第3話大人気らしい

薬師の彼は大人気と言っていたから、また買いに来るのだろう。


それを待つだけだ。


いつも受け身だけど、自分にはそういうのは肌に合わないし、都会に行く気はさらさら無い。


彼に精々売りに行ってもらうのが、関の山。


「恋の香水は恋を叶えるものじゃなくて、恋する人がつけて勇気をもらうってのがコンセプトなのに、たいそうな噂が触れ回ってるんだなぁ」


因みに起きている時にはいた男は、いつの間にか帰っていた。


いつものことなので、気にしたことはない。


いつも勝手に、来たり帰ったりする人だから。


ネリネリ練ったり、鼻で香りを調節している間にまたまた日を跨ぎ薬師が再来。


ナグレスは非常に上機嫌で挨拶してきた。


また買いに来たんだろうと、気だるげに迎える。


作っておいたよと言い、商品を指差す。


ロアマリヤの言葉に彼は商品棚を見て、増えたなと驚く。


まぁね。


しかも、瓶も瓶で可愛くした。


向こうの世界の雑貨屋を参考にしたのだ。


棚を見て回るナグレスを横目に、カードを作成。


見終わった漢がカードを見て、これがあのおまけかという。


首都ではオマケではなく、なぜかラッキーアイテムっぽく、扱われているというではないか。


「売れた?」


「売れた。すっげえ売れた」


「よかったね。新作作ったから好きに買ってって」


「それも買う。買うが。お前を誘いにきた」


「誘いに?どこに?」


「最近有名な黒糖を使ったお菓子の店」


「あー、黒糖ね。あれ、うちから出してる商品なんだよね」


思い出したことをいう。


「……はぁ??お前の店に黒糖なんかねえじゃねぇか」


と、指摘されるものの違うのだよそれが。


「裏メニュー的なやつ?」


あやふやな表現になるが。


肩を掴まれる。


「おれにも売れ!買う!高値で!」


「独占販売結んでるからしばらく無理」


「どこのやつだ!?あそこか?菓子売り出してるあそこなのか?」


鬼気迫る顔で問うから、頷く。


別に、言ってはいけないとかではないし。


「くっそー!おれが結びたかったっ」


「食べに行けば?いけば食べられるじゃん」


「お前と食いに行く」


立ち直ったナグレスが上を向く。


「あ、そういえばうちの保冷庫にあるよ。いくつもあるから食べていきなよ」


「……考えたらわかることだった。あるよな。独占販売先は大切にされるだろうよ」


肩を落とす。


多種多様な顔が見られて飽きない人だ。


「食う。お前はもう食ったよな」


「まぁね、というか、そのお菓子の監修私なんだよねぇ」


「はぁああ??」


もう頭が働かないのか、固まってしまう。


その後きっちり菓子を食べた彼は、美味い美味いと夢中で食べた。


「お前を連れて、男のおれでも入れるようにと画策したんだが」


「コンセプト的に男女入れるようにしたんだけど、まだ入りにくい?」


「甘いって時点でなぁ。ちょっとなあ」


「ふーん。じゃあ食べたくなったら私のうちに置いて行ったりして、お土産風にすれば?」


「土産!そうだな。お前そういや女だったな」


「中型瓶と大型瓶どっちで殴られたい」


そういやってなんだ。

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