青き日の少年

昼月キオリ

青き日の少年

第一話 始まりの夏


それはまだ僕らが小学5年生(11歳)の時だった。

僕らはいつも4人で一緒に遊んでいた。

いたずら好きな紺君、ヤンチャな空君、サッカー少年の奏多君、それと平凡で気弱な僕。



ある夏の日。4人で河原で話した後の帰り道。

いつものように帰る方向が同じ僕と空君は紺君と奏多君と別れた後、途中から二人で帰ることになった。


ミーンミーンミーン・・・。


空「俺、ブンちゃんのこと好きだから!」


セミの鳴き声と暑さに負けないくらいの大きな声で突然告白された。

空君は両手をぎゅっと拳を握りしめていた。


文太「え?・・・」


いつもはふざけてる空君だったけど

一生懸命なその姿に冗談ではないとすぐに分かった。

好きなのは自分だけじゃなかったんだと知って嬉しかった。



文太「ぼ、僕も空君が好きだよ・・・」

空「え、まじ!?絶対フラれると思ってたのにやったぁ!!大好きブンちゃんー!」


空は文太に思い切り抱き付いた。


文太「ちょっと、痛いよ空君!」

空「あはは、ごめんごめん!」



この頃の僕らはずっとこの気持ちは変わらないと思ってた。

紺君と奏多君は僕らの仲を応援してくれていた。

最初に話した時、紺君は驚いていたけど

奏多君はどうやら何となく僕らの気持ちに気付いていたらしい。


僕の親は一瞬驚きはしたものの、あっけらかんとして気にしていない様子だった。



でも、空君の両親は違った。二人の仲に猛反対し、別の中学へ強引に入学させたのだ。

それに加えて周りの人達の奇怪なものを見るような視線や冷たい言葉に

次第に二人は距離を置くようになっていった。



紺「気にすることないって!」

奏多「俺らは二人の味方だから」

二人はそう言って励ましてくれた。

文太「うん、ありがとう」

空「・・・」


でも、空君はずっと浮かない顔をしてた。


結局、僕らはすれ違ったまま卒業式を迎えてしまった。

僕と紺君と奏多君は同じ中学へ、空君は別の中学へと入学した。

 







第二話 君と僕

それから5年。


文太は中学から強さを求めて空手を始め、大会で優勝するほど強くなっていた。

 

真田先生(空手部の顧問)「よくやった文太!

 最初はあんなに弱かったのにまさかここまで強くなるとはなぁ

頑張ったな!!」

文太「これも真田先生の熱心な指導のおかげですよ!」

真田先生「はは、文太は可愛い奴だなぁ!」

校長先生「真田先生は赤坂君の指導に力を入れてましたからねぇ」

文太「校長先生!来てくれてたんですね!ありがとうございます」

 

文太はぺこっとお礼をする。

 

校長先生「ははは、君は本当に素直でいい子だなぁ

真田先生が入れ込むのも無理はない」

真田先生「やればやった分だけどんどん強くなるんで鍛えがいがあるんですよね

文太!この調子でこれからも頑張ってくれよな!」

文太「はい!」

校長先生「やり過ぎて体だけは壊さないようにな」

文太「ありがとうございます」


 

一方、空は盛大にグレていた。

空「うるせぇな文句あるかよ」


空がグレた要因は両親にあった。

文太との仲を引き裂かれた事でキレた空は父親に抗議した。

父親「馬鹿野郎!目を覚ませ空!」

空「俺は真剣だ!!」

父親「何でお前は普通にできないんだ!男が好き?ふざけるのも大概にしろ!」

 

父親は空の頬を殴った。

 

空「いてぇ・・・チッ、自分達の思い通りに子どもが育たなきゃすぐこれかよ」

父親「何?」

空「思い通りに動くもんが欲しいんならロボットでも買えっつーの

俺なんか産まなきゃ良かっただろ!!」

父親「何だと!?」

 

再度俺に殴りかかろうとした父親を母親が必死で止めに入った。

 

母親「あなた!辞めて!!」


俺は中学から高校までずっとこんな感じだ。

親父とは顔を合わせる度に喧嘩をしていた。

高校までは面倒を見るが卒業したら出て行けと言われた。

そう言われてせいせいしている自分がいた。

 

