第11話
教室に入ると、いつも通りの風景が広がっていて、あいつもそこに溶け込んでいた。
席に向かう途中、あいつと目が合った。
お礼を言わなければと、気合を入れて話しかけようとしたのに・・・。
「おはよ、大丈夫?」
あっさりと先をこされてしまった。
「あっ、おはよう。大丈夫、大丈夫」
何だか先をこされて、調子がくるい気味。
必要以上にうろたえてしまう。
それに加えて、話しなれない男子との会話に内心はドキドキで、それでも平静を装って話を続ける。
「昨日はありがとう。運んでくれたんでしょ?」
「あ~ぁ、周りにいた奴らが突っ立って見てるから、仕方なく」
仕方なくって、失礼なっ!
思わずそう叫びそうになった。
でも、そんな突っ込みをする勇気は勿論なく、すぐに飲み込んでしまった。
「それにしても、重すぎ!しっかり練習してウェイト落としな」
またまた失礼な発言。
そんなに重くはないと思うけれど・・・。
真剣に悩む私を横目に、あいつはケラケラと笑い声を上げている。
「ふぅ~んだ、玉拾いなんかじゃ、体重減らないっつうの」
思わず飛び出した、ちっぽけな反撃。
このことがきっかけで、クラスの他の男子とはあまり話をしない私だけれど、あいつやあいつを取り巻く同じテニス部の友達とは結構話をすようになった。
あいつは何気に優しい、というか気が利く。
あいつと話していると、何故か笑っている私。
私にとってあいつは、他の男子とは少し違うような。
ちょっとだけ気になる存在。
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