別の世界で特殊部隊である俺はこの世界では平和に暮らす。
おかね
第1話 何の変哲もないー
「ああ、俺はいったい何人殺したんだろうか」
一人でそう呟く男の周りには死体が十と少し落ちていた。
彼が手に持っているただの棒切れには多くの血が滴っていた。
「何人も、何人も殺しておいて今更かよって感じだよな」
彼の眼に映るのは暗く何もない空間だけであり、
ただなんともいえない静寂がそこにはあった。
「戦いだけの人生だったな」
そう言って彼は自分の頭を手にしていた棒で貫いた。
「うげぇ!!」
そのような声を出し、体を大きく動かしてベットの上からすべり落ちた。
「ここはどこだ?俺は確か,,,」
眠っていた脳が働き始めた頃に、可愛らしくそして元気な声が聞こえてきた。
「あんぽんたんおにい!なにしてるの!」
なんだこのちんちくりんなおなごは
そう思いながらきょとんとしていると腕を引っ張られた。
そうだこの女の子は僕の妹のユウキだ。
僕は妹と二人暮らしで仲睦まじく平和に暮らしている。
だんだんと脳が起き始めてきた。
「今日は雨が降るみたいだから傘をきちんと持っていくんだよー」
ユウキは扉から体を半分ほど出してそう僕に伝えた。
やっぱりしっかりした妹だなぁと思いながら感謝を伝える。
「ちゃんと持っていくよ!ありがと!」
ユウキは先に学校に行ったみたいだ。
いつも通りの妹、いつも通りの朝、
ほんとに毎日同じ感じで時間は進んでいくなあ。
そう思いながら、ユウキがつくってくれた好物のはちみつパンを早々に食べ学校に向かった。
通学路を歩いていると後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「カイくんおはよー!」
振り向くとそこには綺麗な黒髪の凛とした美しい少女がいらっしゃった。
「おはようございますです。かすみさん様。」
美しい彼女に朝からお目にかかれて心から浄化された気がした。
彼女は高校からの付き合いで同じクラスの同級生というやつだ。そして、僕に対して何故か良くしてくれてる素敵な女性だ。
「また変な敬語使ってるね」
そういいながらかすみさんはくしゃっとした素敵な笑顔をする。
にしても素敵な笑顔やなちくしょー。
その笑顔をにやけながらもばれない様にガン見していたところに邪魔が入った。
「おう!お前ら!元気にやってたか!?」
男らしい声の主は僕の幼なじみのヒロキだった。
こいつのことはいろいろ説明するだけ時間の無駄かもしれない。
端的に言えば冗談好きな人懐っこい性格をしたよくいる馬鹿だ。
「元気にやってたかって昨日も会っただろ?」
いつものように三人でなんでもない会話をしながら学校に向かった。
自分で思うのもあれだけど僕は友人に恵まれている。
かすみさんやヒロキがいてなんでもない毎日をおくるだけの素敵な人生を過ごしている。
僕はこの日常を何よりも愛しているんだ。刺激もなにもないけどね。
帰宅のチャイムが鳴った
今日はかすみさんは生徒会の仕事があって一緒に帰れないみたいだ。
ヒロキはというと、あいつは部活でやっているバスケで忙しいらしい。
まあ順当に一人で帰路に就くとするか。
帰り道を歩いていると雨がぽつぽつと降ってきた。
「ユウキが言ったとおりになったな」
妹に感謝しながら傘を開き一人で歩く。
歩いていくうちに雨がどんどんと強さを増していく。
制服が雨に濡れるのが嫌なので僕は近道をした。
その結果、誰もいない交通量もあまりない木々が茂るところに来てしまった。
「なんかここ気味が悪いんだよな」
そこら一帯は薄暗く人工物がない空間であり、
ただなんともいえない静寂がそこにはあった。
ガサッ
突然音が聞こえて体がビクンと反応する。
「ぶぎゃあああ!!」
怖さを紛らわすために自ら叫び声を上げる。
実は僕はかなりのビビりなのだ。
「さっきの音って、別に何にもないよな?」
独り言を言いつつ、草を分けて音が聞こえた方向にちょっと進んでみる。
うっすらと建物の輪郭が見えてきた。
そこには生活感を一切感じることのないぼろぼろの家があった。
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