無神論者のスーパーパワー
羽矢翼
無神論者のスーパーパワー
俺の父さんは俺の最も古い記憶からだと、かなり優秀な考古学者だった。しかし、父さんの元へと渡ったとあるオーパーツのせいで、父さんは気が狂いそのまま死んでしまった。
だから、俺はその時からオーパーツみたいなオカルト的なもの、嫌、スピリチュアル的なもの、なんなら神様も信じなくなった。
そんな無神論者な俺だけど、まさかエイリアンが地球を侵略しに来るとは思わなかった。読者の皆さんは俺の突然の言動に驚いていると思うが、この話は神様もなにも信じてない俺が、仲間と共にそのエイリアンを倒す話ということを頭に入れといてください。
俺が不本意に特別な力を手に入れたのは、エイリアンの侵略から逃れるために、母さんと一緒に引っ越しの準備をしていた時だった。
この力のせいで、俺の人生は余計な宿命を背負うことになる・・・・・・。
本当にまさかこんなことになるとは、思ってなかった。朝ニュースで「エイリアンが攻めてきた!!」と報道されていた時には「何言ってんだ? ついにテレビ局の人間頭沸いたか?」と思っていたが一応今日がエイプリルフールかどうか確認した。
カレンダーを見たが、エイプリルフールでもなかったし、今は午後だった。
でも良かったのは「いつからでもエイリアンから逃げられるように」と学校が3時間になったことだ。別に俺は大学を目指す気はなかったから、これは嬉しい誤算だった。
・・・・・・。先ほどの文章で嬉しい誤算だと言ったが、どんなに授業を短くなっても不良に放課後呼び出されるのは昭和でも、平成でも、令和でも、授業が3時間になろうとも、ましてやエイリアンが攻めてこようが、変わらないみたいだ。
「おい香。お前大分お坊ちゃまみたいだな。2万円くれよ」ニヤニヤしながら俺が逃げれないように、壁ドンという強◯をするバスケ部の半グレ。俺は顔には出さないが心の中でめんどくさいと思っていた。
「おい、早く2万くれよ」
「はい、どうぞ」
「・・・・・・」俺が余りにも早く財布から二万を渡したので、バスケ部不良とその金魚のフン二匹は拍子抜けした顔をした。
「それでゲーセンにでも行ったらイイよ」俺はそう言って、その場から去ろうとした。すると、「おい‼︎‼︎」と後ろから言われた。まだ何かあるようだった。
「お前、シャツと下着を脱げ」そう言われた俺は内心(早く帰りたい・・・・・・)と思っていた。しかし、ポーカーフェイスで表情は崩さなかった。
「オラ、早く脱げよ」そう言われたので、俺はしょうがなく、シャツを脱いで上半身裸になった。
すると、バスケ部不良は脅迫的な表情だったのに、あからさまに驚いた表情になった。
その理由は俺は夏でも長めのシャツと厚い上着を着ていたから分かりづらいが、自分で言うのもなんだが、かなり筋肉がある。多分目の前にいる運動部三人よりも多少筋肉がある。俺は生まれた時の元の体がいいのと多分四六時中無意識にダンベルを持っているからだろう。
その体を見た運動部は「ふ、ふんやっぱいいわ。2万ありがとうな」と言って、俺の元から去っていった。
「・・・・・・」
(おぉぉぉぉぉぉぉ!!! 筋トレしといてヨカったぁぁぁぁ!! うぇーん!コワかったよぉぉぉ!!!)←これは俺の心境なのだが、やっとこれで一安心だ。よし、帰ろうと思った時に、「キャ!!」と女の子の声がした。
振り返ると当たり前だが、女の子がいた。後、叫び声が一つだけだったので、見られたのは一人だけだと思ったのだが・・・・・・
四人いた。
しかも四人とも学校にやってきた留学生で男子からの支持が絶大だったので、ますます俺は終わっていた。
大人しめな感じのサブカル系眼鏡っ娘はエヴ。フランスからやってきた留学生だ。多分、叫び声を上げたのは彼女だろう。正直、かなりタイプである。
メスガキ系の胸が大きめな女子はネル。北欧から来たらしいのだが、白髪ではない。生物学的にありえない紫色の髪色をしている。俺の上半身を見てニヤニヤ笑っている。そこがちょっと鼻についたが、この場合は俺に落ち度があるので、なんとも言えない。
三人目のイギリスからきた留学生リロエンヌはなんだか不思議な反応をしていた。まるで何かに見惚れているような涙目の瞳で口元で手を覆っていた。それ以外は特に言うことなし。
四人目のロシアのティラベラはというと・・・・・・俺のことを凍りそうな目つきで見ていた。彼女の反応が一番傷つく。
「せ、先輩! 校舎裏で何をしているんですか?」留学生四天王の中で後輩であるエヴは顔を赤らませて言った。「違う! これは誤解なんだ!! 信じてくれぇぇぇ」と言わない限り誤解は解けないだろう。(言ってないけど)
「せんぱーい。そういう趣味があったんですね〜。大丈夫です。私たちは優しいから黙っといてあげま〜す」・・・はっ倒してパンチしてやろうか!! 男女平等を教えてやる!! ・・・ハッ、いけないいけない。どんな最低な奴でも殴ったらだめだ。しかも、この娘も俺の後輩なんだから優しく接しないと。
とにかく、四人の留学生は俺の上半身を見るだけ見て去っていった。
「・・・・・・俺なんかの裸を見せてしまってごめん」一人残された俺は心の底から彼女たちに謝罪した。
午前中には不良呼び出しと四人の留学生に裸見せてしまった事件が起きたが、今日俺はとあることをしなければいけない。
そう、引越しだ。もうあんなことが起きたんだ。荷造りして夜逃げしないと・・・・・・て、オイ! それが原因で引越すにしても決めるのが速すぎるわ!! この引越しは前々から母さんと計画していたものだ。東京は刻一刻とエイリアンが攻めてくるかもしれない。せめて、日本から遠く離れないといけない。俺たち母子はニューヨークの一等地一軒家に移り住むことにした。
俺は学校では友達があまりいないのだが、少し別れが寂しいやつがいた。それは一緒に帰路についている瑛人 阿久(えいと あく)だった。
「そうか、引越すんだな。今までありがとう。そして、応援してる」瑛人らしいあっさりした別れに俺はもうこいつに会えないんだと、ものすごく悲しくなった。
瑛人は超がつくほどの無口だ。だから教室では常に一人だった。無口で常に一人なのだから、罰ゲームで嘘告をされることになった。その嘘告をした相手がそれはもうイケメンにはぶりっ子で、それでいて男子に愛想を振り撒くっている時でもに性格の悪さを隠しきれてない女子だった。
そして、校舎裏に呼ばれて告白をするわけだが・・・・・・。
「瑛人くん・・・。ずっと前から貴方のことが好きでした!! 付き合ってください!」
「・・・・・・・・・・・・」
「? 瑛人くん? もう一度言うよ。付き合ってください!」
「・・・・・・・・・・・・」
「瑛人くん!! 私に告白されて緊張しているかもしれないけど、早く答えてよ!!」
「ごめんなさい。あまりタイプじゃないかな。僕の他に良い人がいると思うから、その人と付き合ったらいいよ」
俺はたまたまその現場を目撃していたが、この時、正直な話スカッとした。嘘告の女子は本当にどうでもいいが、ただ告白を断っただけなのに相手に恥をかかすとは。この事をきっかけに瑛人に興味を持つようになった。
最初こそ瑛人は俺が近寄ってくる事に、嫌な顔をしてたが、段々心を許すようになり一緒にカフェに行ったり、ラーメン食べに行ったり、公園でのんびり二人で散歩したりした。
そんな瑛人ともお別れ。しかし、お別れといっても引越すまで二ヶ月とまだ少し猶予があった。
「瑛人、前に瑛人の事を俺の家に招待したよな。」
「ん? あぁ、あったなそんな事」
「せっかくだからさ。今度瑛人の家に遊びに行っていいか?」すると、瑛人は急に立ち止まって、俺の顔を見た。
「なんでだ?」
「え? なんでって? 特に理由はないけど?」瑛人は少しだけ俯き、首を振った。
「あまり、うちの家族を人に見せたくない。」その言葉に俺は不安になった。
「何? 瑛人家族と何かあるの?」彼は「そんなことじゃない」と言った。
「家族との仲は好調だ。しかし、家族は正直言って世間に見せない方がいいほど、ダメ人間なんだ」俺は少し納得した。
「あ、なるほどね。ごめんね野暮な事聞いちゃって」
「別にいいよ。それにお前は育ちが良いから俺の親は見せたくない」
「いやいや、言うほど良くないよ。だって俺母子家庭だし」すると瑛人は珍しく畳みかけるように「いやそんなことないだろ。母子家庭でも、あんな豪邸住めるんだから十分育ち良いわ」と突っ込まれた。
そして分かれ道で瑛人と別れ、自分の家に向かった。「母子家庭でもあんな豪邸に住める」か・・・。その豪邸も二ヶ月後には売り払う。あの家には特に思い入れもなかったが、こうなってくると寂しいもんだ。
俺は気持ちを切り替え自分の家へ走るのだった。
そして、とある部屋の片付けをしている時に、俺は望まない形で「スーパーパワー(超能力)」を手に入れるのだった。
「父さんの書斎の片付け?」
「そう。貴方のお父さんの書斎は荷物が一番多いから、引越しの段階で一番最初に整理しておきたいの?香くん。手伝ってくれる?」
「ああ。もちろんいいよ」快諾して早速父さんの書斎に行ったが、本当に壊滅的に汚かった。まあ、父さんが死んでから、俺も母さんもお互い部屋に入ってないのも一因だろう。
「さあて、遺品整理しますか」
「コラ、香くん。そんなこと言わないの」
「え? でも事実じゃん」母さんは俺のちょっと意地悪な冗談にも笑ってくれた。
「ていうか、ここは俺一人がやるよ。母さんはスーパーに今日の夕食の具材買いに行ってきて」
「え?でも・・・」
「最寄りのスーパー。エイリアン侵略の影響かわかんないけど、閉まっちゃったじゃん。一番近くのスーパーから車でも1時間かかるから、母さんがスーパー。俺が父さんの書斎の整理。そしたら、すぐにやることが終わるよ」そういうと、母さんは微笑んで、「ありがとう。香くん」と言った。
1時間くらい経って、父さんの書斎は半分くらい片付いた。すると、いつから現れたのだろうか、メイド長の鈴鹿が俺に話しかけてきた。鈴鹿はメイドとしてかなり優秀で、長髪の黒ロングで、前髪が片目を隠れているほど長い。本当は身だしなみのために切るのが正解かもしれないが、俺はその長めの髪をかなり可愛いと思っていた。そういえば、留学生のエヴも片目が隠れていたな・・・・・・。俺の裸を見られなかったら、ワンチャンあったかもしれないな・・・・・・。
「ご主人様。いつもの下校時間で見かけないと思っていたら旦那様の書斎の整理をしていたのですね。気づけなくて申し訳ございません」深々と頭を下げてきたので、俺は慌てた。
「いやいや、それくらいで大袈裟な。これくらい自分でできるよ」そんな事を言っても、鈴鹿は全然納得してなさそうだった。
そんなメイド長にしてもお節介焼きな鈴鹿だが、他の執事やメイドがエイリアンの影響で実家に帰っていくなか、なぜか鈴鹿だけは俺ら親子が親に会うように進めても、頑なにこの家へ勤めてくれていた。勤めてくれている理由を聞いても鈴鹿は「この家が好きだからですよ」と微笑むだけだった。
鈴鹿は「後は私に任してください」と言っていたが、それはさすがに悪いので、「本当に大丈夫だよ。後は俺がやる」と言った。すると鈴鹿は「いえいえ、後は私がやりますからご主人様は休んでてください」と言った。だから、俺は「いや、だから俺がやるよ」と荷物に手をかけたが、すると鈴鹿は「ですから私がやります」と言って、俺が持ってた荷物を取ろうとした。
「いやだから大丈夫って言ってるだろ!」と思わず声を荒げてしまったが、すると鈴鹿はやっと「そうですか。ではお任せします。大変失礼しました」と何故だか知らないが頬を赤らめてモジモジしていた。
「あ・・・。ごめん」俺は声を荒あげたことを謝罪したが、鈴鹿は全く気にするそぶりを見せず、「いえ、全く気分を害してません。それでは、お願いしますね」と書斎を出て行った。
悪いことしちゃったな・・・。まあ、あの反応的にあんまり気にしてないみたいだな。いや、もしかして内心毒付いてるかも・・・。やっぱり意地張らずに一緒にやればよかったかな・・・。そんなことを考えながら作業をしていると、荷物の奥底に皮製のロック付きの箱があることに気づいた。
なんだか無性に好奇心が出て、箱を手に取った。箱のロックは南京錠だった。
「あ、南京錠がかかってる。なーんだ。開けられないじゃん。中身気になりはするけど、今見たいってわけじゃないし、まあ、いっか」
そういいながら、触っているとカチッと音がして、パカッと意図も簡単に開いてしまった。
「おっ、開いてるじゃん。ん? さっきロックされてたよな? 閉まってると思ってたのは、気のせいだったか」俺は中を見てみた。すると俺はハッとした。幼少期の頃、父親を狂わせたオーパーツだったのだ。
俺はそのオーパーツをマジマジと見た。そして、思わず吹き出してしまった。
「フフフ・・・。ハハハハハ!!いやいや、久しぶりに見てみたけど、どこのどの時代の代物かわからないけど、これ絶対偽物じゃん!だって、見た目が昔のものにしては新しすぎるもん!!」そのオーパーツは十何年ぶりに見てみたが、100年前にしては状態が良すぎるほど光沢があるし、色鮮やかだった。
ちょうど手に収まるくらいのサイズだったので、俺は手に持って再度オーパーツを観察してみた。例のオーパーツはRPGの勇者しかもてない盾みたいな外見だった。周りには金の装飾が張り巡らされていて、真ん中は赤い水晶(宝石?)がはまっていた。偽物とはいえ、何十年も父の書斎に埋まっていたとは思えないほど綺麗だった。ただ・・・・・・。
「こんなものに父さんは気が狂わされたのか・・・・・・」息子の俺が言ってはいけないかもしれないが、何とも馬鹿らしかった。幼少期の俺でも覚えているほど、あんなに優秀な考古学者だったのに、こんなものに精神やられるなんて。俺が父親の思い出に浸っていると、あることに気づいた。
「あれ、この赤い石、ボタンみたいだぞ?」そう、この赤い水晶みたいなものは、ボタンみたいに押せるみたいだ。俺は好奇心でそのボタンを押してみたいと思った。
「もしかしたらボタンを押したらこのオーパーツ開くんじゃないか? そして、中には高価なものが・・・! これは押すしかないでしょ!! ん〜、ポチッ!」俺はボタンを押した。すると・・・。
ガシャン!!オーパーツの中から鉤爪めが出てきて、俺の手に食い込んだ。当たり前だが俺の手には血が出た。
「イッ!?」さらに痛がる余裕もくれずにその鉤爪めから茨のようなものが血管のように俺の皮膚に入って、どんどん侵食していった。
「やばいやばいやばい!! ハナナプトラかよ!!」こうしている内にも茨のようなものは全身に広がっていった。俺は慌てて肌を擦ったが、全くの無駄だった。
そして、茨は完全に全身に広がってしまった。俺は急いで洗面台に向かって、鏡を見た。
茨で全身血管が浮き出ているように見えるだけじゃなく、肌がうっ血したように紫色になっているし、なぜか瞳が白目の部分は赤で黒目がラベンダーのような紫になっていた。
「これ、どうしよう・・・。もう元には戻らないのかな!?」俺はアタフタしていたが、「あ! もう一回ボタンを押せば戻るかも!!」そうして、俺はボタンをもう一回押した。すると、顔を含めて全ての箇所からエメラルド色の鉄板が体から出てきたか思うと、あっという間に鎧姿になった。
「いや、さらに重装備になっただけかい!!」本当にどうすればいいのかわからずに俺は呆然としていた。そして、こんな姿になったやりきれない思いで俺は思わず壁を叩いてしまった。「クソ!!」すると、叩いたところがオレンジ色の輪っかになった。その輪っかの中がこの家の外らしき景色を映していた。これ、ポータルってやつだ。
「いや、ポータルって!!俺そういうオカルト的なもの信じないし、むしろ嫌いだから!そんなもの俺に見せるなや!!」すると、廊下から誰かが来る音がした。
「香く〜ん? 帰ったわよ〜?」やばい! 母さんが帰ってきた!! この姿を見られるわけにはいかないから、どうにかしなきゃ!! そうだ! このポータルを潜って外に出よう。いや、ポータルじゃない!出口だ!! 新しく作った出口からでよう!
