室町時代で無双したい

秋葉原龍之助

第1話 ムロムソ

 私、尊奈琴そんなこと内沙ないさ御年おんとし十五歳の歴女だ。


 今日は修学旅行で京都に来ていた。そして、今は班での自由行動の時間。私と友達は血天井を見るために伏見城に来ていた。


 一緒に行動していたかえであおいは歴女ではないのだが、最近の「室町時代で無双します」というアニメにハマっていて室町・戦国時代のものや歴史にに興味があるそうだ。


「へぇー、これが血天井かぁ。アニメで聞いたことはあるけど、実際に見るとなんか不気味だね」


隣にいた楓が言う。


「まあ、諸説はいろいろとあるけど、武将が戦いで絶命したときの血痕が付いた床板を使ってるらしいからね」


私は解説を交えながら話した。


「というか、なんでそんなに平気なの?」


「え?知らん」


葵の問いに私は素で返す。決して葵のことが嫌いなわけではない。勘違いしないでくれ。


 伏見城の後は、別の城や寺に行き、室町時代の歴史について語り尽くした。


「いやー、今日でムロムソの理解度がめちゃくちゃ高まった気がする」


 学校が予約しているホテルに移動している間のバスで楓が呟く。


「むろむそ?なにそれ」


「室町時代で無双します、の略語だよ。ファンの間ではムロムソって呼ばれることが多いんだよ」


葵が私に解説をしてくれた。アニメはあまり見ないから、私にはさっぱりわからない。


「そういえば、そのムロムソ、ってどんな話なの?」


私は無意識に訊いた。


「え!?ムロムソに興味持ってくれたの?そういうことなら、私たちがしっかりと教えてあげる!」


楓と葵は声を合わせて言う。すごいシンクロだ。一言一句一緒だなんて、むしろ奇跡でしょ。あと、二人からの圧がすごい。


 そのとき、バスが停まった。私たちが降りる駅だった。私はホッとした。生まれて初めてバスに助けられたかもしれない。とはいえ、この二人は部屋も一緒だからほとんど意味はないけど…。


 私たちはバスを降りて、ホテルへ向かった。ホテルのロビーで待っていた先生への報告を終わらせてから自分たちの部屋に行く。


「それで、さっきの話の続きなんだけど…」


部屋に着くとすぐに楓が話を切り出した。さっきの話……バスの中でしたムロムソの話のことだろう。


「まず、ムロムソの舞台は室町時代でね────」


 二人の話は消灯時間の二十二時まで続いた。二人曰く、作者が室町時代が好きらしく、室町時代の時代についての設定が細かく作られているらしい。


 ムロムソ、意外といい作品かもしれない。


 次の日の朝。起きて早々、ムロムソの話になった。


「そういえばムロムソの最終巻見た?」


「もちろん!予約して、発売日の当日に見たよ」


楓の質問に葵が返す。


 私はそもそもムロムソを見ていないので話が一切わからない。なので、身支度を黙々とこなす。


 今日はクラスのみんなで八つ橋づくりをした後に、映画村に行くことになっていた。京都なんてめったに行くことはないから全力で楽しまなくては。

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