【りょうトラ】料理はトライボロジーだった…???トライボロジストride(ライド)先生のトライボロジー科学とトライボロジー技術とトライボロジー料理

だみんちゃん

第一話:キュウリとトライボロジーの邂逅

「トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑、焼付きなどの現象を対象とする科学と技術です。

身近な例では車のエンジンや機械のギアなど、多くの機械部品が接触しながら動く装置です。その際、機械を円滑に、かつ少ない消費エネルギーで長期間壊れずに動かすために、新しい潤滑方法や要素材料の研究を行っています。」




名古屋の閑静な住宅街。

高級なタワーマンションの窓から漏れる青白い光が、夜の闇に浮かび上がっていた。


「ふむ、この摩擦係数の変化は興味深いな…」


ride博士は、パソコンの画面に映し出された複雑なグラフを眺めながら呟いた。

名古屋でトライボロジー(摩擦学)の研究に没頭する工学博士である。


研究室の壁には鉄道の路線図やアニメのポスターが所狭しと貼られ、

デスクの上には精密な摩擦測定器と並んで、鉄道模型やアニメのフィギュアで溢れ、独特の雰囲気を醸し出していた。


「よし、今日の実験データの整理はこれで終わりだ」


時計を見ると、すでに午後9時を回っていた。

ride博士は伸びをしながら立ち上がり、ふと自分の腹の虚しさに気づいた。


「そういえば、今日はまだ何も食べていなかったな…」


冷蔵庫を開けると、中にはビールと昨日買ったばかりのキュウリが数本、

そして納豆が数パック入っているだけだった。


「キュウリと納豆か…まあいいか」


ride博士は料理とは無縁の生活を送っていた。

研究に没頭するあまり、食事は大学の食堂か、コンビニの弁当で済ませることが多かった。

たまに自炊するときも、簡単なものばかり。


「キュウリは板ずりしてから食べるといいんだったな…」


昔、母親が教えてくれたことを思い出し、キュウリを手に取った。

まな板の上に置き、塩をパラパラとふりかける。


「こうやって…ゴロゴロと…」


ride博士は手のひらでキュウリを前後に転がし始めた。

キュウリの表面と塩粒、そしてまな板の間で起こる複雑な相互作用。

突然、彼の中で何かが閃いた。


「待てよ…これは!」


キュウリをコロコロと転がす手が止まった。


「これはトライボロジーじゃないか!」


博士の目が輝きだした。


「キュウリの表面の突起と塩粒による研磨作用…まな板との接触面における摩擦…これこそまさにトライボロジーの実践だ!」


トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑に関する科学と技術。

ride博士が人生を捧げてきた学問だった。

しかし、まさか自分の台所で、キュウリを板ずりするという日常的な行為の中にトライボロジーが存在していたとは。


「そうか…料理はトライボロジーなのか!」


ride博士は興奮して、再びキュウリを転がし始めた。

今度は研究者の目で観察する。キュウリの表面のイボが徐々になめらかになっていく様子、塩による脱水作用で変化する表面の状態、手のひらとキュウリの間の摩擦感覚。


「素晴らしい!これは三体接触系の典型例だ。キュウリ、塩、まな板の三者間の相互作用が、キュウリの表面性状を変化させている…」


博士はキッチンタイマーを取り出し、板ずりの時間による表面性状の変化を計測し始めた。30秒、1分、1分30秒…


「おや、1分を過ぎたあたりから表面の変化率が減少している。これは最適な板ずり時間が存在することを示唆しているな」


キュウリをコロコロ転がしながら、

ride博士の頭の中では次々と研究アイデアが浮かんでいた。


「キュウリの品種による表面硬度の違いと板ずり効率の関係性…塩の粒度と研磨効果…まな板の材質による摩擦係数の変化…」


気づけば、キッチンのカウンターには、メモ用紙に走り書きされた実験計画が山積みになっていた。


「これは…新しい研究分野になるかもしれない。『キュリナリー・トライボロジー』…いや、『ガストロ・トライボロジー』の方がいいか?」


ride博士は板ずりを終えたキュウリを水で洗い、包丁で切り始めた。


「切断面の形成過程も興味深いな…刃と食材の相互作用…」


包丁でキュウリを切る行為にも、トライボロジーの視点を見出す博士。

切り終えたキュウリを納豆と混ぜ、醤油をかけて一口食べた。


「うん、美味い!板ずりしたキュウリは確かに食感が良くなっている。これはトライボロジー効果だ!」


その夜、ride博士は久しぶりに料理の楽しさを感じていた。

それは同時に、自分の研究分野が日常生活のあらゆる場面に存在していることへの感動でもあった。


「明日は大根おろしのトライボロジーを研究してみよう…」


博士はノートに「りょうトラ計画」と大きく書き、その下に研究したい料理とトライボロジーの関係をリストアップし始めた。


「料理はトライボロジーだった…なんて今まで気づかなかったんだ」


窓の外では、名古屋の夜景が静かに輝いていた。

ride博士の新たな研究旅行、「りょうトラ!」の冒険が、今始まったばかりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【りょうトラ】料理はトライボロジーだった…???トライボロジストride(ライド)先生のトライボロジー科学とトライボロジー技術とトライボロジー料理 だみんちゃん @daminchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