第4話我が日輪は只1つ!(キリッ!)

るい、誰だその小童は?

この屋敷では、見覚えの無い面だな?」

脳内で身元照会をしたのか、改めて類=生駒の方に問い質す信長。


その間にドタドタと、刀持ちの小姓2人と、護衛兼付き人らしき、ガッシリとしたオッサンが1人が入室し、そして部屋の外周部には、軽武装している警備兵達が、あっという間に配置されていった。


「はい、殿様。

この子は藤吉郎殿の弟兼家臣で、我が家に手伝い奉公アルバイトに来ている、小吉君ですわ。

ほら、小吉君・・・?」

おっとりとした口調で、小吉に挨拶を促す。


「あっはい、お初にお目に掛かります。

足軽組頭・木下藤吉郎が臣、木下小吉にごさいまする。

以後、どうぞお見知り置きを・・・。」

視線を下に向けて、ノッブを直視しない様気をつけつつ、正座状態から再び平伏する。


「ほう・・・ハゲ鼠の弟のう?

全然ハゲ鼠とは、似ておらんな?」

「はっ、正確には殿の義弟でして。

姉・・・じゃなかった、殿の奥方様が、私の実姉に当たりますので。」

信長の疑問に答えた。


「ふむ、そうか・・・で、類よ、わざわざこの又者を、儂に会わせた理由は何だ?」

「はい、この小吉君なんですが、スッゴい笛の名手なんですよ!

正直言って尾張随一では?と思うくらいは。」

興奮気味に信長に伝えて、


「笛もさることながら、話も奇想天外で面白いので、是非殿様の御伽おはなし衆(コメディアン)にどうかな、と思いまして。」

にこやか~に小吉を推薦する。


(いやええて類?姉さん!?ノッブルートは要らんからホンマに!?)

平伏しつつ、脳内でブンブン首を振る小吉。


「ほう、尾張一とは大きく出たな?

ふむう、では小吉とやら、試しになんぞ一曲、儂に披露してみせい。」

あっけらかんと小吉に要求するノッブ。


「とんでもない!畏れ多く存じ奉ります!

日頃から耳の肥えた大殿様に、披露出来る腕前では、とてもありません!」

平伏したまま、「面倒くせ~、パスパス」と、面倒事の回避に走る。


「・・・おい、琴では玄人はだしの腕前を持つ類が、手放しに褒めて推薦する程の者が、披露出来ぬ様な、未熟な筈が有るまいが?

グダグダ言わずに、サッサと披露せよ。」

ギロリと睨みながら催促する。


(うぇ!?類姉さんってプロ級だったの!?

うう・・・誤魔化しが利かねー)

驚愕の表情で、「ゴメンネ?」と笑顔で手を合わせる、生駒の方を見つめる。


「あ、そうそう殿様。

小吉君に適当に要望リクエストを、思い付くままに出してくださいませ。

要望に添った曲を奏でてくれますよ?」

おっとりと笑顔で、勝手にハードルを上げる類姉さん。


「ちょっ!?」

「はぁ?小童が他人の要望に応じて、即興で奏でれると申すか類!?

クククッ・・・ハッハッハ面白い!

では小童!先年の「田楽狭間」の戦を、見事奏でてみせい!!」

類の発言に呵々大笑すると、ビシッと扇子を小吉に向けて、要望を出した。


「え~と・・・。」

「やはり難しいか小童?」

「いえ、上手く耳に叶ったら、ご褒美とか頂戴出来るのかな~っと・・・。」

「は!?・・・ハッハッハッ!!こやつ、褒美を端から貰うつもりじゃぞ、可成よ!?」

脇息をバンバン叩いて笑い、脇に控える付き人=森可成に水を向ける。


「はぁ、何ともはや・・・。

豪胆と申しますか、命知らずと申しますか。」

「クックック、良かろう小童。

見事奏でてみせれば、貴様の主・藤吉郎と同じ給金分の、褒美をくれてやろうぞ。」

太っ腹な報奨を小吉に告げる信長。


「おお!有り難き幸せ!」

ラッキー儲け!と喜ぶ小吉。


(う~ん・・・ゲーム音楽のちゃんぽん組曲でいけるやろ。

序曲はやっぱ、「ノッブの野暮」から始めてっと・・・うん、これでいくか!)