第三話 夏の記憶

文太"夏になる度に思い出す、

綿あめみたいな真っ白な雲、セミの鳴き声、河原の水の音、

二人で歩いた道、元気いっぱいな君の声、笑顔、真夏なのに心地良く感じた体温、

忘れた事なんて一度もない、

あの頃の僕らはまだ子どもで何の力もない無力でちっぽけな存在だった、

あの時はどうすることもできなかった、

それを認めざるを得なかった、

もし、もう一度会えたら、

もし、まだ君が僕と同じ気持ちだったら・・・その時は二度と手放さない"



河原で休んでから帰ろうとした時、橋の下から数人が怒鳴り合う声が聞こえた。

 

文太「喧嘩かな」

 

気付かれないように近づくと見覚えのある人の姿があった。

 

文太"やっぱり空君だ!見た目は変わってるけど間違いない"

 

「ここは俺らの縄張りなんだ、お前みたいな奴が来るんじゃねーよ」

空「うるせーな、俺の勝手だろ」

「何だとー!?」

 

空の頬には殴られた跡があった。どうやらこの二人のどちらかに殴られたらしい。

一人の男が空の胸ぐらを掴み上げていた。

 

「この!!」

もう片方の手で殴ろうとした瞬間、空は目をぎゅっと閉じた。

殴りそこねた腕は後ろから文太が掴んでいる。

 

文太「ダメだよ、空君に乱暴しちゃ」

空「え、ブンちゃん?・・・」

「いたたた!!な、何だこいつ、見た目の割に力めちゃくちゃ強ぇ!」

 

文太は掴んでいた手を離すと空君を庇うように立った。

 

文太「空君を傷付たら僕許さないから」

「こいつ!!」

 

隣にいた男が文太に殴りかかろうとする。

 

「お、おい、辞めとけって、思い出した、こいつ確か空手の大会で優勝した奴だ」

「え、まじかよ!?」

 

二人はすぐさま逃げていった。


 


空「あのブンちゃんがこんなに強くなってるとはな・・・見た目はあんま変わってないのに」

文太「へへへ、強くなったでしょ?」

 

文太は力こぶを見せてきた。

 

空「あのブンちゃんが空手やってるってだけでも驚いたのにまさか優勝までしてたとはな・・・」

文太「僕もビックリしたよ!空君が茶髪ピアスの不良になってたなんてさ!」

空「不良って・・・まぁ確かに側から見たら俺は不良か」

文太「はい、絆創膏、ほっぺ怪我してるよ」

 

文太は絆創膏を空の頬にぺっと貼った。

 

空「いて・・サンキュー、つかブンちゃん、絆創膏まだ持ってたのか」

文太「うん」

空「まさか今もまだ転ぶのか?」

文太「まさかぁ!もう転ぶことはさすがに無くなったけど昔の癖でついね、意外と便利だよ」

 


こうして文太と空は再会を果たした。

今までのわだかまりが嘘のように話は日が落ちるまで続いた。

あの頃と変わらない二人がそこにはいた。








第四話 届け!


秋になると文太の通う高校と空が通う高校の合同文化祭が開催される事となった。

空は出るつもりはなかったが、文太に指定された時間だけは絶対に体育館に来るようにと念を押されていた。


 

空が体育館に入るとヒソヒソと悪口が聞こえた。


「何でヤンキーまでいるんだよ」

「来んじゃねーよ」

「しっ、聞こえたら殺されるぞ!」

 


空"はー、まぁそりゃそうなるだろうな、まったく文化祭なんていつもみたいにサボろうと思ってたのに

ブンちゃんは何をそんなに俺に見て欲しいんだ?

内容は秘密だとは言ってたけど"

 

 



催し物が終わった直後。

 

文太「校長先生、僕、どうしてもこの場を借りて言いたいことがあるんです、教壇使ってもいいですか?」

真田先生「おい文太、何をするつもりなんだ?」

校長先生「まぁまぁ、真田先生、赤坂君、許可しよう、君の好きなように使いなさい」

文太「ありがとうございます!」


文太は教壇に上がると空がいる方に向かって手を振る。

空は遠慮がちに手を小さく振り返した。


急に出てきた文太に生徒達がざわざわし出す。

 

「何だなんだ?」

「こんなの予定になかったよな?」

「赤坂の奴、何をする気なんだ?」


文太"う、やっぱりこれだけの人達がいる中で告白するのは緊張するなぁ"