そして、俺はこの出口で慌てて外に出たのだった。
割とこの鎧姿に人々が戸惑うと思っていたが、なにかのコスプレをしていると思われているようだ。群衆は俺をチラチラと見るが、すぐにいつも通りに、通りを歩いていく。
しかしどうしたものか。これは本当に飛んだ災難だ。もしかしたら、一生このままなのかも・・・・・・。嫌々、諦めずに可能性を探すんだ。まだ何とかなるはずだろ。だって、さっきまでシカトしてた通行人が俺を見上げて凝視してくれてる。多分俺のことを応援しているのだろう。え? なんで、上を見上げてるんだ?
気づいた時には俺は六メートルくらい上に上がっていた。だから当然通行人は驚いた顔をしていたのだ。当たり前だ。
「いやちょっと待てよ!! 誰が宙にうけって言ったんだ! 下がれ! 下がれよ!」俺がそういうと、俺の体はペットボトルロケットのように青空へ舞った。
「ギャアアアアアア!!!」
「ウワァァァァァァァ!!」俺はかなりパニックになっていた。まじでこの勢いで空に上がっていったら、宇宙にまで行ってしまうのではないか。
「止まれ! 止まれ! 頼むから!」そういうと俺の体は止まってくれた。ホッとしたのもつかの間、俺は高層マンションくらい高く上がっていた。俺は高所恐怖症ではないが、ここまで高くて、しかも何の足場もないとさすがに体がすくんでいた。
「お、お願いだから急に落ちたりするなよ・・・・・・。」その俺の言動をフリだと思ったのか、急に体がカクンッとなった。
「ん?」
そして、そのまま落ちていった。
「アァァァァァァァァ!!」そのまま落ちていって、地面が近くなっていく。俺はその時死を覚悟した。
一方、その頃・・・。
「リロさん・・・・・・。いくら貴方がイケメン好きだからって、他の男に目移りするなんてないですよ。」4人の留学生の帰り道、常にニヤニヤ笑っているネルだが、リロエンヌ。略してリロが柊 香の筋肉を見て頰を赤らめていたことを顔を顰めて注意をしていた。
「ち、違うわ!! 確かに私は貴方達から『ちょろい』と言われていますが、そんなことはありません!!」慌てて訂正しているリロだったが、ネルは「信じられないな」と言う顔をしていた。
「いいですか? 私たちは未亡人なんです。よく、人間の未亡人が夫が亡くなった後に新しいパートナーを見つけてますが、あんなものは言語道断です。私たちはご主人様を失ってからというもの何千年、何万年もあの人のことを思い続けているんです。なのに・・・・・・。」
「そんなに攻めないであげてください。別に交際しているわけではないでしょ?」そう言ってエヴはリロのことを責め立てるネルを静止した。ネルは小さくため息をついて、「わかりましたよ」と言った。
「ふふふ、相変わらずネルは旦那様のことになると人が変わるわね。」そう言って、ティラベラは優しく微笑んだ。いつも、男子にはとんでもなく冷たい目つきで見てる彼女だが、何千年も一緒にいた彼女達には打ち解けて話をしている。
「でも、あの先輩の面影はなんだか、旦那様みたいな感じがしました。」エヴがそう呟くと、リロとティラベラが少しピクッと眉を動かした。それは異論を言われて憤っているわけではなく、この二人も少しそう思っていたのだ。しかし、ネルだけがそうとは思ってなかったようだった。
「え〜? そうですか〜? 私にはただの高校生に見えたんですけどね。」
「ふふ、私がふとそう思っただけです。気にしないでください。」
さっきから「千年」単位で話をしている読者には、「あれ? 作者書き間違えてるぞ?」と混乱していると思う。しかし、これが正しいのだ。実はヨーロッパ各国から留学してきた留学生というのは嘘で、彼女達は人間ではない。彼女達は一体何なのかというと・・・。
その時、全員の動きが止まった。そんなわけがない。そんなわけがないが、彼女達が心から安心できる魔力。それはまさに「ご主人様」の存在だった。
「「「「え!?」」」」あの時死んだはずご主人様の魔力が彼方の方向に漂っていた。4人は考える間もなく、その方向に走っていくのだった。
「ふー…なんとか死なずに済んだぞ」高層ビルの高さから落ちていった俺だったが、踏ん張ったら落ちるのがゆったりとなっていき、元の場所に戻れたのだった。
「ていうか本当にどうしたらいいんだよぉ・・・・・・。」こういう時どうしたらいいのかわからずに俺は呆然としていた。俺はもしかしたら本当にこのままかもしれない。頼むから夢であってほしいよ・・・・・・。ん? 夢? いやこれは「夢」じゃない!!夢という非現実的なものは信じないぞ!!これは夢じゃなくて現実なんだ!!
そう葛藤しながら大の高校生である俺が泣きそうになっていると、「旦那様!!」と時代にそぐわない声が聞こえてきた。
その声のする方へ振り向いてみると、放課後に俺の上半身裸を見た留学生四人が俺のことを涙目で見ていた。それでいて、頬は紅くなって、なぜだかよくわからないが、とても嬉しそうだった。まるで、しばらく会えてなかった人に会えたような顔だった。そして、なんと4人とも俺に抱きついてきた。
「☆2/$・(何を言ってるのか不明)・・・・・・まさかこんなことが起きるなんて・・・。こんなに嬉しいことはありません。」
「☆2/$・!旦那様会いたかったですぅ!!ああー!夢なら覚めないでぇぇぇ!!」
「まさかまた貴方に会えるなんて・・・。これは奇跡としか言いようがないですわ・・・。会えて嬉しいです・・・。」
「・・・・・・グス、グス。」セリフは上からエヴ、ネル、リロ、ティラベラだが、俺は全くもって状況が理解できなかった。急に変な姿になったかと思いきや、四人の超絶美人な留学生に「旦那様」と呼ばれて、泣きつかれちゃうのだから。
・・・・・・しかし四人の美女から抱きつかれるのは良い気分だな。やっぱり女の子は筋肉が好きみたいだな。本当に昔から筋トレやってて、良かったー! 努力は裏切らないって本当だな。あの時裸を見られた時は人生詰んだと思ったが、まさにそれがよい方向へ向かうとは。
「☆2/$・。キス。キスしてください」いきなりエヴがそう言って、唇を差し出してきた。すると、他の三人も「あ! ずるいですよ! ☆2/$・! 私にしてくれますよね!」「私にしてください!」「私も!」と唇を突き出した。
これは・・・・・・。もしや俺にモテ期が到来したかもな。でも、ごめんよ。ヨーロッパとは違って、日本は一夫一妻だから一人しか選べないんだ。だから俺は選ぶとするならエヴちゃんかな?
「あ、でも☆2/$・はアーマーモードですから、キスできませんよね?解除してください。」
「え?いや解除の仕方がわからなくて・・・・・・。」
「えー? やり方忘れちゃったんですかー? 普通に赤いボタンを押せば元に戻りますよ」
「え?あ、そうなんだ」俺は言われた通りにボタンを押した。すると、元の姿に戻れた。エメラルド色の鎧も消えたし、赤い茨が食い込んだ姿にもなっていない。
「戻れた! いやー、良かった良かっ・・・。」俺はふと四人の方を見たが、恐ろしい顔をしていた。四人とも軽蔑の眼差しで俺を見ていた。どうやら、俺は四人のいう旦那様ではなかったようだ。
「・・・・・・なんで貴方が旦那様の所有物を使えてるんですか?」
「え、いや、俺もよくわからない・・・・・・。」
「とにかく!! それは普通の人が使ってはいけない代物です!! こっちへ返してください。」
「はい・・・。わかりました」俺は承諾して、このオーパーツをネルの方へ渡そうとした。女の子に叱られたのは心に効いたが、これで面倒ごとに巻き込まれずに済む。そう思ったが・・・。
「バチッ!!」オーパーツから黄色い閃光のような火花が散った。本当にありえないことだが、ネルの方へ行くのを拒んでいるようだった。
「まさか・・・・・・。このフェアリーハートがこの男を宿主だと認識してる?」このオーパーツって「フェアリーハート」っていうんだ。ていうか、これを俺持っとかないといけないの? 冗談じゃない! こんなトラブルの元俺持っておきたくないよ!!
