前世の記憶を思い出した俺、クズ令息に転生したようだが前世でプレイしていたゲームの能力を引き継いでいたようなので何とかなりそうです。【祝!!コミカライズ進行中!!】
Crosis@奴隷使役重版決定!!
第1話 婚約破棄
「ラインハルト・フォン・クヴィストッ!! 今日で貴方との婚約を破棄させていただきますっ!!」
俺は今、婚約者であるスフィア・フェルディナン・ダルトワから婚約破棄の旨を告げられていた。
そもそも今日はスフィアの父親であり元聖騎士団団長であるダグラス・フェルディナン・ダルトワが主催したパーティーに呼ばれ、のこのこ行ってやったらこれである。
「この俺様がわざわざ貴様ごときの家で開かれるパーティーに来てやったのに開口一番、それも公衆の面前でこの俺様に恥をかかせやがって……」
「今まであなたがやってきた行為を鑑みれば、むしろこの程度の扱いなどまだ生温いと私は思いますっ。公爵家だかなんだか知らないですが、所詮はまだ家を継いでいない親の爵位の威を借る小物ではないですか」
そう言われて怒らない奴はいないだろう。
当然俺も頭に血が上り、怒りで腰に差していた剣を抜くと、スフィア目掛けて襲い掛かる。
「実に小物らしい反応ですね。だが貴方ごときに後れを取る私ではないのです」
しかし次の瞬間、俺の視界は天井を向いたかと思うと背中に強烈な衝撃を感じ、意識を手放すのであった。
◆
目が覚めると見知らぬ天井であった。
そして身体を起こして周囲を見渡すと、天井同様に俺の知らない部屋のベッドで寝かされていたようである。
不思議に思った俺は窓の外に目をやると、どうやらここはダルトワ家のようである。
恐らくあの後俺はスフィアに背中から投げ飛ばされて気を失ったようで、この部屋で寝かされていたようだ。
それと同時に情けなさと申し訳なさ、そして今までの俺の行為を思い出して羞恥心で誰も俺の事を知らない場所まで逃げ出したくなった。
今までの俺であれば決してそんな事を思う事もなく、怒りの感情を制御できずに暴れ始めていた事だろう。
そもそも今回の件に関しては完璧に全て俺が悪いにも関わらず逆切れも良い所であろう。
そして何故そう思えるようになったかと言うと、俺はあの衝撃で前世の記憶を思い出したようである。
そのお陰か、俺自身の事を客観的に見る事ができた結果、いかに俺がドクズであったのかという自覚が窺える事ができたという事である。
はっきり言って、黒歴史と言うにはあまりにもヤバ過ぎるレベルでやらかしていると言っても過言ではないだろう。
俺の親は公爵家だというのをいいことに、学園では暴君であり、婚約者であるスフィアに対しても『俺の言う事を聞いて当然』という態度を取ってきた。
気に食わない事があれば癇癪を起こしていたため教師側からしても厄介な生徒であった事だろう。
思い出しただけで胸がきゅっと締め付けられるようだ。悪い意味で。
まぁこれでは嫌われても当然であるし婚約破棄されるのも仕方がないだろうと、今の俺であれば受け入れられることができる。
はぁ、どうせならば前世のライトノベルとかで良くある『前世でやり込んでいたゲームのキャラクターとして転生する』とかだったら胸熱なのにな。
それこそ前世の俺が唯一前世でやり込んでいたフルダイブ型VRMMORPGゲーム『ユグドラシルサーガ』で育てたキャラクターであれば……いや『ユグドラシルサーガ』の世界であれば……と、落胆しつつもできる訳がないと思いながら『ユグドラシルサーガ』でのストレージを開く動作(開く為には自分が設定した特定の動きをする必要がある)を左手人差し指を慣れた手つきで動かす。
「……嘘だろっ!?」
そこには俺の予想と反してストレージが開き、『ユグドラシルサーガ』で手に入れた道具や武器の数々に、そこで得た総合経験値と覚えていた様々な魔術を取得できる状態でそこにあった。
その光景を見た俺は恐る恐る指を動かして『全ての経験値を取得する』という項目と『全ての魔術とスキルを取得する』という項目を選択して決定する。
するとその後に『本人確認の為のIDとパスワードを入力してください』と出たのでそのままソフトウェアキーボードを視界上に出して入力し終えると『能力の移行及びストレージの移行が完了しました』というメッセージが表示されるではないか。
それと同時にゲームで使用していた魔術とスキルの使い方を理解する事ができた。
………………これって逆にスフィアから婚約破棄されて良かったまであるのでは? と、思わずそう考えてしまう。
恐らく俺はこれでクヴィスト家の家督争いから一抜けする事になるだろうし、クヴィスト家は弟が継いでくれるだろう。
弟は俺と違ってできた弟なのでクヴィスト家にとっても俺が継ぐよりも将来的に考えれば良いだろうし、俺は俺で家督を継がないという事は貴族のしがらみからから邪魔される事もなく自由に生きていく事ができる。
そう考えればクヴィスト家からしても俺からしても良いこと尽くめではないか。
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