 

文太が緊張して声が出ずにいると・・・。

 

紺「ブンちゃーん!頑張れー!!」

奏多「俺らがついてるからなー!!」

 

唯一、事情を知る紺と奏多が文太に声援を送った。

 

空「!?あいつらまで・・何する気なんだ?」

文太「二人とも・・うん、頑張るよ僕」


 

文太は大きく息を吸った。

 

文太「空くーん!好きだー!!」

 

空「は!?え!?え!?」


 

「え、何、告白!?」

「とんでもねー告白の仕方だな!!」

「皆んなの前で言うなんて勇気ある〜!」

「でも、空君ってことは相手の人男?」

「やーん、文太君密かに狙ってたのにぃ!」


 

空「待て待て待て、ブンちゃん何やってんだよ!」

 

顔を真っ赤にした空は慌てて教壇まで上がり文太に抗議しようとした。


 

「え、あの不良が空君?」

「まじかよ」

 


文太「空君、好きだー!!」

空「わーかったら辞めろって!お前、何してんだよ」

 

しかし空の言葉はお構いなしに告白は続けられた。

 

文太「空君、僕は空君が好き、

ただそれだけなのに、君も僕も男だから認めてもらえない事の方が多い、

でも、僕はそれでも空君が大好きで大好きで仕方ないよ・・・」

空「お、おい、泣くなよ・・・」

 

空はため息をつくと文太の頭を優しく撫でた。


 

「えーあのヤンキー君、意外と優しい!!」

「ギャップやば!!てかよく見たらイケメンじゃない?」

 

「本当に大好きなんだねぇ・・・」

「なんかあの二人尊いわぁ・・・」


 

真田先生「文太・・・って校長なに泣いてるんですか!?」

校長先生「いーい話だなぁ、若さとは素晴らしいなぁ・・・」

真田先生「校長・・・」


空は文太の手を取り、走り出した。

 

「キャー!!!」


文太「え、ちょっと空君!?」

空「もう文化祭も終盤だろ?帰る」

文太「うん!!」

真田先生「あ!こら!文太、待ちなさーい!!まだ文化祭は終わってないだろ!これから片付けがあるんだぞ!」

文太「ごめんなさーい!」

 

その時、校長先生が首を左右に振りながら真田先生の肩に手を置いた。

ポンっ。

 

真田先生「こ、校長?」

校長先生「そんな細かいことはいいじゃないかぁ」

真田先生「校長、あなたいつまで泣いてるんですか」

奏多「俺らも行くぞ!」

紺「うん!」

真田先生「あ、こら二人まで!!・・・はぁ、仕方ない今回は多めに見るか」




 

文化祭終了後。

文太のクラスになぜか真田先生が腕組みしながら登場した。

 

「え、真田先生が手伝ってくれるんですか!?」

「まじかよ!!」

 

真田先生「文太と紺と奏多と、えーそれから空の代理だ」

ババン!!


「なぁ、真田先生強いし重いもの持たせようぜ」

「そうだな、きん◯くマンとかゴリラってあだ名付いてるくらいだしな」

「こら!聞こえるって・・・うわ!?」

 

真田先生「重いものが何だって?」

ドドン!!

 

「す、すみません!ちゃんと自分達でやります!」

 

真田先生「いや、見ての通り俺は力だけはある、重いものは任せておけ」

 

「え、いいんですか?」

「ありがとうございます!!」


 

なんだかんだ片付けに熱が入った真田先生であった。

そのあまりの白熱ぶりに引いている生徒もいたが

文化祭終了後、どうやら真田先生のファンクラブができたらしい。




 

校庭。

文太「二人とも応援してくれてありがとう」

紺「いいって事よ!」

奏多「上手くいって良かったな!」

紺「空君、久しぶりだな!なんだか随分派手になったなぁ」

空「ああ・・・」

奏多「元気だったか?俺らずっと心配してたんだぜ?」空「まぁ、だいぶ荒れてはいるけどな」

奏多「若い時はそんなもんだろ」

空「お前はなんつーか、じじ臭くなったな」

奏多「ん?そうか??」

紺「よっしゃー!久しぶりに4人揃った事だし夕飯にハンバーガー食いに行こうぜ!」

奏多「そうだな、それなら母さんに連絡しとくか」

 

