第3話 ポンコツ神様との出会い
天国は、四季を超えた美しさが広がる楽園だった。色とりどりの花々が咲き誇り、どこまでも続く草原は優雅な風にそよいでいる。暑くも寒くもない心地よい空気が満ち、柔らかな光がすべてを包み込んでいた。
「ふむ、ここが天国ね? さて、神様はっと……どこかしら? いないわねぇ。普通、こういうのって、いかにも神様っぽいおじいさんが、白いローブを纏って神々しく立っているもんじゃないの?」
そう呟いたその時だった。ふよふよと宙を漂う、小さな光の粒がブロッサムの視界に入る。
「……虫?」
思わず、手を振って払いのけようとする。
「痛っ! これこれ、なにをするんじゃ!」
「……ん? 今、喋った?」
ブロッサムが目を凝らすと、そこにはふわふわと浮かぶ、どこかだらしない雰囲気のお爺さんがいた。
白いローブを纏ってはいるものの、妙に着崩していて、神々しさはゼロ。むしろ、酒でも飲んだ後か? というくらい気の抜けたオーラを放っている。
「妖精……? いや、にしてはずいぶん歳をくった妖精よね。妖精ってもっと幼いイメージがあるんだけど」
「ほっほっほ、それは人間の勝手なイメージじゃな」
「まぁいいや。ねぇ、神様はどこにいるの?」
「目の前におるぞ」
「……は?」
「だから、わしがその神様なのじゃよ」
いくらなんでも小さすぎるとは思ったが、一瞬それなりに神々しく見えなくもない……。しかし、よく見ると、顔には締まりがなく、姿勢もだらしなく、全体から漂うのは圧倒的な脱力感。どう見ても「偉大な神」とは思えなかった。
「……あなたが神様? ずいぶん適当なことをしてくれましたよねぇ? 私、人違いで刺されて死んだんですよ? それだけでもひどいのに、せっかく転生させてもらったと思ったら、今度は断頭台送りって……!」
ブロッサムはジリジリと詰め寄る。
「……ご、ごめんなさい。ちょっとした手違いで……」
「手違い? え、私が処刑されたのって、そっちのせい? 神様、無能すぎん!?」
神はしょんぼりと肩を落とす。なんだか可哀想だが、ここはきっちり責任をとってもらいたい。
「いやぁ、わしもお詫びに転生させたんじゃがのぅ……それがまた、ちぃと計算違いでのぅ。ほんとはお前さん、優雅な貴族令嬢としてのんびり暮らすはずじゃったんじゃが……どこでどう間違えたか、処刑ルートに入ってしもうたんじゃよ……」
――駄目だ。この神様、無能すぎる……
「じゃが! 信じるんじゃ! 今度こそ大丈夫じゃ! 次こそは、穏やかに暮らせるスローライフをプレゼントしてやるぞい!」
「すみません神様。あんたの言葉って、もはや信用できないんだよね」
「そ、そうかのぅ? なら……あれじゃ! あの世界はのぅ、毒殺が多いんじゃよ。お前さん、人間関係はお局パワーで世渡り上手じゃろう? なら、大抵のことは切り抜けられるはずじゃ。じゃが、毒殺だけはどうにもならん。そこでじゃ……ほれ、これを授けてやろう!」
神がポンと宙に放り投げたのは、金色に輝く3つのスキルだった。
「毒鑑定眼、薬草識別、解毒の書! さぁ、これでお前さんは安泰じゃ!」
「……それ、ちゃんと使えるんでしょうね?」
「ま、まぁのぅ……努力次第じゃな?」
「……」
「さぁ、行ってらっしゃぁぁああーーい!! 今度こそ、幸せになるんじゃぞーー!!」
「ちょっ、待て! まだ話は――」
ブロッサムが叫ぶ間もなく、神はふわっと手を振り、眩い光が視界を覆った。
――そして、次の瞬間、ブロッサムは再び目を覚ましたのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
さぁ、いよいよ、明日から
死に戻りの悪女、目覚めて画策しますよーー(*^。^*)
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