脳内で曲の構成を組み立てていく。


「では早速・・・♪~~~♪~~~~♪」

迷いなく演奏を始めた。


小吉の構成では、出陣→「ノッブの野暮」の序曲、戦場までの行軍→「竜の冒険」の3部作のフィールド曲、戦闘→「最後の幻想」の6部作のボス曲から、各部作のボス曲のちゃんぽん、→ファンファーレという感じで組み立てており、神曲のオンパレードであった。


「~~~♪~~~~♪」

勇壮な行進曲っぽい曲調から始まり、命運を掛けた決意に満ちた曲調を経て、アップテンポな激しい曲調に変わっていく。


「~~~♪・・・ふぅ、以上にございます。」

最後にファンファーレを奏でて、フィニッシュを決めると、ぺこりと頭を下げる。


「あの、如何でしょうか?」

「「・・・・・・・・・。」」

恐る恐る様子を窺うと、ポカーンとした顔で、信長は扇子を取り落としており、森可成は唖然茫然とした表情で、刀持ちの小姓が手放した刀が、自分に寄りかかっているのにも、気づいていない様子だった。


「もしも~し?」

「スゴい演奏だったわ小吉君!

殿様も見事な演奏と、そう思いますよね?」

「はっ!?・・・ううん!まぁそうだな。」

類の呼びかけで再起動し、慌てて咳払いして、取り繕う信長。


「どうも~ご褒美ありがとうございます。」

大金をゲットした事に、「うっひょ~!30貫だやったぜ!」と、内心でガッツポーズを決める小吉。


「いやはや・・・あの一瞬の間で、即興の演奏をするとは・・・妙技であるな。」

感心しきりに、小吉を見つめる可成。


可成達周囲から観れば、聴いた事もない音色を、即興でよどみなく演奏する小吉は、天才の部類に見えるのであった。


小吉からすれば、前世のゲーム音楽をテキトーに、ちゃんぽんで演奏しているだけだが。


「ふむ、誠に見事じゃ小童。

良かろう、褒美を与える上に、類の申す通り御伽衆として、お主を召し抱える。」

パチパチと扇子を開閉しつつ、小吉に向かって仕官を認める旨を下す信長だったが、


「え?褒美は有り難く頂戴しますけど、仕官の件はお断り致しますが?」

軽く手を左右に振って、拒否をする小吉。


「・・・何ぃ?」

剣呑けんのんな表情を浮かべて、扇子を放り捨て、左手で小姓から刀を受け取ると、スラリと刀身を抜いて、スタスタと小吉に近付いていき、


「もう一度申してみよ小童・・・?

儂に仕えるのが、嫌だと申すか貴様!?」

ヒュンと刀を小吉の顔のすぐ横、肩に鋭く振り下ろし、身に当たる直前で寸止めした。


「はい、申し訳ありませんが嫌です。」

「!?貴様ぁ!・「天に日輪太陽が1つしか無い様に、我が日輪は木下藤吉郎只1人!」

怒りに任せて刀を振り上げ、怒声を上げる信長の言を遮り、臆する事無く指を一本天に向かって指しだし、


「又、主・藤吉郎の日輪も、大殿様只1人にございまする。

我が殿が大殿様に身命を賭して、忠義を尽くしているのと同じく、私も殿に身命を賭して、忠義を尽くす事をどうか、お許しくださいます様、お願い申し上げます。」

平伏して許しを乞う。


(癇癪持ちで、何時バッサリ殺られるか判らん上に、中堅クラスが精々のノッブより、高確率で、上位クラスに入れる秀吉の方が、断然良いに決まってんだろ!!)

言っている事と、思っている事の乖離が凄まじい、真っ黒クロスケな小吉。


「ぬ!?ぬう・・・。」

「私の気持ち、そちらの森様ならご理解頂けると、思っておりますが如何でしょうか?」

平伏しつつ、しれっと可成に水を向けて、しっかりと巻き込む小吉。


(フッフッフッフッ、森のオッサンもこう言われたら、否定が出来まい?

さぁ、森のオッサンよ、さっさとオレを弁護して、ノッブから助けんかい!)

表情を隠しつつ、どす黒い笑みを浮かべる。


小吉の問い掛けを否定すれば、信長に忠義心を持っていないと、本人の前で言っているのと同義になるので、絶対に否定出来ず、尚且つ弁護して小吉を助けないと、今度は周囲から「口先だけの忠義では?」と疑われるので、嫌でも助ける方向に向けさせる、結構ゲスい企みであった。


「殿!どうか某からも、其処な小吉の忠義心を、全うさせて頂きたく!