俺がそう絶望していると、四人は集まって何かを決めようとしているようだった。
「とりあえず、カフェでお話ししましょう。」ネルにそう言われて、俺はカフェに連れていかれることになった。今日は本当にいろんなことが起きすぎだと思う。
「貴方が持っているそれはフェアリーハートと言います。なぜ、ハートというのかというと、よく見たらそれ、心臓のような形をしてるでしょ? だからそう呼んでいます。」コーヒーカップに角砂糖を入れ、かき混ぜながらネルはこのオーパーツの説明をしていた。
「これは、いったいなんなんだ?どういう仕組みで動いてるんだ?」俺がそう問うと、ネルはにわかに信じがたいことを言った。
「このフェアリーハートはその当時存在していた妖精の力を最大限にまで濃縮した魔法兵器です。かなり強い魔力で作られているので、これに耐えうる人はごく僅かだし、フェアリーハートは主人を自分の意思で選びます。そして、私たちはこのフェアリーハートに選ばれた人間、または人外を管理するために生まれた『妖精』なのです。」あまりにも、頭がついていけないし、本当に信じられない。だから、信じないことにした。
「いやー、設定は斬新だけど、面白さでいうと⭐︎3かな、後、宗教勧誘ならお断りだからね。」
「・・・。はい?」
「君たち俺を信者にしたいんでしょ? だけど、無理だよ。なぜなら俺は神様を信じてないから。あ、でも君の宗教でいうと、『精霊』なんだったっけ? でも、俺はそれも信じてないんだよね。」
「・・・・・・。貴方自分の立場わかってます?」
「だって信じられないでしょそんなこと。正直信じろって方が無理あるよ。」
「じゃあ、貴方意図的ではないしても、フェアリーハートを使っていたじゃないですか! それはどう説明するんですか!?」
「嫌、だから凄い技術だなと思うよ。だからさ、悪いことは言わないから、宗教なんかじゃなく、この技術力で日本のIT業界を支えてあげな。まだ俺たち若人なんだからさ、宗教なんかやめた方がいいぜ。宗教は碌なもんじゃ・・・・・・」俺は我ながら良い事を言ってたのに、いきなりティラベラが頭に血管を浮かべながら俺の首根っこを掴んできた。あの華奢な腕に掴まれてるとは思えないほど、とてつもなく力が強い。
「次ゴタゴタ言ったら、貴方の首を片手で引きちぎりますからね。」勘違いしないでもらいたいが、ティラベラは男子には塩対応なことが多いが、決してこんなことを言う女子ではないのだ。よほど、自分たちの宗教をバカにされたことが気に食わなかったみたいだ。でも、俺は間違ったことは言ってない。こんなふうにこの世の中は正しいことをいう人が痛い目に会う社会なのです。
「ア、ガッ!アア・・・・・・。」
「辞めなさいティラベラ!! そんなことはどんな理由があろうとも絶対にしてはいけません!!」ネルがそういい、ティラベラは手を離した。俺は大きく咳き込み、自分の座席に大きくもたれかかった。
留学生四人組は席を立ち、俺のことを見下ろした。多分俺が本気を出したら勝てると思う(そんなことはしないけど)が、こうも暴力を振るわれたら、恐怖しか感じなかった。
「支払いは私たちがするので安心してください。だけど、これだけは約束してください。」俺は小さく萎縮しながら返答した。
「な、何?」
「先輩はそういう非科学的なものを信じないのはわかりました。しかし、それをわかった上で、このフェアリーハートの力は本物です。嘘でもいいので、それは信じてください。」
「あ、わ、わかった。」
「あと、そのフェアリーハートは先輩をご主人様だと認識しているみたいです。だから、一旦先輩に預けます。ただし絶対に・・・・・・。」ネルは一瞬だけ目を瞑り、俺に釘を刺すように忠告した。
「絶対に悪用しないでくださいね。悪用なんかしたら、旦那様の名誉のために。」
「貴方を殺します。」そんなことを言われて、俺は震え上がった。とりあえず、今日は引き上げると四人はカフェから出て行った。
「女ヤクザじゃん・・・・・・。」俺はそう呟き、逃げるように家に帰った。
昨日はそのまま家に帰った。母さんが心配していたが、「気分転換に散歩に行っていた。」と言ったら、納得してくれた。
とにかく、昨日のことはあまり気にしないことにした。これで、クヨクヨしていたらもったいないからだ。だからと言ってすぐに忘れられるわけがない。俺は少し俯きながら投稿するのだった。
1時間目、2時間目、3時間目とあっという間に下校時間になった。俺は帰ろうとすると、後ろから「ちょっと待ってください!!」と声をかけられた。
後ろを振り返るとこの学校のマドンナ白川さくらだった。
「お、どうした? あなたが話しかけてくるなんて珍しいね。」俺はこの人を前にすると、あまりに緊張しすぎて、「あなた」呼びになってしまう。本当に最初に会った時、あまりの美しさに気絶しそうになったくらいだ。
大袈裟に思うかもしれないが、それくらい白川さんは美人なのである。
「あの・・・・・・。瑛人阿久くんの親友さんだよね? えーと・・・・・・瑛人くんに会わせてくれないかな?」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・・・・。それは・・・その・・・」白川さんは頬を赤らめて、内股の足をさらに内股にしてモジモジした。それを見た俺はピンとした。
「もしかして、瑛人のこと好きなの?」俺がそういうと、白川さんはめちゃくちゃ慌てて、「そ、そ、そんなんじゃない!! そんなんじゃないよ!!」と必死に否定した。
「まあ、白川さんは優しいし、瑛人に会わせてあげるよ。」そう言って俺は白川さんと一緒に廊下を歩いた。
「まあ、白川さんの気持ちはわかるよ。親友の俺が言っちゃダメかもしれないけど、瑛人は友達が多い方じゃないよ。だけど、その一方で白川さんはクラスのマドンナで男子にモテモテ。気持ちを伝えるのは勇気がいるよね。」
「・・・・・・。だから、そんなんじゃないってば。」
「でも、人を好きになる気持ちは素晴らしいよ。相手がどんな人であろうとも、気持ちを伝えるべきだよ。後、一緒にいるからわかるけど、瑛人は普通の人にはない魅力を持っているから、沼るよ。」
「・・・・・・。」白川さんは少し頬を赤らめていた。学校でかなり異性とも同性とも仲が良いクラスのマドンナが恥じらう姿を見て、俺は「瑛人ォォォォォ!! やっぱりお前は凄い奴だと思ってたぜー!! 幸せになれよォォォォォ!!」と歓喜していた。
「とりあえず、瑛人に会わせるよ。」
俺たちは歩き始めた。白川さんはきっと心の中はウキウキだろう。俺もウキウキだ。
すると、廊下の向こう側に瑛人がいた。声をかけようとした時に俺はあることに気づいた。
昨日、俺にカツアゲしたバスケ部3人組と瑛人に嘘告した女子が瑛人と一緒にいた。そして、不敬すぎることにバスケ部の不良リーダーは瑛人に肩を回していた。俺はバスケ部の不良リーダーが何を言っているか、わかった。
「お前〇〇のことフッたらしいじゃん。〇〇めちゃくちゃ傷ついているからさ。路地裏で『お話し』しようぜ」多分こういうことを言っているのだろう。そして、瑛人はそのまま不良共と階段を降りていった。
俺はそれを見た時、とてつもなく頭に血が登った。こいつ、親友である瑛人になんてことするんだ。喧嘩なんかしたことないけど、全員とっちめてやる。
俺はそのまま全速力で走ろうとした。そしたら、「待って! 確かに怒る気持ちもわかるけど、勝てるの!?」と言ってきた。
俺は即座に「友達がやられてるんだ!! 勝てるかどうかじゃなく、やるしかねえんだ!!」と言って、全速力で走った。白川さんは慌ててついて行った。
俺は校庭につき、瑛人はどこに行ったのか、考えを張りめぐした。そうだ!昨日俺がカツアゲされた校舎裏に違いない!俺は速攻、校舎裏にたどり着いた。そして、校舎裏に入ろうとした途端に「ちょっと待って!!」と白川さんに止められた。
「なに!? 今それどころじゃないんだけど!!」一刻も速く瑛人を助けたい俺は思わず怒鳴ってしまった。
「さっきは瑛人くんのことを好きじゃないって言ったけど、本当は好きなの・・・・・・。柊くんの言うとおり、自分の心に正直になろうとしなかった。だけど、やっぱり瑛人くんのことが好き!! だから!!」
「お願い!! あの人たちをやっつけて!!」白川さんは目を見開いて言った。
「よし、了解した!! 任せろ!!」俺はそう言って、全身に力を入れて、体が大きく見えるようにして、路地裏に入って行った。
「ちょっと待てお前ら!! 俺のダチトモに手を出して、タダで済むと思っているのか!! 覚悟しろよ! 3週間は病院に入ると思うん・・・だ・・・な・・・。」俺は意気込んで、校舎裏に入ったが、そこで、信じられない光景を見た。
そこには、瑛人が不良をボコボコにしていたのだ。3人共鼻から血を出して、あのぶりっ子はへたり込んで、震えていた。しかし、そんなことよりも、俺が衝撃を受けたのは、瑛人の体だった。全身に刺青が入っていたのだ。普通の刺青は少し紫がかっているが、瑛人の刺青は真っ黒だった。どうやら特殊なインクを使っているようだった。そして、刺青の模様も変わっていて、かなり複雑だがちゃんと法則性がある。まるで、悪魔を召喚する時に使う魔法陣のようだった。
瑛人はまだこちらに気づいてないみたいだ。ボコボコにした男子とはまた別に震えているぶりっ子に話しかけた。
「おい。」
「は、はい!!」瑛人はピクリとも笑わずにその娘に「今回のことは許してあげるから、二度とするなよ」と吐き捨てた。
そして、校舎裏から出ようとすると、当たり前だが、俺と白川さんに会ってしまった。
瑛人はいつもの冷静な感じではなく、明らかに動揺していた。
「え? 香? なんでいるんだよ?」本当にお互いタイミングが悪かったと思っているのだろう。瑛人は動揺していた顔つきからバツの悪そうな表情をした。
そして、そのまま俺に話しかけもせず、俺の横を通り過ぎて行った。
「待ってくれ!! 瑛人! どういうことなんだよ!!」俺は瑛人を呼び止めたが、瑛人はなんの反応もしなかった。ただ、一瞬だけ悲しそうな顔をした。
瑛人は去って行った。俺はいつまでも瑛人の背中を眺めていた。
白川さんは瑛人の刺青を見て、余りのショックに手に口を当てて、泣きかけていた。それに、俺も泣きたかった。
「え、瑛人!!」怪しげなお店に俺は乗り込んだ。そこにいたのは、花魁の格好をしている瑛人。着物が少しだけ剥がれ、例の刺青が少し見える。
「ん〜? なに〜? (瑛人です)」
「お、俺ともう一度友達になってくれ!!」俺の提案を冷笑する瑛人。
「いやぁね〜。友達なんて、あんたの他に星の数ほど居んのよ。だから・・・・・・」キセル、プハァー。煙モクモク。
「あんたは用済みってわけ」俺はそれを言われ、目の前が真っ暗になる。ああ、そんな・・・。ああ、そんな・・・。そんな・・・。そんな・・・。そんな・・・。(エコー)
「・・・ウワァァァァァァ!!!!」俺はベッドから飛び起きた。部屋にはクーラーをガンガン効かせていたのにも関わらず、俺は汗がダラダラだった。
「俺はなんて夢を!」俺は天井を見た。真っ暗でまるでブラックホールのようだった。今日の昼のことが、今でも鮮明に蘇ってくる。瑛人がヤンキー又はヤクザだったなんて、考えたくもない。俺は枕に顔を押し付けた。
その日は寝ようとしたが、結局一睡もできなかった。
俺はプライドがない。だから人から酷いことを言われても、「ふ〜ん」程度だが、そんな俺でも人並みに傷つくんだと初めて知った。
留学生女ヤクザ4人に詰められるのと、親友がその筋の人だった。あ〜あ、俺ってついてねーな。そう思いながら小石を蹴った。
こんなに心傷してるのに、意外と普通に授業を受けれた。ただ、心が虚しかった。この虚しさを埋めるにはどうしたらいいのか、俺はわからなかった。
三時間目の授業が終わり、下校時間になった。俺は帰ろうと思って廊下に出たら、瑛人と鉢合わせた。瑛人は俺の方を見たが、すぐに自分を横切って行った。
俺は思わず目を逸らしてしまった。そして、瑛人が横切った後に俺も歩き始めた。
俺は瑛人のことを忘れようとして、俯きながら早歩きをした。しかし、忘れようとしたが、さっきの瑛人の顔が脳裏に焼きついて離れなかった。一見いつもの瑛人のようだったが、なんだか自分が孤独なことに僻んでそうな表情。
ふと、俺は立ち止まる。本当に瑛人とはこれで終わりでいいのか?俺は昨日から、瑛人のことをなんも知らないくせに決めつけて、瑛人と距離をとっている。本当にそれでいいのか?そんなことを考えている内に俺はいつの間にか瑛人の方へ引き返して走っていた。
「あ、廊下は走りませんよ。」
「あ、ごめんなさーい。」女性教師に注意されて、俺は歩いた。しかし、直ぐに走り出した。
「瑛人!!」俺が後ろから声をかけると、瑛人はピタッと歩みを止めて振り返った。
「・・・何?」
「瑛人!! お前はなんなのか、ちゃんと説明してくれ!! 俺はお前がなんであろうと、友達なのは変わらないから!!」
「・・・昨日の刺青を見てわからないか?僕はただの学生じゃないんだ。近づいてはいけない人なんだよ?」そう言って、瑛人はきびすを返して、歩き始めた。俺はどうにか引き止めたくて、なんとか頭の中を整理しながら話し始めた。
「瑛人! 俺たちはお互いの性格を理解している!」
「・・・・・・。」
「その上でわかる! 俺たちは友達がいなくても、生きていけるような性格だ!」
「・・・・・・。」
「なのに俺たちは親友だ! それはなんでだと思う!」それを聞いた瑛人は立ち止まった。
「その理由はきっと、俺たちは親友になることが最初から決まっているような感じだったんだ! 馬が合うというか! 一緒にいて楽しいというか! きっと、ええと、そうだな・・・・・・。そう、これはきっと!」俺は瑛人に俺の思いが届いて欲しくて、とにかく必死に叫んだ。
