神代さんとぶつかって忘れていたが、俺は今遅刻をしそうだったんだ。
俺は急いで頭をティッシュで拭くと、教科書をリュックにしまい、神代さんにちゃんと謝れぬまま、靴箱へと走って行った。
「また教室でね……」
その時、後ろで神代さんがボソッと何かを言った気がしたが、俺には全く聞き取れなかった。
それから俺は、クラス表を見ていなかったため、自分がどのクラスなのか分からず、1組から順に入っていっては、先生に追い出され、他のクラスで恥をかいた。
結局俺の新しいクラスは、一番最後の3組。
なんとかギリギリ遅刻せずに済んだが、初日から色々とやらかしてしまった。
こうして今に至ると言うわけだが、神代さんだけ、制服ではなくジャージで教室に入ってきたのは、こういう事だったのだ。
しかも、同じクラスで、席が俺の後ろだなんて……
俺は果たして、高校生活を無事に過ごせるのだろうか……とても不安だ……
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「面白いじゃん!」
「続きが見てみたい!」
「この先が気になるっ!」
と思っていただけましたら、
ぜひとも下にある☆☆☆から、この作品に対する評価をよろしくお願いします!
★★★をつけて頂けると、作者はものすごく喜びます!
もちろん、★☆☆でも★★☆でも大丈夫です!
皆様の正直な評価をよろしくお願い致します!
ブックマークをいただけたら、作者は超喜びます!!
私の作品を、貴重なお時間を割いて読んでくださり、本当にありがとうございました!
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