第2話 おまけ
「お〜い、お袋いるか〜」
不用心にも鍵が掛かっていない玄関を勝手に開け家の中に足を踏み入れる。
物騒な世の中なんだから鍵くらいちゃんと掛けろと言ってるんだが、なかなか習慣付かない、困ったもんだ。
勝手知ったる実家の廊下を歩き台所のドアを開けた。
「おや?
「いや、近くで仕事があったんでついでにね、ちょっと仏壇に線香あげさして」
「ありゃ、明日は雨かね」
お袋が天井を見上げて呟く、失礼な物言いだ。
「ただの気まぐれだよ」
チーーーン
仏壇の前でおりんを弾く。飾ってある3枚の写真に目を向ける。
俺が今の仕事についた頃に死んだ親父が妙に爽やかな笑顔をしている、その横には爺さんと婆さんの写真。
写真の中の爺さんと親父はとても若々しく耳は長く尖っている。
「やっぱり、弓子のやつは隔世遺伝ってやつかね」
線香をあげて居間に行くとお袋がいた。
「お父さんに挨拶は済んだかい?」
「ああ」
お袋がポットから急須にお湯を入れると、俺の前に湯呑みを置く。
「
「二人ともすっげえ元気だよ、弓子なんてこの前いきなり弓道なんて始めちゃってさ」
「弓道?なんでまたそんなのを」
可愛い孫がいきなり弓なんぞやり始めりゃそうなる、今までそんなそぶりも無かったしな。
「なんか弓道部の顧問に天才って言われて、舞い上がってるわ」
「へぇ〜、そう言えばお父さんも射的が上手かったし、お養父んも狩が得意だって言ってたし、家系かね」
射的は違うんじゃないかと思ったが、的当てと言えば同じ部類か。
「いや、俺そういうの苦手なんだけど」
「あんたは小さい頃から本ばっか読んでて体育の成績悪かったからね」
親父は運動神経が良かったのか小学校の運動会では親のかけっこで6年連続で1位を取っていた、美男子だったし風のように速かったので他の母親や女子に大人気だったのを良く覚えている。
けど、最後はビルの工事現場から落ちてきた鉄骨に当たって死んでしまった、爺さんも崖から落ちて死んだと聞いてる、運は悪いのか?俺は大丈夫だよな?
「なぁ、親父と爺さんの耳が尖ってるのって…」
お袋がTVのリモコンをいじりながら口を開く。
「あぁ、お父さんにそのこと聞くと、なんか、え〜っとゲルマンだからドイツか、先祖がそっちの血を引いてるんだっていつも言ってたわ、私たちの結婚式でもアルヴさんってかっこいい外人さんも来たしね、ドイツの人は耳が尖ってる人多いのかね?」
「なるほど、ゲルマンにアールヴね」
「ん、なんかあったのかい」
俺が一人頷いてると、お袋が煎餅を齧りながら尋ねてくる。
まぁ、お袋も有子も細かいことは気にしないタイプだからな。
「いや別に、今度弓子が大きい大会に出るらしいんだ、時間がとれるようなら応援に来てやってよ」
「そりゃ凄いね、でも始めたばかりでもうそんな大きい大会に出れるのかい」
「俺も聞いたら、弓子のやつ、だって私天才だもんって言ってた、天狗になってるな、エルフのくせに…」
「ハハ、そりゃ弓子ちゃんらしいね、面白いじゃないか、是非行かせてもらうよ」
その全国大会で孫が1本も星 (ど真ん中)を外さないと言う、とんでもない成績で優勝するのだが、この時はまだ俺もお袋も知る由もなかった。
えっ、エルフの条件ですか? R884 @R884
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