「運命だったんだよ!!」あまりにも合理的な性格の俺から出たとは思えない言葉が口から発せられた。だけど、これはきっと本心なのだろう。すると、瑛人が振り返った。そして、瑛人はなんと涙を流していた。
「本当に僕のことを話しても、僕と友達でいてくれるか?」
「ああ、約束する。」俺は力強く頷いた。もう瑛人は悲しそうな顔をしてなかった。
「僕はとある家系に生まれた。その家系っていうのが、悪魔教の家系で僕は小さい頃にこの刺青を入れられ、過酷なトレーニングによって、一般人と殺りあったら簡単に殺せるくらいの力を手に入れたんだ。」想像してたよりも残酷な境遇に俺は絶句した。だけど、俺は話してくれてくれた方が嬉しかった。
「・・・・・・わかった。話してくれてありがとう。想像していたよりもかなりエグかったけど、俺は変わらずお前と過ごすぜ」俺はにこやかに笑った。それを見た瑛人は少し微笑んで「ありがとう。」と言った。自分の境遇を受け入れてくれて安心しているようだった。
「瑛人くん!」俺たちが和解した時に女の子の声がした。その声の方を見ると、白川さんが半泣きの状態で瑛人の方に歩み寄っていた。
「私・・・。瑛人くんが不良でも好き! 私瑛人くんに見合う女になるから! どうか・・・私と付き合ってください!」と言って瑛人に抱きついた。
「ちょ、ちょっと白川さん? どうしたんだよ?」瑛人はかなり戸惑っているようだった。俺はニヤニヤしながら「良かったな瑛人!」と瑛人のことをからかった。
「な、なあ香! これ、どういうことだよ?」
「わかんないのか? 白川さんは瑛人のことが好きなんだよ」
「いや、そんなわけないだろ。僕みたいな人にこんな綺麗な人が僕のことを好きなわけない。」
焦ってる瑛人を見て、俺は腹をかかえて笑った。とにかく、仲直りできてよかった。
俺はその日家に帰って、自分の部屋でフェアリーハートを使い、ネルが言っていた「アーマーモード」とやらになっていた。
何をしているのかというと的当てだ。この鎧姿は手が弓矢のような形状に変化して、弓を放つことができる。この時に手のひらも巻き込まれているはずだが、なぜか痛くない。
そして、弓はビュンという音を出して的(空き缶)を貫いた。しかも、ただ出ているだけじゃなく、光線のような光を纏って的を跡形もなく消し去った。それを見て俺はこう思った。
「・・・これ、エイリアン倒せるかも・・・」
俺は早速ネルに話しかけて、自分の考えを話した。
「・・・・・・貴方、そう簡単に旦那様の力を使っていいと思うんですか?」当たり前だが、そう言われた。ネルにはまだ少ししか話してないのに、もうキレ気味である。
「でも悪用はしてないでしょ?あと、エイリアンを倒せたら、絶対に力を使わないから」ネルは深くため息をついた。
「そもそも、貴方みたいな人が宇宙の軍隊に勝てるわけがないでしょ」
・・・・・・ムカつくけどその通りだから言い返せない。やっぱりエイリアンを倒すのは無理な話なのかな。そう思ってるとネルが口を開いた。
「戦うつもりならフェアリーハートを使いこなしてください。トレーニングするなら絶対に第三者に見られないようにしてください」
「あ!? 結局良いの!? ダメな流れだと思ってたのに!!」
「いちいち大きい声を出さないでください。私が許可をしたのはこのフェアリーハートで、エイリアンに勝てる確証があると思ったからです。ただし、絶対に第三者に見られないことと、必ず奴らに勝ってください」
「承知した」俺はできるだけかっこよく返答したつもりだが、内心思いつきで提案しただけだったので、まさかこんなことになるなんてとかなり焦っていた。
「それでは、他の人にバレないところに案内するのでついていってください」ネルはそういいと俺の手を取って歩き始めた。移動した場所は旧校舎の中庭だった。なるほど、確かにここは生徒があまり来ない場所だ。
「ここで特訓をしてください。だけど、中庭をあまり壊さないように。いくら人が来ないからといって、地面に大穴が空いていたら大騒ぎですからね」
「え? まさかの自主練? フェアリーハートの使い方を詳しく教えてくれるんじゃないの?」
「使い方って・・・・・・。いいですか。旦那様がそれを使っていた時は何年も前ですから、詳しい使い方を覚えているわけがないでしょ。わかったら自主練していてくださいね」本当にこの人は俺に対して当たりが強い。しかし、特訓の許可はもらえたのだ。だったらとことんやるしかないな。
そうして、俺は一人きりでこの兵器の使い方を独学で習得しようとした。まずは的当てだ。的(石ころを)を当てるためにあのエメラルド色の鎧姿に変身した。そして、的を当てるために腕を弓に変形させて、矢(矢というより光線みたいだが)を放っていた。
すると、謎の黒紫色の波動みたいなものが横から流れてきて、台ごと吹っ飛んだ。しばらく静止して慌てて横を振り向くと瑛人がいた。なぜだかわからないが瑛人の利き手の方が悪魔の腕のような見た目になっていた。しかもヤギタイプの悪魔で毛深かった。
「エイリアンめ!! 今ここで倒してやる!」どうやら瑛人は俺のことをエイリアンだと思っているようだ。まあ、仕方ないよな。変な格好している男が光線みたいなものを手からピュンピュン出してる奇怪な光景みたら勘違いするよな。
「ああ、待て待て俺だ! 俺!」赤いボタンを押して元の姿に戻り、瑛人を落ち着かせた。
「え? 香? 何やってんだ?」瑛人はキョトンとした表情をした。うん、可愛いから許す。瑛人はしばらく考えた後にこう聞いてきた。
「香も超能力が使えるのか?」俺は笑顔で答えた。
「俺そういうの信じないから」
「いやいや、さっきの姿マジでヒーローみたいでカッコよかったぞ」
「いやこれはロボットスーツなんだ。しかも、高性能のな!!」そういうと、瑛人は目を輝かせて、「これ瑛人が作ったのか!! 凄いな!!」と言った。俺は純粋な瑛人の眼差しに罪悪感を覚えた。
「ま、まあ俺が作ったわけではないけど・・・・・・」
「え? それなら誰が作ったんだ?」
「それは・・・。企業秘密だ」
「まあ・・・それなら深くは聞かないよ」瑛人は軽く微笑んだ。
「ていうか、さっきの波動みたいなものはどうやって出したんだ?」
「僕言ってただろ? 悪魔教の家庭だって。だから悪魔の力が使えるんだ」
「・・・・・・へえ、そんなんだ」悪魔なんていない!! と否定したいのを必死に我慢して俺は頷いた。
「とにかく」瑛人はふと何かを決意したような顔をした。
「僕と香でエイリアンを倒せるんじゃないか?」瑛人にそう言われた時、俺はハッとした。
「確かに」そして、俺らは意気投合して二人で訓練をするのだった。
一方、四人の留学生は会議のように円になっていた。
「まさか香さんの他にも、あの悪魔教『スギノキ』の末裔がいるなんてびっくりしました」もう四人は瑛人が香と共闘することは把握済みだった。しかし、重大な事はそれではない。
「・・・まさか妖精の力が使えるのが彼二人の他にあと三人いるなんてね」ティラベラがそう呟いた。
「なんとかしてその三人をこの学校に呼び寄せましょう」ネルはそう呟いた。
「ねえ、速く起きなさいよ。機械バカ」そうキツい言葉を聞いて、僕颯汰は目を覚ました。普通なら傷つくかもしれないが、これはいつも通りなので僕は起き上がった。
僕のことを乱暴に起こしたのは幼馴染のリミア。ハーフの女の子だ。なんか僕に突っかかってきているが、なんだかんだで憎めないやつだからよく一緒にいる。
「ん・・・。おはよ・・・」僕が朝の挨拶をすると、リミアは深くため息をして「速く学校行くわよ」と言った。僕は重たい体を無理やり起こした。昨日夜遅くまでバイクをカスタマイズしてたので無理はない。
僕は大きなあくびをした。リミアは僕と少し距離を取り、それでいて遠すぎない距離にいた。僕らはいつもこれで登校している。でも、それもいつ続くかは正直わからない。エイリアンが攻めてきたからだ。しかし、僕は内心焦っていなかった。なぜなら、特別な力を手に入れたから。
あの力を手に入れたのはあの古い蓄音機が家の物置から出てきた頃からだった・・・・・・。
父さんは寡黙な人だった。そんな父さんに僕は男手一つで育ててもらった。それは本当に感謝しているのだが、物心ついた時から、余り父さんと話したことがなかった。
そんな父親から「物置を片付けたら、お前の好きそうなものを見つけた」と本当に古い蓄音機を渡された。
僕はその時、かなり嬉しかった。僕は電化製品の収集家なので、その始祖的存在である蓄音機に出会えてかなりウキウキしていた。
僕は早速自分の部屋にそれを持っていき、稼働させようとした。蓄音機の回線を見ようとして蓋を開けようとしたが、思っていたより固かった。
「あれ? かなり頑丈だな?」僕はそれでも速く稼働させたかったため、無理やり開けようと力を入れた。するとガバッと勢いよく開いたかと思うと、そこからプラズマが竜巻式にバチバチと発生したかと思うと、そこから鹿みたいな毛並みで、クマのぬいぐるみサイズの得体の知れない動物が現れた。
「ンハァァァッッ!! やっと出られたぜ!!」なんとその動物は勢いよく背伸びしたかと思うと、人の言葉を喋り出した。そして、俺のことを見ると不敵な笑みを浮かべて「俺のことを解放したのはお前か! 俺はグレムリン! 開けてくれたのはありがたいが、早速お前には死んでもらおう!」といきなり右手にソフトボールサイズのプラズマでできた球体を僕に投げつけようとした。
「う、うわぁ!!」僕は慌てて目を瞑ったが、一向に攻撃を受けない。恐る恐る目を開けると、グレムリンは紫色の鎖に縛り付けられていた。
「な、なぜだ!! 俺はこんな鼻垂れ小僧と契約した覚えはないぞ!!」僕は何がなんだかわからなかったが、どうやら命は助かったらしい。僕はこの生き物はどういった存在なのか知りたかったので、何個か質問することにした。
「・・・・・・君はどういった類の生き物なのかな?」
「何!? 『生き物』!? 俺をそんなものと一緒にするな!! 俺は精霊だぞ!!」
「精霊?」
「そうだ!! 俺は電気妖精のグレムリン!! 電気を使える高貴な存在なんだぞ!!」
僕は「グレムリン」という名前を聞いてハッとした。第二次世界大戦に存在したと言われている精霊のことを思い出した。戦闘機の配線を主食としているらしい。そんな精霊が目の前にいるというのだ。
「俺はもう何百年も生きてるんだぞ!! そんな失礼は許さないんだぞ!!」
「でも、君は第二次世界大戦に誕生したんでしょ? 人間なら長生きかもしれないけど、正だとそんなに経ってないんじゃない?」
「何だと! なんでそんなにお前は失礼なんだ! いいから契約を解け!!」
「だからさ・・・。君のいう契約って何?」
「何? この鎖はお前の無意識なのか?」僕はグレムリンが何を言っているのか、わからなかった。ていうか、今日は一度にいろんなことが起こりすぎだ。
「契約というのは精霊と人間がやる行為だ。精霊は人間と契約したら、その人間絶対に逆らってはいけないのだ」
「へぇ、そうなんだ。でも、僕は君と契約した覚えはないよ」
「だから俺も驚いている。だが、なぜだかわからないが、俺とお前は契約しているようだ」僕は困っていた。こんな得体の知れない生き物と契約しても、良いことなんて何もない。僕が狼狽えているとグレムリンは立て続けに言った。
「こうなってしまっては仕方ない。お前に従おう。だから、この鎖を解いてくれないか?」
「いや・・・。家の父さんペット禁止だから・・・・・・」
「ペットとはなんだ!! 俺はペットじゃない!!」
「ああ、ごめん。そんなつもりはなかったんだ」
「・・・まあ、心配には及ばない。俺ら精霊は普通の人には見えない」
「え? じゃあなんで僕は君のことが見えてるの?」
「それはお前が普通の人ではないからだ。人間の中には精霊が見えて、精霊を従えている人間がいるんだ。しかし、驚いた。そんな人間は中々いないんだ。そんな人間に俺は捕まっちまったのか。ついてねえぜ」
「えぇ・・・。僕はそんな大層な人間じゃないよ」
「じゃあなんで俺はお前に逆らえないんだよ!! お前が只の人間だったらとっくにエナジーボールで焼き殺しているぜ!!」グレムリンは憤っていた。エナジーボールとはさっき、僕に投げつけようとした。プラズマの球体のことだろう。どうやら僕は一歩間違えてたら死んでいただろう。
とにかく、これ以上この生き物を怒らせたら、さらに面倒くさいことになると思ったので、受け入れることにした。丁度良いことに父さんには見えないらしいから、おそらく大丈夫だろう。
「わかったよ。これからよろしくね。グレ・・・ムリン?」
「グレムリンという名前は語呂が悪い。略して『グリン』と読んでくれ」
「りょうかい」まだ僕は夢を見ている可能性が頭から離れないが、とりあえずこの変な生き物と暮らすことになったが、ずっとペットを飼いたかったので、正直嬉しかった。まさか蓄音機と珍しいペットが手に入るなんて、棚から牡丹餅だ。この時の僕はやたらと浮かれていた。そうこの時は・・・。
今日、僕は学校から帰って自分の部屋に入って時の景色に一瞬思考が停止した。グリンが僕の電化製品コレクションの中の三つをバリバリと食っていたのだ。しかも、どれも高価なものだった。
「え!? 何してるの!?」
「何って・・・。食事してるんだよ」
忘れていた。グレムリンは電気を主食にしていたのだ。だからお構いなく電気系統を食べていたんだろう。だけど、居候している身で相手のものを勝手に食べるなんて、頭がおかしい。
「何で勝手に人のものを食べるんだよ!!しかもこれ全部高価なものだったんだぞ!!」僕は怒っていたが、グリンは気にも留めず咀嚼を続けた。
「知らねえよ。そもそも、美味しそうなものを置いてるのがダメなんだよ」グリンは少しも悪びれることなく吐き捨てた。僕はグリンの傍若無人な態度に頭が来て、無意識に手を振り上げた。すると、グリンに暴力を振るうつもりはなかったのだが、振り上げた手の動きに従って、グリンが勢いよく天井にぶつかった。
バタンッ!!
