敏腕エージェントの日常9
信仙夜祭
今日は、大失敗か~
「ふっ……。良いざまだな、他国の敏腕エージェントよ。今までは、散々煮え湯を飲まされたが、それもここまでだ!」
今私は、捕まってしまった。布団で簀巻きにされている。動けないよ。
しかも、他国の凶悪国家保安局にだ。もう終わりかもしれない。
「しかし、天下無双と言わんばかりに、情報操作から破壊工作まで熟した敏腕エージェントが、ハニートラップには引っかかるんだな」
いえ……、違うんです。
彼女がターゲットだったんです。他国の王族のお姫様だとは聞いていなかったんです。
アルコールが入って、ちょっといい雰囲気になったので、部屋に連れ込んだら、君らがいたのよ。うちの上司を叱ってやりたい。情報不足だよ。
「海でサメとダンス……。山で熊とダンスもいいな。コンクリート抱えて、街中でさらし者も面白いかもしれないな。誰と踊りたい?」
おいおい……。こいつ、危ない奴だ。
この敏腕エージェントを捉えて、情報を引き出そうとしないとは……。
私は……、こんな奴に捕まって終わりなのか?
そう思った時だった。
──ガシャン
窓ガラスが割れて、部屋の明かりが消える。それと、スモークだ。煙が部屋に充満した。
──パンパンパン
銃撃音が聞こえる。その後、誰かに抱えられて、部屋から逃れられた。
◇
今は、車で移動中だ。
どうやら嫁が助けに来てくれたみたいだ。王族護衛部隊を呼んだんだな。
「いや~、敏腕さん。危なかったですね~」
「平凡エージェントか。ターゲットが他国のお姫様だとは聞いていなかったのだが?」
「うちの上層部の失態ですね。後から気が付いて、応援に来ました。このまま、この国を去りましょう」
文句の一言くらい言わせろよ。
それと、何時まで簀巻きのままなんだ……。
「なあ、嫁よ。縄を解いてくれないだろうか?」
「安全が確保できたら、お聞きしたいことがあります。お姫様と部屋で何をするつもりだったんですか?」
ふう~。一言でも間違ったら、明日の朝日は拝めそうにないな。
私は未だ、絶体絶命の最中だ。
◇
こうして、今日もこの国の平和が護られた。
敏腕エージェントの活躍は、終わらない。つうか、今回はなにもしなかった。
終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。
敏腕エージェントの日常9 信仙夜祭 @tomi1070
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