世に言う、「忠臣二君に仕えず」の心意気を、危難に遭っても曲げずにいるのは、誠に天晴れと存じまする!」

小吉のゲスな企みに気付かず、感動の面持ちで信長を諫め始めた。


「む、むぅ・・・確かに道理ではある。」

勢いが削がれた形で、刀を納めると、


「フフッ、お主の忠義に免じて許す。

これからもハゲ鼠に尽くすが良い。」

鷹の如く鋭かった眼光を緩め、柔らかく微笑んで座席に戻る。


意外にも信長さん、合理主義かつ実力主義であったが、例え無能でも勤勉な者や、敵味方問わず忠義に篤い者も、きちんと評価しており、小吉の様な尽くす者も好んでいた。


「いやしかし小吉よ。

人間追い詰められれば、本性が出ると謂うが、誠にお主は忠臣であるのだな。」

キラキラと綺麗な目で、小吉を褒める可成。


「いえいえ森様、私は「忠臣」なぞではありませんよ?」

「へ?じゃあ何なのだ?」

「森様と同じく「只の1臣」として、主に尽くしているだけです。

それに「忠臣が現れるは、亡国の兆し」と申しまして、縁起が悪うございますので。」

縁起でもないと、手を左右に振る。


「フッ・・・ワッハッハッハ!!

そうか!当たり前か!小吉、お主もワシと同じく、仕えるべき主に出会でおうたか!!」

嬉しそうにバシバシと、小吉の肩を叩く。


小吉の言動を好意的に捉えて、かなり好感度が上がっている模様。


(バシバシ痛いって・・・て!?嘘ぉ!?)

叩かれた肩をさすっていると、


「オ~ノ~ォ!?服が切れとるぅ~!?」

スパッと服の肩口が、切れているのを知って、素っ頓狂な声で絶叫する小吉。


「大丈夫?小吉君?」

「大丈夫じゃありませんよ!

ね、寧々、姉さんに怒られるぅ~!?

どうしよう!?どないにしょう!?」

ガチ説教を喰らうのを想像し、アタフタと混乱状態に陥る。


「小童貴様・・・儂に斬られるよりも、姉の方が怖いとは、どんな姉なのだ一体?

儂が刀を振り下ろしても、怯えもせず微動だにせんかったクセに、チグハグが過ぎる。」

小吉の動揺っぷりに、呆れ半分感心半分な表情を浮かべる信長。


「ううっ、刃物とかに関しては、全然恐怖心を感じないのですが、姉・奥方様は赤ん坊の時から、親以上に面倒を看てくれて、育ててくれたので、頭が上がらないんです・・・。」

肩を落として、ショボンと落ち込む。


小吉は実は前世の記憶と共に、精神的な影響も引き継いでおり、6回に渡ってバイクで交通事故に遭い、「アイキャンフライ」を2度程経験した結果、後天的に危険事態に対する、防衛本能=恐怖心がぶっ壊れてしまい、危機意識が無くなってしまう、精神的な疾患を患っていた。


そして寧々姉さんの方は、生まれた時から今まで、しっかりと「姉ちゃんパワー」でされており、きっちりとお互いの上下関係は、明白になっていた。


「謂わば奥方様と私の関係は、大殿様と大殿様の乳母様(池田恒興の母)との関係に、かなり近いっす。」

「お、おおう、そうか・・・小童、お主も大変じゃのう誠に・・・。」

途端に同情的になる、第六天魔王。


信長も乳母で継母でもある、養徳院ようとくいんには赤ん坊の頃からシバかれて、きっちりと教育を受けており、終生頭が上がらずに説教をされると、借りてきた猫の様に神妙になり、ペコペコ頭を下げて謝っていたのである。


「大丈夫よ小吉君、私が繕ってあげるから。

ねぇ、殿様?」

「ワシのせがれのお古でよければ、お主に進呈しようぞ。

殿、流石に大人気おとなげが・・・。」

生駒の方と可成が、見かねて助け舟を出し、2人でじと~っと、信長を見つめる。


「ううん!コホン・・・小童よ、褒美とは別に何ぞほれ、頼みを聞いてやるぞ?」

取り繕う様に咳払いし、視線を左右させて、小吉に問い掛けた。


「はぁ、では殿が早く帰って来る様に、大殿様の方から一言、言ってくれませんか?

いっつも帰宅が遅いので、不安に駆られる奥方様を、宥めるのに苦労していますので。」

心配性な寧々を宥めるのは、ウロウロと徘徊するグリズリー灰色熊の如く、扱いには細心の注意が必要なので、結構大変なのであった。


「うむ、任せておけ小童!

しっかりとハゲ鼠には言っておく故!」

ドンッと胸を叩いて請け負う信長。


こうして有らぬ方向の、謎の流れ矢を食らった藤吉郎は、ちょくちょく信長に帰宅を命じられる様になり、しれっと小吉は信長をパシっていたのであった。


               続く

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