奏多がポッケから携帯を取り出すと文太もカバンから携帯を取り出した。

 

文太「あ、僕もしとこ」

紺「君たちええ子やなぁ・・・」

奏多「そんな感動するほどのことか?」

 

文太「空君?」

空「俺は・・・俺と一緒にいたらお前らまで何言われるか分からないから辞め」

文太「空君も行くよね?」(キラキラ)

空「う・・わ、分かった行くよ」

 

空"あ、圧が凄い・・・"

 

紺&奏多「ニヤニヤ」

 

空「お前らニヤニヤすんな」



 


ハンバーガー屋。

紺「んーうまぁ!!」

奏多「うん、安くて美味い、最高だな」

空「久しぶりに食ったけど味変わってないな」

文太「やっぱここのお店が一番いいね!」


紺「で?空君は告白の返事はしたのか?」

空「ぶー!!」(飲み物吹き出した)

紺「うわ、汚ねぇな!」

空「ゲホゲホ!」

奏多「大丈夫か?」

文太「はい、ティッシュ」

空「サンキュー」

 

文太「ごめんねー、空君こんな見た目してるけどまだ心はピュアピュアだから」

空「誰がピュアだ!!」

奏多「その見た目でピュアなのか、それはキツイな」

空「奏多、お前、涼しい顔して結構言うな・・・」

紺「やだなぁ、ギャップ萌えってやつだよ」

空「ギャップって・・・」

 

文太「空君」

空「ん?」

文太「なんだか僕、今すっごく楽しいよ!またこうやって皆んなでハンバーガー食べれてさ」

 

ニカッと笑う文太の口にはハンバーガーのタレがついていた。

 

空「ああ、そうだな」

空は文太の口に付いてるタレをティッシュで拭った。

文太「わっ!?へへ!ありがとー!」

 

紺&奏多は目を見合わせる。

 

紺「よっし!腹も膨れたし河原で石投げっこしようぜ!」

空「石投げっこってお前らいくつだよ・・・」

紺「チッチッチ!空君、俺らにルールは不用だよ!」

奏多「俺も河原行きたい」

文太「うんうん!やろやろー!ね、空君!」

空「・・・ま、ブンちゃんが楽しそうだからいっか」





 

河原。

紺「よっし!行くべ!とりゃああ!」

 

ボチャン・・・。

 

文太「あはは、紺君下手過ぎ!」

奏多「次は俺がいこう」

 

パシャ・・・。

 

紺「なんだ奏多君も下手っぴだな!」

奏多「む、俺は紺より飛んだぞ」

文太「二人ともほぼ一緒だけどね」

紺「じゃあ今度はブンちゃん投げてみろよー!」

文太「オッケー!せや!!」

 

パシャパシャパシャ・・・。

 

紺「おぉ!ブンちゃん3回も跳ねた!すげーじゃん!」

文太「やったぁ!ねーねー、空君もやってみてよ!」

空「あ、ああ」

 

パシャパシャパシャパシャパシャパシャ・・・。

 

文太「うわ!空君すごーい!!向こう岸までいったよ!」

奏多「ほんと空は昔から石投げ上手いよな」

紺「ねーコツとかあるの?教えてよ!」

空「コツって言われてもなぁ・・・」


一通りはしゃいだ後に河原の坂に4人並んで寝転がった。



 

その後、昔と同じように二人並んで帰り道を歩く。

 

文太「あー楽しかったねぇ!ね!空君」

空「そうだな、さてと、あいつらも帰った事だしそろそろ教えてもらおうか?」

文太「?何の話?」

空「あの時の嘘泣きの理由だよ」

文太「・・・あーあ、皆んなの事は騙せてもやっぱり空は騙せなかったか〜」

空「いきなりあんな場所で告白して嘘泣きまでするなんて・・・無茶し過ぎ」

 

文太「だって、泣きながら告白したら同情心買えて

少なくとも半分くらいの人は僕らの味方になってもらえるかなって!空君も腹括るしかなくなるし、

あ、ほら、校長も泣いて喜んでたし!」

 

空「いや、喜んではなかったと思うぞ・・・

つか、お前やべー奴だな・・・(引き)、絶対敵に回したくないわ」

文太「へっへー、実は母さんが泣きながら父さんに告白してそのまま同棲まで持ち込んだって話聞いてさ〜」




 

