アン・ドゥ・マジック

赤月英世

開幕


 四歳の春。俺は奇跡に魅せられた。


 熱いスポットライトが当たる舞台上、みんながそこに注目する。トランポリンも何もない場所で、その人たちは高く跳ぶ。ふわりと降り立つ。花のように回って舞って、あるいは大木のように支えて踊って。お父さんや俺と同じ男とは思えない、それくらい美しいひとたちの世界。



『アレジメント』

 バレエを基盤に置いた演劇。その美しく、煌びやかな世界は、見目麗しい男の魔法士しか立つことが許されない、狭い世界だ。

 成り立ちは、辿るとこの魔法世界の神話にまで遡ることとなる。長いのでまた後ほど。

 演者は女役であるフィオーレと、男役であるアルベロに分かれ、舞台で役を生きる。世間では大変人気な娯楽の一つであり、チケットの抽選倍率は耳を塞ぎたくなるほど高い。


 たまたまチケットが当たった両親に連れられて、観に行ったのが全ての始まりだった。アレジメントになりたいと駄々をこね、必須教養であるバレエを習わせてもらって、早十数年。



 

 俺こと、エトワールは今。アレジメント専門学校『ガルテン』の入学式に向かっている。

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