「痛え!? おいお前!! 俺のことを従えてるからってそりゃねえだろう!!」僕はそんなつもりはなかったが、天井に張り付いたままのグリンを見て、ニヤリと笑い。今度は勢いよく手を下に振り下ろした。思っていた通り、グリンは地面にぶつかった。
「いて!? 痛い! 痛い!」痛がるグリンを無視して、僕は手を上げ下げした。
バタンッ、ドタンッ、バタンッ、ドタンッ!!
「痛、痛い!! わ、悪かった。悪かったよぉ!!」
「判ればいいんだ」僕は手を止めた。止めたところが天井の位置だったのでグリンは真っ逆様に落ちて、地面にぶつかった。
「イッター!? オメエ、流石にやりすぎだぞ!?」
「僕は精霊のことには詳しくないけど、こんなことで死なないでしょ」
「うっ、確かにそうだけど・・・」
「とにかく、勝手に僕のものを食べないでくれる?」
「わかったよぉ。でもよぉ。俺は電気以外のものは食べれねえんだ。何も食べるなはあまりにも酷だぜぇ」グリンは泣きそうな顔になった。う〜ん流石に可哀想だなぁ。でも、ここにあるものは一個も食べさせたくないしなぁ。僕がそう思っていると、とあるものが目に映った。それはDVDプレイヤーだった。僕はそのDVDプレイヤーに入っていたDVDを取り出した。入っていたDVDは「パリの休日」名作の映画らしいのだが、白黒映像が見にくくて、僕は楽しめなかった代物だ。そのDVDをグリンに見せた。
「これは食べれる?一応、電気に関係するものだけど」グリンは余り食べるのに気が向いてないらしかった。
「えぇ、こんな出来損ないのバームクーヘンみたいなもの食べたくねえよぉ。でも、食べるしかないかぁ」彼は渋々それを口に入れた。すると・・・
「ウマァァ!?」グリンは一口食べた瞬間に飛び跳ねた。どうやら抜群に美味しかったらしいのだ。
「良かった!! じゃあこれを主食にしよう!!」DVDは映画は高いが、なんにも入ってないマジのやつは安い。しかも、ケースに何百個も入っているのが多いため、グリンの食糧問題は解決しただろう。
「ていうか、さっきはごめんね。怒っていたとはいえ、やりすぎた」
「俺も・・・・・・。悪かったよ(小声)」
僕らはお互い謝り合った。色々と不安なグレムリンとの生活だが、ここから何日も経った時も、今のところはかなり上手くいっているのだ。
「・・・・・・ねえ? 何ぼんやりしてるの? 大丈夫?」思い出に浸っていると、リミアが話しかけてきた。僕はハッとする。
「いやーごめんごめん。ちょっと夜中までバイク弄ってたから寝不足でさ」それを聞くと、リミアはまたため息をした。
「ハァー、勘弁してよね。あんたが私の唯一の幼馴染なんだから、過労で倒れないようにね」
「はーい。わかったよ」リミアは言葉はきついが、なんだかんだで僕のことを気にかけてくれるから憎めない。今日僕はいつものように授業を受けて、授業が終わった。エイリアンが攻めてくるのに備えるために授業は短くなっているので、放課後はまだ昼真っ盛りだった。
リミアは追加で部活があるため、僕は一人で帰っていた。すると、帰り道にグリンがいた。
「グリン!! 家を抜け出してきたの?」
「何だよ。何でそんなに驚くんだよ。別に家からそんなに離れてないから、別に良いだろ?」
「まあ、それはそうだけど・・・・・・」
「とにかく、あのギラギラのバウムクーヘンは用意したか!?」
「ああ、DVDね。もちろん、ケースごと買ってきたよ」それを聞くとグリンは空中でクルリと一回転した。
「やったぜ!! 丁度腹が減ってたんだ!!」
「ハハ、家に帰ったらあげるよ」僕らはそう会話しながら、帰路についていた。すると、向こうから同じ学校の女子が歩いていた。僕はその娘を知っていた。一時期「めちゃくちゃ可愛い留学生が来た!!」って男子達が騒いでたっけ。僕も可愛らしい子だなって思ってた。しかし珍しいな。僕はいつもこの時間に帰っていたのだが、そこに同じ学校の人なんて、見かけたことがない。たまたまここを通ったのかな。そう思っていると、いつも騒がしいグリンがその留学生を見ると、ピタッと動きを止めた。そして、「ソウタ、気をつけろ」と一言言った。
「え? どうしたの?」
「あの女、精霊だ」
「は? そんなわけないでしょ。どこからどう見ても、人間じゃん」
「精霊は人型の奴もいるんだよ!! しかもあいつは何万年も生きてる精霊だ!!」
「貴方の言う通りですよ。私は精霊ですよ〜」グリンの言い分に疑心暗鬼になっていると、いきなり留学生ちゃんが僕らの会話に割り込んできた。
「え? 本当に精霊なの?」
「だから〜そう言ってるじゃないですか〜」にわかには信じられないがこの娘は本当に精霊らしい。
「精霊さんが何のようなの?」僕がそう聞くと、留学生の精霊さんが吹き出した。
「貴方本当はわかってるじゃないですか。私がここに来たのは・・・・・・」その娘は僕の横にいるグリンを指さして言った。
「あの精霊の力でエイリアンを倒すんですよ」当たり前だがグリンは嫌がった。
「な!? なんで俺が得体の知れない勢力と戦わないといけないんだよ!?」グリンは嫌がってたが、俺は正直乗り気だった。
「はい! お願いします!!」
「おい!? お前!! 話聞いてたか!? 僕は嫌だって言ったんだよ!!」
「わかった。じゃあ、エイリアンとの戦いに力を貸してくれたらDVDを 1ダース買ってあげる」
「・・・・・・。それ本当か?」
「うん。約束する」グリンは俯いたまま手を差し出してきた。僕はそれを握り、固い握手をした。
「この通り、僕らは貴方に協力します」
「話がスムーズに進んでよかったです。そしたら明日、旧校舎に来てくださいね」そうして僕らはエイリアンと戦うことになった。
僕は並木。僕の家はギャンブルの神フォルトゥーナを信仰していた。しかし、宗教法人というよりかは核家族内で信仰している。
僕はそのことについてはあまり嫌な気持ちにはなっていない。なぜなら、僕の親は変な神様を信仰している以外は普通の人だからだ。
ちなみに僕は神様は信じていない。信じていないが、最近僕の身体に不思議なことが起こった。それは物事の成功する確率が可視化できるのと身体能力が異常なほど上がったことだ。
テストやスポーツをする時に「何%」という数値が出てきて、本当にその確率で成功するという我ながらかなり不便な身体になったと思う。
これで唯一良かったことは身体能力が物凄く良くなったことだ。反射神経はF1レーサー並みに運動神経はプロパルクール選手くらいになった。
しかし、スポーツするときも確率で勝負するため、競争の時に追い上げて追い上げてゴールテープ前でずっこけるというようなこともあった。
なぜこのような力に目覚めてしまったのかはわからないが、この力にもかなり慣れてきた。最初は不便でしかなかったが、今はかなり使いこなしてきた。
今日も学校を終わり家に帰ろうとしたら、後ろ姿に見知った人がいたので、声をかけた。
「お〜い。早乙女さん」彼女は僕の声に気付き、オドオドしながら振り向いた。
「あ・・・。こんにちは。並木さん」僕と早乙女さんは幼馴染だ。彼女は長い髪で切れ長の目。厚い唇といった外見で本当に美人だった。さぞかしモテるだろうと思っていると思うが、彼女は度がすぎるシャイで人見知りである。その性格が仇となり、入学式での自己紹介で上手く喋れず、それから周りに変に気取っていると勘違いされ、孤立していた。
だから、仲良くしているのが僕しかいない。僕は早乙女さんの本当の良さを知っているのでどうにかしたくて、彼女の相談に親身に寄り添っている。
「最近はどう? 友達はできた?」早乙女さんは僕の問いに静かに首を振った。
「そう。残念だね・・・」すると早乙女さんは珍しく口を開いた。
「並木くんって最近ちょっと変わったよね」突然の言葉に僕は驚く。
「え? 急にどうしたの?」
「スポーツとか勉強とか、平均くらいだったのに、なんだか急にとても上手くなったよね」
「いやいや、冗談言わないでよ。だって、リレーとか、アンカーを任されたのにゴール前でずっこけてたでしょ?」
「でも、転けなければ一位になれてたでしょ?」
「そうかもしれないけど・・・。なんで急にそんな話をするの?」
「・・・・・なんだか、並木くんは遠い人間になっちゃった気がする・・・」そう言って早乙女さんは早歩きをして、僕と距離をとった。
「早乙女さん!? 本当に今日はどうしたの?」僕の問いかけに早乙女さんは答えずにそのまま行ってしまった。
「本当に今日はどうしたんだろう? なんで急に素っ気なくなったんだ?」僕は今日の早乙女さんの行動を気にしていた。さっきからずっとモヤモヤしている。
「もしかして・・・。嫌われた・・・?」嫌な考えが頭の中を巡る。でも、僕は嫌われるようなことをしてない。もしかして、何年か前に僕は忘れていて、早乙女さんは傷ついたことがあったのか?それなら謝らないと。
「あの〜すいません」思考を巡らせていると、後ろから声をかけられた。後ろを振り返ると、僕と同い年くらいの外国人の女の子がいた。
「はい。何ですか?」そう問いかけると女の子がニコリと笑って「貴方。精霊の力を使えますよね」と言った。
「何のことですか? よくわからないです」僕はヤバい奴だと思ったので、無視して速く帰ろうとした。すると女の子が僕にしか知らない情報を言った。
「貴方の行動が成功する確率が何%かわかる能力のことですよ」
「え? なんでそのことを知ってるんですか?」
「貴方のその力こそが精霊の力なのです。ちなみに私も精霊です」
「そ・・・その精霊が何のようですか?」
「決まってるでしょ? 貴方の持っている精霊の力で東京に攻めてくるエイリアンを倒すんですよ」
「いやいや!! 無理だよ!! 僕は確かに不思議な力を持っているけど、宇宙人と戦えるほど、強くはないよ!!」
「え〜。どうしてもダメですか?」
「うん!! 僕には無理!!」僕は必死に首を横に張った。すると、外国人の女の子はなんと、頭を深く下げてきた。
「どうか。お願いします」そんなことをされると断りづらくなる。
「わかったよ・・・。でも、絶対に無理だと思うけどね!!」
「そんなことありませんよ。貴方の能力はかなり強くて、確かに何分の一しか成功率がないのは、弱点かも知れません。しかし、裏を返せば「何分の一かは絶対に成功する」ということです。そう考えると貴方の能力はかなり使い勝手が良いと思いませんか?」
「まあ、そういわれるとそうかも・・・」
「じゃあ、明日ここの旧校舎に来てください」そう言って、彼女はメモ用紙を渡してきた。
「え? ここの場所。他校じゃん。僕部外者だから、行けないよ」
「そこは安心してください。私が上手くやりますから」・・・・・・本当かな。この人怪しいんだよな。まあ、いいか。きっとこの力が使えないとわかって諦めてくれるだろう。
そう思っていたのだが、普通にエイリアン達と戦うことになった。
「これで精霊の力を持つものが三人も集りまって、あと一人ですね!! これで悪い宇宙人をやっつけれますね!!」エヴはにこやかにネルに話しかけた。
「いや、後、一人の方は収集しません」ネルは思いがけない言葉を言った。それに対してリロが驚く。
「え? 何でですの?」
「だってその人は中国にいますもん」ネルは半分諦めたような顔をした。
「・・・・・・じゃあ、この四人で頑張るしかないのね」ティラベラはそう呟くと、ふと気になっていたことをネルに聞いた。
「なんであの男に肩入れをするの?」
「なんでって・・・・・・。それはエイリアンが攻めてきたら困るからですよ」
「でも、そうしたらヨーロッパに戻ればいいだけじゃない。いつかエイリアン達は攻めてくると思うけど、その時は私たちで返り討ちにしたらいいじゃない」
「・・・・・・」
「というより、この日本にいる今この瞬間に私たちで倒したらいいじゃない。わざわざ精霊の力を持つ人たちを集めなくても、私たちの強さだとエイリアンを倒せるんじゃないの?」
「・・・・・・私は『フェアリーハート』の可能性をもう一度、信じてみたいんですよ・・・」そう言って彼女は俯いた。
「私たち精霊は時代が進んでいくにつれて、立場が危うくなっていくんです。そんな時に精霊の力の究極系であるフェアリーハートを使いこなすものが、ご主人様の他に二人目が出てきた。そして、それに伴い他にも、精霊の力を持つものが現れた。これは、何かの運命なんです。この人たちがエイリアンに勝てば、精霊の立場が良くなると思います」
すると、ティラベラはスクッと立ち上がった。
「信じられないわ。もう一度フェアリーハートを使おうとするなんて。あの兵器はご主人様の時で終わったの」そう言ってティラベラはどこかに行ってしまった。
精霊達の間に冷たい空気感が流れた。
ここは中国・河南省。ここで僕、楽晨(ロウチェン)はとんでもないお坊ちゃんとして、16歳になった今までとにかく甘やかされた。そして、今も。
だけど、上海の大企業の御曹司ってわけではない。僕は玉皇大帝の化身として、とある宗教団体に祀られていた。
中学生になった頃にそのことに気づき、高校生になった今、この宗教はカルトではなく中国の政府公認の団体だと言うことに気づいた。
15歳の頃に僕の周りにいる人が、宗教団体ということに気づき、その宗教団体が中国政府公認ということを知り、僕には玉皇大帝の力があることに気づいた。