一週間前。

文太「母さんがそんな事を・・・よし、こうなったら僕も人肌脱ぐよ!」

母親「頑張るのよ〜!母は応援してるわ!」

父親「そうだなぁ、もういっそのこと母さんみたいにドドーンっと泣きながら告白しちゃうとかな!」

母親「あら、それはいいわね!」


 

空「いや、どっちか止めろや」

文太「まぁ、てな感じ」

空「信じられねー、あの穏やかそうな母親が・・・」

文太「父さんがいない時に話の続き聞いたら

母さん、案の定嘘泣きしてたんだってさ」

空「はー・・・なんちゅー親子だ・・」

 

文太「あ!でも、母さんも僕も、好きって言うのは本当だよ?」

空「知ってるよ」

文太「本当に本当にだーいすきなんだか、わ!?」

 

ぎゅっ。

 

空「もう絶対離さない」

文太「うん、うん!僕ももう絶対離れないからね!」


 

お互いがお互いのことをずっと思い続けていた事を知り

もう二度と手を離さないと互いに決めた。

もう恐れない。周りに何て言われようと二人で生きていくって決めたんだ。







第五話 純粋


文太の部屋。

二人きりになった際に文太に押し倒された空。


空「おい、いきなり何すんだよ」

 

空"つか、ブンちゃん力つよ!!俺の方が背丈あってガタイもいいはずなのにびくともしねー・・・。

 

・・・。


文太が空の頬にキスをする。


空「ちょ、ブンちゃん!」

 

空は顔を真っ赤にしている。

 

文太"あれ、頬にキスしただけでこの反応するって事は・・・"

 

文太「空君ひょっとして初めて?」

空「そうだよ・・なに、お前は初めてじゃないわけ?」

文太「男の人とするのは初めてだよ?女の子とはあるけど」

空「卑怯だぞ!」

文太「それとこれは別でしょ」(けろっ)

空「やけに手慣れてるなとは思ったが・・」


空がグレている間に文太は強かになっていた。


文太「慣れてるって言っても・・・」

文太は指折り数え始めた。

空「数えなくていいから!」(かなりショック)

文太「空君、空君」

空「なに」

文太「続きしていい?大丈夫、いきなり突っ込んだりしないから」

空「ブンちゃん、もうちょっとオブラートに包めないんか

つか、何でナチュラルに俺が抱かれる側なの?納得いかねーんだけど」

文太「だって空君可愛いんだもん」

空「可愛いって言うな!」

文太「まぁ僕は空君とエッチできるならどっちでもいいんだけど、それなら空君がする?」

空「その方がいい」



 

15分後。

 

どうやらキスしてキャパオーバーになってしまったらしい。

 

文太「空君、やっぱり僕がするよ?」(可愛さに必死に耐えている)

 

文太"いっぱいいっぱいな空君可愛いけどこの状況は色々とつらい"

 

空「違う、違うんだ、こんなつもりじゃ・・・はぁ、

穴があったら入りたい」

文太「穴ならほら!あるじゃない」

 

文太は自分のお尻を指差す。

 

空「こら!辞めなさい!」

文太「僕は空君が嫌ならしないよ」

空「・・・嫌じゃない」

文太「!空君大好きー!」

文太は空に思い切り抱き付いた。

空「うわ!?犬かお前は!!」

文太「ワンワン!」


その後、犬化した文太にめちゃくちゃ愛されまくった空であった。







第六話 快眠

文太は空を家に招待した。

キッチン。

 

母親「まぁ!空君久しぶり!元気だった?」

空「え、はぁまぁ・・・」

母親「良かった!いけない、お菓子切らしてたんだった、私、ケーキ買ってくるわね!」

 

パタパタ。(出て行く音)

 

空「なぁ、いっつも思ってたんだけどブンちゃんのお袋ってほんとお前にそっくりだよな

なんか力抜けたわ・・・」

文太「え?そうかな?似てないと思うけどなぁ」

空「いーや似てる、

大体、こんな見た目の俺見てよくすんなり家に上げたよな、顔に殴られた跡まであるのにさ」

文太「見た目が変わっても空君は空君だよ!」

空「そうか?だいぶ変わったと思うけどな、

喧嘩ばっかしてるし」

文太「んーそれはそうかもしれないけど、ピュアピュアなとことか変わってないし」

空「またお前は!!」

 

