第10話 襲撃

いつものセットを食べ終えた頃、店の外に出た俺に成美が合流した。




「お待たせ、いつもありがとう——」




ポニーテールにまとめた髪をかき上げながら、彼女はそう言ってバイクに歩み寄る。




「ついでだからな――ホレ」




「うん」




最近はウイルスの活動も活発になっている、ノーヘルなんてさすがにさせられない。


いつもより念をおして、俺は彼女にヘルメットを装着させた。




「じゃあ、ステーションでいいな」


「お願いね」




俺に見えるように首をかしげるようにして、彼女は顔を見せて笑った。


といってもヘルメットで目元しか見えないが——。




バイクを走らせ、いつもの道を行く—―。




『そういえば、この下はまだ……』




ふと俺は思い出す。




基地で見た損傷後、表面だけ復旧したが下層がまだモザイク状に壊れた実際のプログラム画面を。




「?」




バグに巻き込まれては面倒だと俺は無意識に、バイクを端に寄せて走る。


その様子に不思議そうに成美はしている——。




バイクの背後視界モッドで実は姿が見えているなんて、彼女は思いもしない事だろう。




今日のステーションは全開みたく混雑としていなくて、落ち着いていた。




ラッシュ時間でなければ、これがステーションの普通なのだ。




「!」




成美を下ろすと、待ちに警戒アラートが鳴り響いた——ウイルスだ。




「成美!気を付けて早く帰れ」


「え、う——うん!」




俺にヘルメットを手渡して、成美はステーション内へと駆け込んだ。




その後ろ姿を見送ると俺はジャケットを羽織った。




このジャケットの中にあるICがないと、味方から敵認定されてしまう。




そしてライダースーツには目立たないが、モッド加工がされており、いざというときの備えにもなってる。




「やるか」




俺は現場へとバイクを走らせた。






現場はステーションからそれほど離れていない。




「!」




俺は目を一瞬疑った——今までのバイク型じゃない。




装甲車のような見た目の敵は、こちらに向けて機関銃を撃ってくる。




「プロテクトバリア!」




このバリアモッドは正面からの攻撃に有効で、左右のカバーができない。


よって、俺はバリアを信じて機関銃に突っ込まざるを得ない。




『ハヤブサ—―きこえるか!』


「藤堂のおっさんか!?」




通信機から、藤堂の声がして俺は反応する。




『他の奴はこちらのプログラムで対応する、だが目の前の奴までは——』


「ああ、一対一ならかまわねえ!――こっちでなんとかする!」


『就任早々、殉職だけは勘弁だからな』




藤堂にそう言われて、俺は敵をよく観察する。




機動力はあれど小回りはバイクほどない、厄介なのはあの機関銃だ。




「エアダッシュ!」




俺は飛び上がり、エアダッシュで装甲車の背後を取ろうとした。




「!?」




乾いた音がしたとともに、俺の太ももが衝撃を受けた。




「ホバー!」




転倒しそうなところ、ホバーモッドをつかい、俺はそのままビルの陰へ滑り込んだ。




どうやら自動照準器が装甲車についているようで、それに撃たれたらしい。




太ももはライダースーツのバリアモッドのおかげで、出血はない。


打撲程度だろうか、じんじんとした痛みがした。




「後で腫れるなこりゃ——」




足首じゃなくて太ももでよかったと思うべきか、とりあえず俺は体制を立て直した。




『――』




時折通信機から漏れる藤堂の声、状況はあまりよくなさそうだという事だけわかった。




「しっかりしてくれよ!たくっ――!」




そう吐き捨てた俺は背筋が凍るような感覚を感じた。




『あいつ、ステーションへ向かってやがる!』




ステーションにはまだ成美がいるかもしれない。




藤堂たちからの援護は期待できない。




「させねえよ!」




俺は無我夢中でバイクにのり、敵の前に飛び出した。




正面は機関銃、空中は自動照準迎撃装置――。




「これしか——ない—ー」




俺はスロットルをふかし、バリアを最大展開する。




機関銃が音をたてて、数えきれない銃弾をばらまくように撃ちまくる——勿論、正面からの弾丸はバリアに阻まれる。




「最大速度に低空エアダッシュ!」




自動照準が反応するかしないかギリギリのエアダッシュ——これはもう賭けだった。




スーツに防衛モッドを詰んでなければきっと、肩が外れていたかもしれない。




「ムーンサルト!」




そして勢いをりようして、装甲車の下からまくり上げるように俺はバイクを回転させた。




このモーションは一時的に、回転時にバイク下部へバリアを集中させて、相手に攻撃を与えるモーションだ。




バリアと装甲車の衝突の激しい音、さらに衝撃が身体全体に走った。




作ったのは自分だが、実際に使う気はサラサラなかった——日の目を見るはずのなかった奥の手だ。




「!」




装甲車が横転する寸前、自動照準が合ったのか銃弾が俺の顔面目掛けて飛んでくる。




歯を食いしばり、首を倒してなんとか斜線から頭をよけようと俺は踏ん張った。




ヘッドショットを最短で狙ってくれたおかげか、間一髪でおれはヘルメットのゴーグル部分と額にキズを追う程度で済んだ。




横転した装甲車は機能を停止したようで、煙を出したまま動かなくなった。




「死ぬかと——思ったマジ」




ヘルメットに垂れた血をみて、俺はギリギリの戦いで勝てたのだと実感する。




「らしくない——らしくない事をした」




感情的になり、ぶっつけ本番のリスキーな技を使った事を俺は反省する。




『ハヤブサ、こちらは食い止めに成功した——応援はいるか?』


「いや、一体行動不能にしたから大丈夫だ」




とりあえず、ステーションへ向かってるウイルスは藤堂達の方でも食い止めたようだ。




『そうか、流石だな』


「危なく、殉職寸前だったがね——」




誇張でもなんでもない、本当に死ぬ寸前だった。




「手当とか期待させてもらうからな」




そういうと俺は通信を切った。




ここから応援や増援など、ハッキリ言って行ける気がしなかった。




今になって掠めた銃弾の痛みを俺は感じていた。

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