光を贈る 〜輝きを信じたあの日々〜
Algo Lighter アルゴライター
光を贈る 〜輝きを信じたあの日々〜
第1章:不器用な背中
「じゃあ、今日のリハーサル、あゆみがセンターで、沙織がサブね。」
ダンス指導の先生が配置を指示する。
メンバーが一斉に動き出す中、自然と美咲は三列目に立っていた。
いつものことだ。美咲は大体、端か後ろだ。
それでも、美咲は笑顔で「がんばります!」と言っているけれど、
その背中はどこか頼りなさげで、正直心配だった。
——けど、彼女は絶対に弱音を吐かない。
それが逆に、私にはもどかしく映った。
正直、何度もため息をついた。
美咲はいつも三列目や端のポジションが多くて、目立たない。
私も同じように後列で踊っていることが多いから、その悔しさがよくわかる。
それでも、美咲は絶対に弱音を吐かないし、笑顔を崩さない。
そんな美咲を見ていると、自分が情けなく感じてしまう。
正直、何度も「どうして私じゃなくて美咲なんだろう?」と思ったこともある。
自分だって努力しているのに、どうして評価されないんだろうって。
でも、美咲があの小さな背中で、黙々と努力している姿を見るたびに、
その気持ちが恥ずかしく思えてくる。
だって、私は心の中で不満を抱えたまま、
本気で向き合っていなかったのかもしれないから。
第2章:届かない声
SNSを開けば、冷たいコメントが並ぶ。
「ダンスが下手」「いる意味ある?」「引退すればいいのに」
私だって叩かれることはあるけど、美咲に対する言葉は一際きつかった。
それでも彼女は、いつもと変わらず笑顔でいる。
「美咲、大丈夫?」と聞くと、必ず「うん、大丈夫!」って答える。
けれど、そんな彼女の強がりが逆に痛々しかった。
ある日、楽屋でふと見えたスマホの画面。
美咲がSNSを見ているのがわかった。
その表情が、明らかに曇っていた。
「美咲、見ない方がいいよ」
そう声をかけたけれど、美咲は無理に笑って答えた。
「平気だよ。慣れたから……」
その笑顔が痛々しくて、胸が苦しくなった。
一緒に頑張ってきた仲間が傷ついているのに、
私はただ「大丈夫?」としか言えない自分が悔しかった。
何もできない無力さに、胸が締め付けられた。
第3章:夢を抱えて
レッスンが終わった後、私は美咲と二人で歩いていた。
沈黙が続く中、ふいに美咲がぽつりと呟いた。
「私さ……本当にアイドルになってよかったのかな?」
驚いて振り向くと、美咲は少し笑っていた。
でも、その瞳には涙が浮かんでいた。
「どれだけ頑張っても結果が出ないんだ。みんなみたいにうまくできなくて……」
その言葉が、胸に刺さった。
私はなんて言えばいいのかわからなかった。
「頑張れば報われるよ」なんて、簡単に言えなかった。
だって、それが嘘だとわかっていたから。
「……でも、私はやっぱりアイドルでいたい。」
涙を拭って、美咲は強く言った。
「誰かの笑顔を作れるなら、もう少しだけ頑張りたい。」
その決意に、私はただうなずくことしかできなかった。
第4章:輝きを信じて
数ヶ月後、美咲が卒業を発表したとき、私は言葉を失った。
「アイドルとしては一流になれなかったかもしれない。でも、私が伝えたかったことを文章なら届けられるかもしれない。」
そのコメントが公開されたとき、涙が止まらなかった。
本当は悔しかっただろう。
あんなに努力してきたのに、評価されなかった悔しさ。
それでも、最後まで強がって、夢を言葉にして前を向こうとする美咲が眩しかった。
数ヶ月後、本屋で彼女の名前を見つけた。
表紙をめくると、そこにはあの日の彼女の思いが綴られていた。
「どれだけ頑張っても届かないことがある。それでも、私は諦めたくなかった。」
その言葉が胸に刺さった。
——あんたは本当に強いよ。
私は、あんたの背中に励まされていたんだ。
気づいたら、涙が止まらなかった。
「美咲、あんたは確かに輝いてたよ。」
その言葉を胸の中で繰り返しながら、本をぎゅっと抱きしめた。
光を贈る 〜輝きを信じたあの日々〜 Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter
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