文太「だって今までずっと"僕の為"に貞操守ってたんでしょ?ピュアじゃん」

空「ば!こんな場所でそんな話するなよ!」

文太「場所変わったらいいの?」

空「ぐ・・・お前はほんと変わったな、前はもっとこうおどおどちまちまして可愛かったのに」

文太「む、今の僕は可愛いくないの?」

空「もう可愛いって歳じゃねーだろ・・・」

文太「やだ!空君にはずっと可愛いって思って欲しい!」

空「なんちゅーわがままな・・・分かった分かった、可愛い可愛い」

文太「気持ちがこもってなーい!」

空「良いだろ言ったんだから!」

 

ぎゃーぎゃー。

 

ガタン!

 

文太&空「え!?」

 

扉越しにヒソヒソ声が聞こえる。

 

母親「ちょっとダメよあなた!」

父親「やば!」

 

ガチャ。

 

父親「いや、入るタイミングが分からなくてな、ははは」

母親「ごめんなさいねぇ」

 

文太「もう、帰って来たんならそう言ってよねー!」

父親「すまんすまん!仕事が早く終わって歩いてたら

買い物途中の母さんとばったり会ってな、一緒に帰って来たんだが・・それにしても」

 

父親はじっと空を見た。

 

空"まぁ、さすがに父親の方は・・・"

 

父親「いやー、空君、久しぶりだなぁ!随分イケメンになったなぁ!背も高くなって!うちの息子はなかなか背が伸びなくてな!」

文太「もう!いいでしょ僕の身長は!」

母親「まぁ、パパの背が小さいから遺伝よねぇ」

父親「ママ、それはないだろー・・・」(がっくし)

 

空「俺がここにいること、二人とも怒らないんですね」

母親「あら、どうして?文太のお友達なんだから怒る必要ないでしょう?」

空「いや、だって文太とあんなことがあって、しかも今はこんな見た目で荒れてて・・・」

 

父親「空君、僕とママはね、まだ"青く"若かった君達二人を守れなかった事ずっと後悔していたんだよ、

すまなかったね」

 

空「いえ、お二人は何も悪くないですよ」

 

父親「そう言ってもらえると助かるよ、

変わったように見えても意外とね、変わらないものなんだよ、

あの頃と同じ、心根の優しい子だ、

"少年"から青年へと立派に成長しているよ、

文太があんなに無邪気にはしゃぐところを久しぶりに見たよ、君が戻ってきてくれたおかげだね、ありがとう」

 

空「俺は別に礼を言われるようなことなんて・・・」

父親「意を決してここまで来てくれたんだろう?

とても勇気がいることだよ」

母親「そうよー、パパにも空君くらい男らしいところが欲しいわねぇ」

父親「ママ、今日はどうしてそんなに意地悪なんだい?パパは・・パパは悲しいよ」

母親「あらあら、そんな意地悪した覚えはないんだけど」

 

父親「それなら今夜はオオカミになっちゃうぞー!」

母親「きゃーやだー!」

 

文太「ちょっと二人とも、イチャつくなら場所変えてやってよね!」

空「なぁ、お前んちっていつもこんな感じ?」

文太「うん、割と」

 

空「うーん、まさにこの親にしてこの子ありって感じだな」(ぼそっ)

文太「空君、何か言ったー?」

空「何も」

 

空"緊張の糸が切れたのかこの日はよく眠れた"

最終話 僕らの未来

母親「これからは大変な事が沢山あると思うけど

私たちにできる事があるなら頼ってちょうだいね!」

父親「ああ!もう後悔はしないって決めたんだ!俺が二人の盾にでも何でもなろうじゃないか!」

母親「まぁパパ男らしいわ素敵!!」

父親「はっはっは!」

 

空「あ、ありがとうございます」(若干このテンションに慣れてきた)

文太「はいはい笑」

 

父親「まぁ何が言いたいかと言うとね、

変わらないと思っていたものが変わったり変わると思っていたものが変わらなかったりするんだ、

若ければ若いほどね、

そんな変化に戸惑うこともあると思うがそれでいいんだ、

そうやって少しずつ君達は大人になっていくんだよ」

 

文太「父さん、いつからそんな真面目キャラになったの」

父親「せっかく父さんがカッコ良く決めたのにぃ、ぶーぶー」

 

文太「まぁでも、変わったところはあるけど

今も昔もずーっと空君が好きって気持ちだけは確かに変わらないね!」

空「ば!親の前で言うなよな!恥ずかしいだろ!」

文太「いいじゃん、うちは親公認なんだから」

空「そういう問題じゃない!」

 

母親「うふふ」

父親「うんうん」



 

文太の部屋。

文太「空君、二人も言ってたことだけどこれから大変なことが沢山待ち受けてると思うんだ!