宗教といっても、僕の宗教は中国政府から監視されてるので、信者も幹部も下手なことはできない。この「核心道」は形だけの宗教なのだ。しかし、その宗教に熱心な人が一人。
「楽晨さん!! いい加減ツガイを見つけて来てください!!」口うるさく小言を言っているお姉さんは婉瑜(わいゆ)。僕の育ての親だ。しかし、血が繋がっているというよりは僕を育てる役に任命された人だ。
「うるさいなぁ・・・・・・。あと、ツガイって言い方やめて。僕は人間だよ?」しかし、婉瑜は納得してないみたいだった。全く困ったものだ。
「わかりました。ツガイという呼び方はちょっとあれでしたね・・・・・・。訂正します!! しかし、子孫を残すというのは速い方が良いのです!!」彼女は赤い長髪と赤いメガネを触りながら、怒った。普通長髪と赤メガネは嫌な女性の代表例だが、彼女の場合はとても似合っていて綺麗だ。
「まだ僕16歳だよ? さすがの中国もそれはダメだよ」それを聞いた婉瑜はため息をついた。
「わかりました。貴方の相手は一旦諦めます。しかし・・・・・・」婉瑜は僕のことをチラッと見た。
「しかし、不思議なものですね。貴方は思春期という時期なのに、異性と手を繋いでいるところを少しも見たことがないですね」
「それはそうだよ。だって貴方が好きなんだもん(小声)」
「ん? なんて言いました?」
「何でもないよ!! でも、恋愛に関しては焦らなくても良いんじゃない? 結婚相手は成人してからでも、探せるし!」
「ふう、全く・・・・・・。仕方がないですね。」やっと小言が終わった。と安堵していたが、まだ終わってないらしく、今度はなぜか昔のことを言い出した。
「貴方の生まれたての時を見た時、こんなに小さな身体で教祖が務まるかが不安でしたが、今のところはそこそこうまく行っていて良かったです」
「いや、そんなこと言わないでよ。僕、体がちっちゃいの気にしてんだよ。あと、それモラハラになるからね」僕が婉瑜の言動に腹を立てても、彼女は全く気にも留めなかった。
「あ、そうそう、言い忘れてましたが、政府から呼び出されてましたよ」
「・・・・・・。嫌な予感がするな」
「まあ、言わずとも、日本のことでしょうね。大丈夫ですよ。貴方の持ってる玉皇大帝の力は中国最強の神様の力です。きっと無事に帰ってこれますよ」そう言って婉瑜は僕の頭を撫でた。僕はその手を跳ね除けた。
「子供扱いしないでよ。全く」そんな僕の態度にも、婉瑜はニッコリと笑った。
「呼ばれた理由はわかるかな? 楽晨?」眼鏡をクイッと押し上げて、政府の偉い人は僕に問いかけた。
「わかりますよ。エイリアンのことですね」
「そうだ。今、日本は国土の半分を宇宙人に取られている。正直、我々の計画に入ってなかったことだ。このまま、行くと我が中国にも侵略者達の魔の手が伸びていくだろう」
「・・・・・・はい」
「そこでお前には日本に行ってきて欲しい。」
「・・・わかりました」そう言って、席を外そうとすると、後ろから呼び止められた。
「ああ、待て待て、日本に行く時にとあるところに行ってきて欲しい」
「はい? それはどこですか?」
「東京都の星凪学園というところだ」
「・・・・・・それはまた何でですか?」
「私たちは日本のことについて調べた。すると、なんとお前以外に何人も不思議なパワーを持った高校生がいたんだ」
「え!?」僕は思わぬ情報に驚いた。僕の他にそんな人がいたなんて・・・。
「エイリアンだけじゃなく、そのようなものが日本にいたら、脅威になる。一緒に共闘ふりをして。どのような能力か、監視してきてほしい」
「さて、早速日本に行きますよ」婉瑜はスーツケースと白いワンピース姿とサングラスで僕のことを待っていた。
「うん!! 行こう!」乗り気な僕を見て婉瑜は少し驚いた。
「あら、結構乗り気ですね。てっきり『中国から離れたくないよ』とでもいうと思いましたけど」
「僕はいつまでも子供じゃないんだから、言われたことは守るよ」その発言を聞くと、婉瑜は驚愕して嬉しそうな顔をした。
「そうでしたか。ついに心変わりしてくれたんですね。わかりました。この婉瑜。絶対に日本での任務を成功させてみせます!!」なにか彼女は勘違いをしているようだが、僕は僕と対等な超能力者と会うのが楽しみで仕方がなく、心が躍っていた。
そうして、僕たちは空港に乗り込むのだった。
「ティラベラに謝らないといけませんねぇ・・・・・・」HR中机に頬を立てながら、ネルはそんなことを思っていた。今日は何だか、クラスメイト達がコソコソと話をしていた。
「今日は転校生が来るらしいぜ」
「噂によれば、中国の企業の御曹司らしいぜ」
「いやいや、そんな凄い奴が俺らの学校に来るかよ」ネルは「中国」という言葉にピクッとしたが、ブンブンと頭を振った。そんな都合良く望み通りの人物が来てくれるわけがない。すると、先生が「先ずは付き添いの使用人の方から来てもらいます」と言って、長身の赤毛の人が来た。物凄く、ハイレベルな美人にクラスの人達が息を呑む。本当に中国企業の御曹司というのは、本当かもしれない。
そして、例の転校生が入ってきた。体が小さく、とても可愛い顔をしており、なぜだかわからないが若干金髪が入っていた。ネルはその転校生を見て、ハッとした。自分が言ってた最後の精霊の力を持ってた人物だったのだ。
「どうもこんにちは。僕の名前は楽晨と言います。この漢字でロウチェンと読みます。よろしくお願いします」
「さて、楽晨君はどこの席に座る・・・・・・。おーい、どこいくのー?」先生が座る席を指定しようとすると、楽晨はテクテクとネルの席へと、一直線に向かって行き、手を差し出した。
「君が、ネルちゃんかな? どうか、君と仲良くしたいんだ。これからよろしくね!!」当たり前だが、クラス中が阿鼻叫喚(特に男子)になった。
「おいおい!! 抜け駆けしてんじゃねーよ!!」
「多少可愛い顔してるからって調子に乗ってんじゃねーぞ!!」
そして、ネルは楽晨の手を取り、「はい!! よろしくお願いします!」と言った。クラスの男子は絶叫した。
(まさか、本人が自分からやってくるとはおもいませんでした。でも、これで十分にエイリアンと戦えますね・・・・・・)
こうして、ネルの思惑通り精霊の力を持つものが全員揃ったのだった。
「香さんと瑛人さん。今日は貴方達に紹介したい人がいるんです」俺たちが旧校舎で訓練していると俺のことを脅迫した留学生4人がやってきた。
「ああ、そうそう。こいつは瑛人。なんとこいつは悪魔の力が使え・・・・・・」
「知ってます」
「・・・・・・」全くこの人はナチュラルに俺のことを傷つける。
「で、紹介したい人って誰?」
「この人たちです」そう言って、三人の男子高校生がやってきた。
「三人とも超能力者です」
「はあ? そんなわけがないじゃん」
「いや、本当です」
「いやいや、百歩譲って超能力が本当だとしても、日本にそう簡単にいるわけないじゃん」
「確かにそう思うのも仕方がありません。しかし、本当に本当なんです。信じてください」俺はネルの顔を見た。嘘をついているようには思えなかったので、恐らく本当なのだろう。俺は目の前がふらつきクラクラした。
しかし、どうしたものか。ネルは嘘をついているようには見えなかったが、やっぱりにわかには信じられない。だが、この三人の中でソウタは違うクラスだが、会話を交わしてはいないけど、知ってはいたから話しかけることにした。
「いやー、ソウタくん?」
「ん? なに?」
「その、本当に・・・。力を使えるの?」そのことを聞くと、急にソウタの左肩にボンッと毛むくじゃらの生き物が現れた。
「俺のことを呼んだか!? 俺こそがソウタの精霊だ!!」俺はその生き物を見ると、あまりにも精霊だと信じたくなくて、そのまま気絶した。
「え!? 柊くん!? どうしたの!?」
「なー? 何でこいつ急に気絶したんだー? 変な奴だなー」
「安心して。いつものことだから」それを見かねた瑛人が俺のことをゆすって起こしてくれた。
「香。信じたくないかもしれないけど、これは現実だよ。でも、良かったじゃんか。心強い仲間が増えたじゃん」
「あ・・・。あ、そうだな。ま、まあこれからよろしく」俺はとりあえず、挨拶をした。すると、おっとりとした顔つきの男子が話しかけてきた。
「はは、きっと香くんはこの力を信じられないんだよ。ちなみに僕もまだ疑心暗鬼さ。あ、僕の名前は並木。とりあえずはよろしくね」
「お、おうよろしく・・・」すると、並木が自己紹介したことで、触発されて後の二人と一匹が自己紹介を始めた。
「僕の名前は颯太。君とはまた別のクラスだけど、戦友として、これからよろしくね」
「俺はグレムリンこと、グリン!! めちゃくちゃ強い精霊だから、敬うようにな!!」
「よ、よろしく・・・」そして、金髪の少年も自己紹介を始めた。
「僕の名前は楽晨。中国からやってきた転校生だよ」彼は結構高校生とは思えないくらいに幼い顔つきをしていた。小学生といってもワンチャン信じるだろう。
「ん〜。なんか楽晨って言いづらいな・・・・・・。日本で言いやすい名前ってあるかな?」彼は楽晨と言う名前が俺らにとって言いにくいと思ったみたいだ。
「そうか? だったら、楽晨という発音をモジッて、ロウちゃんはどうだ?」俺はあだ名の提案をした。すると楽晨は目を輝かさせて、「ロウちゃん!! とても良い名前だね!! ありがとう!!」そう言って、ロウちゃんは何度もロウちゃん、ロウちゃんと繰り返していた。
俺がそれにほっこりとしていると、いきなり赤髪の女性が旧校舎に入ってきた。
「あ!? やばい見られちまったよ!! ネルに怒られる!!」焦っていた俺だが、ロウちゃんはいたって落ち着いて、「大丈夫だよ。あれは僕の使用人だから」と言った。
「え? そうなのか?」そして、赤髪の女性は淡々と自己紹介をした。
「どうも、私の名前は婉瑜です。もちろん楽晨さんが力を持っていることは知っています」
「へえ、使用人がいるなんてロウちゃんは金持ちなんだな」
「いやいや、それほどでもないよ。でも、婉瑜って名前も言いづらいな・・・・・・。」ロウちゃんは腕組みして考えた後に自分の使用人にもあだ名をつけた。
「婉瑜って言い方を言いやすく、ワニって呼ぶようにしよう!!」俺はそれを聞いた時に俺は思わず吐き出した。そして、そのあだ名を聞いた婉瑜さんは冷静な顔つきから、ワナワナと怒った顔つきになった。
「何ですかその名前は!! ふざけるのも大概にしてください!!」
「え〜? 結構良い名前だと思うけどな〜? ね? みんなそう思うでしょ?」
「そうですよ!! ワニさん!! 結構良い名前だと思いますよ!!」ロウちゃんの悪ふざけに便乗するように、颯太が婉瑜さんにそう呼びかけた。それに続くように他のみんなも言い始めた。
「そうだぜ!! 俺はかなり良い名前だと思うけどな〜」とグリン。「まあ、悪くはないと思うよ」と瑛人。「あまり知られてないけど、ワニを飼うことって別に違法ではないんですよ」と並木。それらを聞いた婉瑜はかなり良い気になって、「え? そうですか? じゃあ、悪い気もしませんね。では、そう呼んでください」あまりにもあっさり折れたので、俺はおもわず、ずっこけそうになったが、なんとか持ち堪えた。
「そしたらさぁ、名前はわかったから、次はお互いの好きなもの言おうぜ」そう俺は提案し、まず自分から言った。
「まあ、俺は筋トレかな。俺は人間関係に恵まれてなくて、小さい頃にかなり揶揄われることが多かったんだ。それで、ストレス発散がしたくて、ふとした時にダンベルを持ったんだ。そしたら、アドレナリンが出てな。そして、何年もそれを続けているって感じだな」
「いいなぁ、香。お前筋トレを楽しめるような人だったんだ。」
「それほどでもないよ。そういう瑛人は何が好きだったんだっけ?」
「僕か? 僕は釣りが好きだな。深夜がよく釣れるんだ。それで、朝まで釣りをするかな」
「一人で?」
「うん。一人で」
「あぁ、可哀想に・・・・・・」
「・・・別に良いだろ!! 余計なお世話だ!!」すると、颯太も言い始めた。
「僕は電化製品や電子製品を集めるのが好きなんだよね。だから、電気を司る精霊に気に入られたと言うか」
「おう、俺が例の電気を司る精霊だ。敬え」グリンという獣が威張っていたが、普通に皆から、スルーされた。「おい!! 無視すんな!!」獣が怒っていたが、それに構わず並木も自分の好きなものを紹介した。
「僕はボードゲームが好きかな。結構な数持ってるよ」
「お、良いじゃん」
「でも、ほとんどが家族内でプレイしているかな。あ、友達がいないわけじゃないよ。でも、ボードゲームをやるほどの仲の友達がいないんだ」
「じゃあ、俺がいつか一緒にしてやるよ」
「え!? 本当に!?」すると、俺以外の奴も賛同した。
「それなら、僕も参加するよ!!」
「僕も」
「じゃあ僕も!!」それを聞いた並木はとても嬉しそうな顔をした。
「皆・・・。じゃあ、もしもやる時は一番面白いと思うボードゲームを用意しておくね!!」俺たちはゆっくりと頷いた。
「はい! はい! 今度は僕の番ね!!」ロウちゃんが元気よく手を上げた。
「僕は登山かな? 中国のデカい山を登頂した時の達成感は本当にヤバいね」
「へえ、それは凄いね。俺なんてすぐ音を上げちゃうかも」