でもそれでもずっと僕と一緒にいてくれる?」

空「ああ、もちろん・・・?どうした?」

文太「あの頃は空君の方から大好きーって抱き付いてきたのになぁって思って」

空「何年前の話だよそれ・・・」

 

文太「あーあ、あの頃の可愛いかった空君はいずこへ・・・」

空「・・・ん?ちょっと待て、あの頃のって俺の事ずっと可愛いって思ってたって事か!?」

文太「あ、これ秘密なんだった」

空「あーもー!何なんだよお前!!」

 

ボフンっと布団に空は突っ伏した。

 

文太「クスクス、やっぱり可愛い」

空「可愛いって言うな」

文太「いいじゃん」

空「つか、お前は可愛いって言われて嫌じゃなかったのか?」

文太「んー、だって可愛いは愛情表現でしょ?」

空「ぐっ・・・はぁー、もうそう言う事にしといてくれ」

文太「はーい♪」


その後、めちゃくちゃ盛り上がったそうな。





 




番外編 三年後

中学二年の春。

 

空「え、ブンちゃん料理部入ったの?」

文太「うん」

空「何でまた料理部?」

文太「んー、だって一緒に暮らしたら空君に美味しいご飯いっぱい作ってあげたいから」

空「すげー当然みたいに同棲の話するじゃん」

文太「嫌?」

空「嫌ではないけどさ」

文太「じゃあいいじゃない」



高校を卒業したら、僕と空君は同じアパートを借りて生活したいと両親に話した。

両親はそれなら20歳になるまで空君と一緒に暮らさないかと僕らに提案をした。

アパートを契約するのにも結構なお金が必要になるから

1年間はうちで生活しながら二人でお金を貯めてみてはというものだった。

空君は最初は申し訳なさそうに断っていたけど、行く宛もなくフラフラされても困ると僕に一括された事が相当堪えたのか素直に承諾してくれた。


 

文太「空君、仕事何にしたの?」

空「鳶職」

文太「大変じゃない?」

空「まぁな、でも、俺が入ったとこ給料いいからさ

変に干渉されないから気も楽だし、

ブンちゃんは何にしたの?」

文太「パン屋だよ」

空「それであんな朝早かったのか、パン屋かー、なんかブンちゃんっぽいな」

文太「そう?作る方メインなんだけど結構楽しいよ!

パンのいい匂いするし従業員も優しい人ばかりだし」

空「ブンちゃんなら接客合いそうだけどな」

文太「え、だって愛想振りまくのって疲れるじゃん」(経験者語る)

空「・・・最近ブンちゃんのこと分かってきた気がするよ」

文太「そう??あ、紺君から電話だ、もしもし?今から?僕はいいけど」

空「紺から何だって?」

文太「今から4人で会えないかって」



 


喫茶店。

文太「そっか、奏多君、ついにフランスに行っちゃうんだね」

奏多「うん」

空「そうか、紺?どした、さっきから俯いて」

 

紺「さ」

空「さ?」

紺「ざみしい・・・・」

 

奏多「泣くなよ・・・別に永遠の別れじゃないんだから

3年したら戻ってくるって」

紺「だってだってだってー!」

空「寂しいのは分かるが応援してやろうぜってブンちゃんも泣いてんのかよ!」

文太「うう・・奏多君いなくなっちゃうなんて寂しい

よう・・・」

 

文太と紺は顔を合わせてわんわん泣き出してしまった。

 

空「あちゃー・・奏多、こりゃしばらく泣き止みそうにないな」

奏多「だな笑、でも離れることをこうやって寂しがってくれる友達がいるって幸せなことだね」

空「お前、実は中身40歳くらいのおっさんだろ」

奏多「失礼だな!空こそ例のピュアピュアは治ったのか?」

空「な!お前また!」

 

文太「ああ、それなら・・んぐ」

 

空は文太の口を急いで塞いだ。

 

空「ば!こいつらに変なこと言うな!」

 

奏多「ふーん、"変なこと"した訳だ」

紺「え、何なに、もしかして二人とも大人の階段登っちゃったの?」

空「や、め、ろ」

文太「あはは笑」  



 


三年後、奏多はフランスでできた彼女がと日本で一緒に暮らすことになった。

 

紺は半年前に高校の頃から付き合っていた一つ年上の先輩彼女と結婚した。

 

俺とブンちゃんはと言うと、二人で小さなパン屋を

開くことになった。

カフェスペースも数人しか座れないが作った。

俺は特にやりたいこともなく、ブンちゃんがやりたいようにやるのを見守っていられれば良かったが

ブンちゃんが二人でお店を出してみたいと言ってきた為、やってみる事にした。

オープン初日はなんと奏多が店を貸し切り、紺と紺の奥さん、奏多と奏多の彼女が来た。

 

文太&空「いらっしゃいませ〜!サマーベーカリーへようこそ!」


 

皆んなでパンや飲み物を飲みながら色々な話をした。

奏多「こうして見ると皆んな個性バラバラだな」

エマ(奏多の彼女)「ミンナチガッテタノシイ、ミンナオナジツマラナイ」

文太「あはは、エマさんいい事言いますね!」

空「ブンちゃん、口にジャム付いてる」

文太「ありがとー空君」

 

まほ(紺の奥さん)「話には聞いていたけれど仲良いのねぇ」

エマ「フタリアイシアッテル?」

文太「はい、愛し合ってますよ」

空「な・・・///」

 

奏多「エマ、いきなりそんなこと言ったら恥かしがるだろ」

エマ「ハズカシイ?ドウシテ?ワタシモカナタアイシテル」

奏多「エマ、皆んなの前ではよさないか」

エマ「アイシテル、イイタイトキニイワナイトコウカイスル」

 

エマさんは離れた場所に住む友人を戦争で亡くしていた。

 

奏多「エマ・・・うん、そうだね、俺もエマの事愛してるよ」

エマ「ワタシウレシイシアワセ!」

奏多「エマ」

エマ「ドウシタノ?」

 

奏多はエマの両手を握った。

 

エマ「カナタ?」

奏多「俺、今日ここでエマに言おうと思ってたことがあるんだ、

言うならブンちゃんと空が開いた店がいいってずっと思ってた、

エマ、俺と結婚して下さい!!」

エマ「カナタ、アリガトウ、ウレシイ、オネガイシマス!!」

奏多「待っててくれてありがとう」

エマ「ドウイシマシテ」

 

文太「わわわ!!二人ともおめでとうー!!」

空「味な真似しやがって!おめでとう!」

紺「おめでとう奏多君ー!!」

まほ「おめでとうございます!」

 

奏多「皆んなありがとう」

エマ「ミンナアリガトウ」




 

帰宅後。

文太「まほさんもエマさんもいい人だったね」

空「あの二人が選んだ相手だからな、不安はなかったよ」

文太「奏多君がいきなりプロポーズし始めた時はびっくりしたよ」

空「俺も驚いたよ」

文太「でも、嬉しいなぁ、僕らのお店があんな幸せな空間になったんだもん」

空「そうだな」

文太「4人とも好きな人と一緒にいられて良かった

幸せになれて良かった」

空「ああ、みんな違って楽しいだもんな」

文太「エマさんの名言、僕らには最高のプレゼントだね」

空「だな・・・」

 

"イイタイトキニイワナイトコウカイスル"

 

文太「空君どうしたの?」

空「ブンちゃん大好き!」

文太「え・・・」

 

いつも好きと言わない空がいきなり大好きと叫び驚いた文太は一瞬固まった。

 

しーん。

 

空「頼む、何か言ってくれ」

文太「ごめ、だって嬉しくて・・・」(泣)

 

空は泣いている文太をぎゅっと抱き締めた。

 

文太「えへへ、僕、幸せだなぁ」

空「俺も幸せだよ、ブンちゃんがいるから」


こうして4人の幸せな日常は続いていくのでした。

めでたしめでたし。


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青き日の少年 昼月キオリ @bluepiece221b

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