「いやぁ、それほどでもないよ」
(普通に宗教の儀式の一環なんですけどね)ワニはそんなことを思ったが、言わないであげた。
「そしたら、早速訓練するか!」俺たちは気を引き締めた。そして、そのまま何時間も訓練するのだった。
「よし、もう時間も遅いし、ここら辺で終わるか!!」
「「「「お疲れ様でしたー!!」」」」そして、彼らはそそくさと帰ろうとした。
「ああ、ちょっと待って」俺はそれを制止する。
「はい? 何?」
「自己紹介の時に自分の好きなものを紹介してたよな?」
「香。それがどうしたの?」
「いや、みんなの好きなものである釣り竿やボードゲーム、そして俺の好きなものであるプロテインがある店があるんだ」それを聞くと、みんなは興味を示した。
「そ、そんな夢見たいなお店があるのか?」
「ふ、とりあえずついて来い」俺はドヤ顔で言い放った。
「いやー、やっぱりゼビオラは最高だな!!」俺がみんなを連れて行ったのはスポーツ用店のゼビオラだった。みんな喜んでくれるか、心配だったが、四人とも全員目を輝かさせていた。
「へー、最近はこんな釣り竿があるんだ」瑛人は釣り竿を物色していた。そして、ロウちゃんは登山用具を、後の二人は普通に商品を物色していた。
「最近は色んなプロテインがあるなぁ。え!? ピーチ味!? これは買うしかない!!」そうして、俺ら5人は楽しい時間を過ごすのだった。
「ティラベラさん。そろそろ機嫌を直してくださいよ〜」
「・・・・・・」
「ネルさんがこんなに頼んでるんですよ? 許してあげたらどうですか?」エヴがそう頼み込んだが、ティラベラは黙ったままだった。
「う、うう、ティラベラさん。私たちのことを嫌わないで・・・・・・」リロは泣き上戸で今にもギャン泣きだしそうだった。それを見てティラベラは許す気になったのか、口を開いた。
「わかったわ。一旦は許してあげる。これからも、よろしくね。あ、これ可愛い」
「良かったです。少しずつで良いので許してくださいね。さて、お店から出ましょう」そう言って四人は店を出た。
すると、向かいの店から何と香が出てきた。
「え? 香さん何をやってるんですか? 訓練は?」ネルのことを見つけた香はゲッとした顔をした。
「勘弁してくれよ。訓練なら、この五人で何時間もしたよ。だから、気休めにショッピングモールで買い物してたんだよ」
「どこで、買い物してたんですか?」
「ゼビオラだよ。逆にそっちは何のお店で買い物してたんだよ」
「ホランホランです」
「女子だな」
「そっちこそ男子ですね」お互いに何とも言えない空気が流れた。
ここは、東日本。エイリアンの占領地である。支配された人たちはどうなったかというと、魂をエイリアンが作ったカプセルに入れられて、そのカプセルが街中に散乱していた。カプセルに入れられた人たちはもう二度と戻ることがない。
そんな残酷なエイリアンたちはどんな見た目をしているというと、まるで人魂みたいな見た目をしていた。それがワーキングカーソルのようにクルクルと動いていた。
「全く東日本を占領したのにお目当ての物がないじゃねえか」彼らには口がないのだが、なぜか喋れる。
「まあまあ、このまま西日本も占拠したらいいだけの話だ」
「本当に目当ての物があるのか?」
「あるさ。ないと困るからね」
「ふっ、まあいい。西日本を攻めるには彼の力が必要だ」そういって、黒い宇宙服に包まれた兵士が出てきた。
「そう言って、もらって大変嬉しく思います」彼の名前はザイラス。主人である人魂宇宙人とは違った人型の見た目をしていた。
「お前は宇宙を股にかける暗殺者だ。俺が今までお前のことを育ててやったんだから、今回もよろしく頼むぜ」
「はい、仰せのままに」ザイラスは深々とお辞儀をした。
「はは、彼がいると百人力だな。しかし、あともうちょっとで・・・・・・」
「あともうちょっとで、精霊の力が手に入る」
「ふう、結構みんな強くなったな」
「そうだな。かなり強くなったかも」瑛人がそう答えた。他の皆も深く頷いた。
「じゃあ、休憩するか!!」
「「さんせーい!!」」そうして、俺たちは休憩した。
「そういえばさ。ずっと気になってたんだけど、香はなんであんなに金持ちなんだ?」そんなふうにロウちゃんが聞いてきた。俺は思わぬ質問に困惑した。
「え〜、香くんの家金持ちなんだ〜!!」颯太が茶化すように言ってきたが、俺は慌てて否定した。
「え? いやいや、俺の家そんなに金持ちじゃないよ!!」
「そんなわけねえよ。前に香の家に行ったことあるけど、とっても広い家でびっくりしたんだからな。言い方悪いけど、母子家庭でなんでそんなにお金があるんだ?」
「いや、大した理由じゃないけど・・・・・・」
「俺も知りたいな」並木やロウちゃんも興味津々だった。
「いやさ、俺の父さんは昔考古学者だったんだけど、父さんの亡き後に数々の考古学の団体から寄付金を貰って今の生活があるんだよね」
「・・・・・・何その鼻につく理由」
「しょうがねえだろ!! 事実なんだから!!」俺は憤慨した。それを見て周りはやれやれという反応をした。
「でも、そんなに大きい家なら、行ってみたいかも」
「確かに!! どんな大きさなのか気になる!!」ロウちゃんがウキウキではしゃいだ。
「そしたら、俺の家に今から行くか?」
「え!? 行きたい!! 行きたい!!」
「よし、じゃあ行くか」
「だったら私たちも行きたいです」
「うわっ!!」いつの間にいたのだろう。横からネルの声が聞こえて飛び起きた。ネルだけじゃなくて、留学生4人いた。
「先輩! 私たちも家に来ていいですか?」エヴがそんなことを言ってきた。
「お願いしますわ。どうか、どうかよろしくお願いします!!」リロも手を合わせて懇願してきた。
「ねえ、ネルと少しだけ話をさせて」俺はネルを呼んで、耳打ちをした。
「なにを企んだる?」
「え? 何も企んでいませんよ? あ、やっぱり異性とは一緒に遊びたくないんですか?」
「いや、そうじゃなくて、お前ら精霊だろ? 絶対にただ遊びにきたいわけじゃないだろ」
「いやいや、私たちは妖精であると同時に女子高生でもあるんです。純粋に遊びたいだけですよ」
「いいや、信用ができな・・・・・・」
「いいじゃん香くん。こんなに可愛い女の子たちが四人も参加したいって言ってるんだ。こんなに嬉しいことはないよ」
「だなー。まあいいぜ姉ちゃんたち!! 一緒に過ごそうぜ!!」颯太とグリンが女子たちに便乗した。
「ああ、わかったよ。一緒に俺の家に行こう」
「やったー!! ありがとうございます! とても嬉しいです!」・・・・・・こいつは都合のいい時だけ精霊で都合の悪い時だけ普通の女子高生か。俺は頭の中で悪態をついた。
私の名前は鈴鹿。実は私にはとある秘密があります。それは「マゾ」と言うことです・・・・・・。特に香様のあの体がたまらないのです・・・。あの腕で首を絞められたらと思うと・・・・・・。あぁ、ゾクゾクします。
そんなことを考えていると、香様が帰ってきました。
「お帰りなさいませ。香様」
「ああ、ただいま鈴鹿。友達を家に呼んでるけどいい?」
「もちろん。良いですよ」そういうと、ゾロゾロと友達さんが入ってきました。
「「お邪魔しまーす」」私はそれを見て嬉しいと思いました。まさか、香様にこんなに友達がいるなんて。そう思っていると、小娘四人が入ってきました。私はそれを見て呆然とします。
「「お邪魔しまーす」」そう言って小娘は家に入っていきました。私は唖然として、立ち尽くしました。
「で、どうする? ゲームするか?」俺は提案したが、ネルがそれを静止した。
「いや、エイリアンの基地に潜入する時の計画を教えにきました」
「・・・・・・ああ、なるほどね」なるほど。そのために俺の家に来たのか。俺は納得した。
「まず、エアの魔法で基地までテレポートさせます」
「よ、よろしくお願いします」
「あぁ、待て待て、エイリアンの基地を知っているのか?」
「エイリアンの基地は把握済みです」
「・・・・・・ふうん。やっぱり俺らは特別な力を持っているから、頼もしいってか?」俺は思わず皮肉を言ってしまった。ハッとして恐る恐るネルの方を見ると、ネルはキョトンした顔をした。
「え? 私たちも戦いますよ?」
「え!? どういうこと!?」思わず大声を言ってしまった。ネルはやれやれとした顔をした。
「大声を出さないでくださいよ。私たち四人はこれでもとても強い精霊なんですよ?」
「じゃあ、なんで俺たちも戦わないといけないんだよ!!」
「それはないよりかはマシなんだからですよ」俺はそれを聞いたとき、複雑な気持ちになった。最初からこの娘達は俺たちと戦うつもりだった。だけど、俺たちのためなのかは微妙なところだ。
「それは頼もしいね!!」颯太は喜んでいたが、俺は正直に喜べなかった。
そして、今日は計画を話し込んだ。そろそろ決行日は近いようだった。
「それでは、また連絡しますね!!」
「ええ!! それではまた明日!!」
「また明日ですね!! 先輩!!」
「・・・・・・またね」留学生四人はそれぞれ笑顔で帰っていった。まるでエイリアンと戦うのが楽しみなようだった。留学生達が帰った後に瑛人たちも帰っていった。
「瑛人・・・・・・また明日な」
「「また明日!!」」そう言って全員帰っていった。残ったのは俺一人と不機嫌そうな鈴鹿だけだった。俺は鈴鹿に言ってやった。
「あれはただの友達。なんだかんだで一番頼れるのは鈴鹿だけ」と。それを聞いた鈴鹿は顔をパッと輝かせて、どこかにいってしまった。
俺は一人で考え込んだ。・・・・・・今になってエイリアンと戦うことが怖くなるなんて思ってもいなかった。
並木は悩んでいた。早乙女さんが本当に自分のことを避けているからだ。並木は本当にどうしたら良いのかわからなかった。そして、意を決して問い詰めることにした。
「早乙女さん!! どうして僕のことを避けるの!?」早乙女さんはビクッと体を震わせ、恐る恐る口を開いた。
「だって・・・・・・並木くんは私なんかと一緒にいたくないでしょ?」
「何で!? 僕そんなこと言ってないでしょ?」
「・・・・・・私は怖いの。並木くんさえも私のことを酷く言うかもしれないって」
「僕はそんなことしないよ?」
「ご、ごめんなさい。そうだけど、やっぱり・・・・・・あ・・・いや・・・ごめんなさい」早乙女さんはとても怯えているようだった。並木は落ち着いてこう言った。
「大丈夫たよ。僕早乙女さんのこと好きだから」
「・・・・・・え?」彼女は目を丸くする。「い、今なんて?」
「だから」並木は続けて言った。「早乙女さんのことが好きなんだよ」並木は早乙女さんの手を取った。早乙女さんの顔は真っ赤になっていた。
「早乙女さん。僕は早乙女さんのことを裏切らないから信じてほしい」
「は・・・はい」早乙女さんは目がハートマークになっていた。並木も顔が自分で言っておきながら、恥ずかしさで顔が真っ赤になっていた。
その後二人は少し近く一緒に歩いた。
「いやー俺らも大分強くなったな!!」
「だね!!」そう話していると、リミアがいるのに気づいた。
「やあ!!リミア!!」そうリミアに声をかけたが、リミアは怪訝そうな顔をした。
「・・・・・・ねえ、その変な生き物はなによ」
「え!?」僕たちは驚愕した。なぜなら、グリンは普通の人には見えないはずなのだ。
「ねえ、どういうこと!? 普通の人には君は見えないんじゃないの!?」
「お、俺も知らねえよ!!」
「あら、その生き物喋るのね。ロボットかなにか?」
「そう!! ロボットなんだ!!」
「おい!! 誰がロボットなんだ」僕たちはとにかく焦っていたが、リミアは何食わぬ顔で「かわいいわね。撫でていい?」と言った。
「おい!! 誰がかわいいって!? 俺はかっこいいって・・・・・・」最初は怒っていたグリンだが、リアンに撫でられてすっかり機嫌を直した。
「可愛い。可愛い」と連呼するリアンを見て、僕は絶対にエイリアンから守ると誓った。
ちなみにグリンはふにゃけていた
「いや、エイリアンと戦うの緊張するわ!!」香は5人揃っている時に大声でそう言った。「うわ、びっくりした。確かにそうだけど、もう仕方ないじゃん」と瑛人はヤレヤレという反応をした。
「まあまあ、しょうがないものはしょうがないじゃん!!」ロウちゃんは宥めるように言った。俺はふと、気になっていることを聞いた。
「ロウちゃんってワニさんのことが好きなの?」それを聞いたロウちゃんは笑顔から曇った表情になった。
「そうだよ・・・・・・好きだよ」
「それはいいことじゃん」
「いや、よくないよ」
「それはなんで?」
「だって婉瑜は僕のこと主人として見てないから。あの人はずっと僕に支えることしか知らないし、僕のことなんて好意は持っていないよ」ロウちゃんは悲しそうな顔をした。
「ロウちゃん・・・・・・」皆、黙り込んだ。しかし、ロウちゃんは明るく切り替えて、「皆落ち込んでないで、楽しくしよう!!」と言った。
「そうだな!! 切り替えよう!!」そして、今日の訓練はこれで終わった。
そして、いよいよエイリアンと戦う日になった。「それじゃあエヴがテレポートしますね」とエヴが召喚紋を作った。そこに俺を含めて8人が乗った。すると、召喚紋が輝き出し、気づくと俺らは基地にいた。
「さあ、行こうか・・・・・・」
「ああ!! 行こう」ダッダッダ!!
「え!? 香!? まって皆で行動しようよ!!」と並木がその時言っていたらしいが、俺は気持ちが焦るあまり、一人で走り出してしまった。
ダッダッダッダ!! 「オラオラ宇宙人ども!!蹴散らしてやる!!」しかし、宇宙人に会えないまま、広い通りに来てしまった。「よーし皆・・・・・・あれ? 皆・・・・・・?」俺はようやく自分ははぐれたことに気づいた。「皆!! やばい・・・・・・どうしよう・・・・・・」俺が呆然としていると、奥から「何者だ!!」という声が聞こえてきた。
すると、奥から黒い宇宙鎧を纏った宇宙人が出てきた。
「出たな宇宙人。俺はお前を倒しにきた!!」すると、宇宙人は驚いた顔をしてこういった。
「まさか、お目当てが自分から来るとはな」
「え? どういうことだ?」
「俺たちは精霊の力を手に入れるためにわざわざ銀河系の端のところの惑星に攻めてきたんだ」
「・・・・・・なるほどな。だが、ここに攻めてきたことを後悔させてやる!!」
「後悔させられるといいな。名を名乗っておこう。俺の名前はザイラスだ」
「いや、聞いてないんだけど、まあいい。いくぜ!!」そういって俺はフェアリーハートのボタンを押した。
「全く・・・・・・。何やってんだか」ネルは呆れていた。そして、他の人たちも愚痴を言った。「あの人は私を見る目がいやらしいです!!」とエヴ。「旦那様だと思って、あの時抱きついてしまったのだわ!!」とリロ。「あの人も所詮男ね」とティラベラ。そして、男性陣も愚痴をいった。「まあ、香らしいな」と瑛人。「人の話くらい聞けよな」「だなー」と並木、グリン。「困った困った」とロウちゃん。「僕の静止も書かないで言っちゃうなんて」と並木。7人はハァとため息をついた。その時「これはこれは」という声が聞こえた。そこには毛深い宇宙人と黄色い宇宙人がいた。二人ともガタイが良かった。
「お目当てが自分から来るなんてなぁ」と毛深い宇宙人が言った。
「お目当て。どういうこと?」とティラベラが聞いた。
「そのまんまの意味だよ。俺たちはお前たちの力をアラために地球に来たんだ。地球侵略はおまけってもんさ」
「なるほど、許せないのだわ!!」リロが憤慨していると、ネルは「私たちが目当てなら逆にコテンパンにしてやりますよ」とバチバチに煽った。
「おお、そう来なくっちゃな。さあ戦うぞ!!」と毛深い宇宙人は言ったが、黄色い宇宙人は「・・・・・・」と黙ったままだった。
「クソ!! クソ!!」俺は悪態をついた。思っていたよりもザイラスが強かったからだ。
「どんなもんかと身構えていたが、拍子抜けだな」ザイラスは鼻で笑う音が聞こえた。俺は悔しかったがどうしようもなかった。正直舐めていたのだ。しかし、俺がちょっと筋肉がついた高校生で、向こうは宇宙を股にかける軍人。こうなるのはわかっていた。
だけど、俺はせめてもの反抗で鎧からビームを出したが、ザイラスは弾き飛ばした。ビームを弾き飛ばすってなんだよ!!
しょうがない。どうなるかわかんないけど、最高出力でビームを出そう。
「くらえ!!」そう言って俺はビームを出した。すると、びっくりするほど太くてデカいビームが出た。まるで〇悟空の◯め◯め波だった。
「やったか!!」俺は倒したと思い、意気揚々とした。しかし、ビームの煙が収まって行くと同時に絶望する。普通にザイラスが立っていたのだ。
「今のは驚いたが大したことないな。さあ、覚悟を決めろ」俺は呆然とした。あの時、皆とハグレなければ良かった。
「このっ!! なんて硬いんですか!!」ネルは焦っていた。正直エイリアンを舐めていたのだ。ネルの魔法を持ってしてでも、エイリアンは倒れなかった。
「これでもどうだ!!」ロウちゃんは黄金の波動を黄色い宇宙人に当てた。しかし、「・・・・・・」黄色い宇宙人は効いてないようだった。「嘘でしょ!!」そして、黄色い宇宙人はロウちゃんに向かって言った。「いやいや、待って!!」ロウちゃんはかなり焦っていたが、その時、颯太が「グリン!! やっちゃって!!」「了解!!」とエナジーボールを出した。しかし、普通に効いていなかった。そして、毛深い宇宙人の方も苦戦していた。ティラベラ、エヴが宇宙人に魔法で攻撃した。しかし、効いていなかった。
そして、並木が勇気を出して「この!!」と毛深い宇宙人にパンチをした。
「ハズレ」並木の視線には残酷にもこれが映された。
「精霊の力を持っている中には普通の人間もいるみたいですねぇ」そう言って毛深い宇宙人は並木を跳ね飛ばした。
「並木さん!!」そして、並木はあっという間に死にかけになった。
香はザイラスにとにかくボコボコにされた。これで、ザイラスが「大したことねえな」と気を抜いてくれたら香も勝機があったかもしれないが、ザイラスは自分の敵がどんなに下でも容赦しないタイプの暗殺者だったので、香はとことんやられた。
「終わりだ」そう言ってザイラスは香の首を締め出した。香は意識が遠くなる。その中で父親の幻覚を見た。
父親が突っ立っている。香はその父親に声をかけた。「父さん!! 会いたかった。ずっとあんなにこれまでの文句が言いたかったんだ!!」「・・・・・・」「俺は幼いながらもあんたのことを尊敬してたんだ!! それなのに!!」香はフェアリーハートを父親にかざして言った。「こんなよくわからないものに夢中になりやがって!! こんなもののせいで俺はよくわかんない宗教に入っている四人組に目をつけられて宇宙人と戦うハメになったんだよ!! どうしてくれるんだ!!」すると父さんは俺を指差していった。「お前がフェアリーハートの使い手になったのに何だその体たらくは!! ちゃんと頑張れよ!!」「は!?」「とにかく俺は帰るからな。頑張れよ」そうして、父さんは闇の中に消えていった。
俺は目を覚ました。まだザイラスに首を絞められていたが、俺は父親の怒りでそれどころじゃなかった。
「クソ親父めー!!」俺はザイラスの手を振り解いた。「何!?」そして、ザイラスと距離を取り、ビームを連発した。ザイラスは全て弾いたが、俺は構わず特大のビームを放った。ザイラスには少し効いたみたいで怯んだ。
俺は力がみなぎってきた。言うならばスー〇ーサ〇ヤ人だ。「うおおおおおおお!!」俺はビームも撃たずにザイラスを殴りつけた。ザイラスはプロの戦士のはずなのに、俺の勢いに怯んでいるのか、かなり喰らっていた。
そして、俺は一番強いパンチをザイラスのみぞおちに三発くらわせた。「おら!!」ドガッ、「おら!!!」ドガッ「くらえー!!」ドガッ!!
「グ・・・・・・グハッ!!」そして、ザイラスは吹っ飛んで気絶した。俺はそれをしばらく見つめ、拳を突き上げた。
「勝った!!」そして、大広間をでて、大元の宇宙人を倒そうとするのだった。
七人は大苦戦した。この二人の宇宙人は体が大きいだけじゃなく、フィジカルも相当強かった。
その時並木は死の淵を彷徨っていた。
「ああ・・・・・・僕は終わるのか・・・・・・特に人生設計とかなく普通に過ごしていたけど、ここで終わるとか覚悟が決まってないよ」そして、意識を手放そうとした途端、とある幻覚が見えた。それは早乙女さんだった。並木はハッとする。
「そうだ・・・・・・僕は早乙女さんに会わないといけないんだ。ここでくたばってたまるか!!」そして、並木は走馬灯から目覚め、起き上がった。
「おい!! 宇宙人共!! こっちを見ろ!!」黄色い宇宙人と毛深い宇宙人がこっちを向いた。
「俺が倒してやる!! かかってこい!!」毛深い宇宙人は鼻で笑った。「あなたそう言って血まみれじゃないですか? そこからどうやって私たちをやっつけるんですか?」「・・・・・・」
「まあいいです。息の根を止めてやりましょう」そして、二人がかかってきた。並木の視点では攻撃が当たる確率が30%とかなり悪かったが、並木は「必ず当てる」と覚悟を決めた。
「おら!!」と並木は拳を突き上げた。すると二人の宇宙人は数秒間フリーズしたと思うと、血飛沫をあげ、粉々になった。
それを見たネルは並木に肩を置き、「だから言ったでしょ? 貴方の能力は強いんですよ」と言った。
「すごいや!! 並木くん!! この戦いのMVPだね!!」とロウちゃんは飛び跳ねて喜んだ。
「いや、それほどでもないよ」と並木は頬をかいたがすぐ切り替えて、「それじゃあ、大元を倒しに行こう」全員が頷き走り出した。
そして、香と7人は街角でバッタリ会った。「あ、あ、あ、あ!!」香は感極まって、変な声を出した。
ネルは軽く香の頭を小突いた。「貴方ねぇ、私たち心配してたんですよ?」すると香は逆ギレした。
「お前たちどこ行ってたんだよ!! 俺一人で戦うハメになったんだぞ!!」全員総ツッコミした。「「「勝手なこと言うな!!」」」
8人は基地内を探索して、しばらくしたら、一番広いエリアに出た。すると2つの巨大なワーキングカーソルみたいなものがいた。
そのワーキングカーソルは喋りだした。「く、くそ!! まさかザイラスとA(毛深い宇宙人)とB(黄色い宇宙人)がやられるなんて!!」香はそれを見て、瑛人に耳打ちした。
「・・・・・・なあ、あれがエイリアンの親玉か? なんか思ってたんと違ったんだけど」「ああ、俺もだ」そして、ネルがハキハキと喋る。「エイリアンさん達!! 貴方達の負けです。大人しく認めなさい!!」
しかし、右の方が「ふ、お前たち。何を勝った気でいる? これでも余裕でいられるかな!!」と言った瞬間、ガラス越しの檻が落ちて、俺たちを囲った。
「・・・・・・しまった!!」とネルが言った。右の方が言った。「この檻はお前たちの精霊の力を吸い取る機械だ。これでお前たちをただの人間にしてやる!!」俺はあわてて、そのガラスを攻撃した。他の人も攻撃したがガラスは崩れない。そして、「これでおしまいだー!!」と言った瞬間、シュン・・・・・・と機械が作動しなくなった。
「あれ? なんでだ?」
「う〜ん、多分だけど・・・・・・」俺は憶測を言った。
「お前らの宇宙には精霊の力がなかったんだろ? だから未知の力に機械が作動しなくなったんじゃ?」
「・・・・・・」
そして、二つのワーキングカーソルは「ちょ、ちょっと待て!! 金なら払う!! グヘ!!」「待ってくれ!! 話し合うならわかるはずだ!! ギャァ!!」俺たちによって粉々にされた。
「よし、これで・・・・・・。勝ったぞー!!」
「「「おー!!」」」そうして見事勝利したのだった。
そして、その後、颯太は「颯太、あのモフモフの動物撫でさせて」とグリン経由で仲が良くなった。並木は「早乙女さん・・・・・・まずは手を繋ぐところから」と手を繋ぐことができたらしい。
楽晨は「楽晨様。主席から、もう少し精霊の様子を見ろとのことです」ロウちゃんは落ち着いて、「そうか。任務に全力を尽くすよ」と言っていたが、心の中では(やったー!! またみんなといられるぞ!!)と思っていたのだった。この中国絡みで色々起きるのはまた別の話。
そして、俺と瑛人は放課後に帰っていた。「ニュースでは宇宙人がいなくなって東日本を取り戻したらしい。でも東日本の人たちは・・・・・・」
「ああ、本当に残念だ」俺たちは自分たちが宇宙人を倒したとは言わなかった。だって面倒くさいし。
そして、俺たちの帰り道にはネルがいた。ネルは「お二人とも。本当にありがとうございました」と言った。
「ああ、本当にもうこの体験はコリゴリだぜ」
「多分、もう一度やれって言われても無理だね」ネルは少し残念そうな顔をしたが、「それはしょうがないですね」と言って、「だけど、精霊の力を持つのを忘れないでください。これは精霊同盟です」
「ああ、精霊同盟」そして、俺たち三人はグッドサインを作り、それぞれ帰宅した。
そして、去り際に「このフェアリーハート。よくよく見たら装飾が豪華だから質屋に売ったら結構言い値で売れるんじゃ・・・・・・」と言ったが、ネルは地獄耳だった。
「売ったら許しませんよ」
「はい・・・・・・」
ー完ー
無神論者のスーパーパワー 羽矢翼 @ppup
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