ダンジョン(敵側)無双

@Yorukuro8046

第1話 転生



 ダンジョン。


 迷宮、遺跡、洞窟。人が生存するには厳しい場所に金銀財宝が眠る場所を指す。


 それは人々にとっての資源であり、恐怖であり、興味であり、そして夢である。


 迷宮に眠る数々の人の営みを支える資源、魔物が跋扈する恐怖、未知の法則に興味をそそられ、人の身には余る夢のような財宝。


 人間にとって、ダンジョンとはなくてはならないものとなった。


 生活をするにも夢を追うにも必要不可欠となるダンジョンは、幸か不幸か世界各地に点在している上に、その数を緩やかながらにも増やしている。


 未だ微塵も解明されていないダンジョンのメカニズムも、未だ誰も目にしたこともないダンジョンの真髄も、未だどれ一つとして掌握することのできなかったダンジョンの全てを、求めるある一つの職業。


 冒険者。


 剣も魔法も、武器も防具も何もかもを使ってダンジョンの制覇を志す人間の総称。


 冒険者たる彼らは、今日もダンジョンを攻略する。


 日常と化した、死の隣。


 今日も一つ、新しきダンジョンが産まれる。




 ________________





「…成程、便利だな」


 頭の中にインプットされる


 それと同時に解明される


 、そしてあの空間の記憶を思い返して、俺は現状を整理する。


 一ノ瀬いちのせ雲雀ひばり。実年齢27歳。大手企業を自主退職した後、当日の帰宅途中に車に撥ねられ死亡。


 次に目が覚めた場所で自分の初期ステータスを割り振り、転生。先程目が覚めたこの場所で、脳にインプットされる情報を纏めながら現状を整理している最中である。


 この訳の分からない異常な状況への混乱はあの空間で済ませた。死んだことは割り切っているし、なんならこれからのとしての生活を楽しみにしている。


 さて、整理は終わった。次は現状の確認だ。


「アポート」


 ステイタス、及びマスター権限を操作する画面を表示させるワンワードを唱える。


 俺の目の前に画面ウィンドウが現れた。


『現在の【DP】は0です。

 【魔物】

 ・スライムⅠ(50)

 ・ゴブリンⅠ(50)

 ・スケルトンⅠ(50)

 【トラップ】

 ・落とし穴(70)

 ・落石(70)

 【拡張】

 ・ルーム拡張(100)

 ・ルーム増設(100)

 ・階層増設(200)』


 情報と違うものはない。


 次はステイタスだ。


『パラメーターを操作してください 残り【DP】0』

 【肉体】

 筋力_10+

 瞬発力_10+

 耐久_10+

 感覚_50+

 【魔法】

 魔力_50+

 耐性_50+

 耐性(属性)_50+』



 概ね反映されてるらしい。問題はない。


 しかし、目に見える魔力と耐性にもう少し割り振るべきだったか? 幾ら身体面の才能に強い割り振りを行ったとはいえ、魔法方面を疎かにし過ぎたかもしれない。


 過ぎたことは仕方がない。次だ。


「クローズ」


 ウィンドウを消すワンワードを唱える。


 そして俺は辺りを見渡して、と腰に手を当てて息を吐いた。


 俺の城ともなる、俺の支配するダンジョンは洞窟タイプだ。


 これは俺が選択したものであり、他には迷わせる事に特化した迷宮タイプ、財宝を秘匿、そして罠を設置する事に特化した遺跡タイプがある。


 洞窟タイプは敵を迎撃する事に特化したものだ。俺のダンジョンマスターとしてのスタンスだと、このタイプの方が都合が良い。


 今の俺のダンジョンは、出入り口が魔法陣のみの直接外に繋がる道のない大きな空洞のみ。


 ここからDPを消費すれば、部屋を大きくしたり増やしたり、更に階層を増やすことが出来る訳だ。


 そしてそのDPの手に入れ方。三つのタイプによってそれぞれ入手方法が違うが、洞窟タイプのダンジョンでは冒険者を殺す事でDPが手に入る。


 つまり、魔物も召喚できず、罠も設置できない俺に出来る事はこの身ひとつで冒険者を殺す事。


 日本生まれの俺が、戦いに身を投じる冒険者に勝てるのか。それについては五分五分だ。


 というのも、あの部屋で割り振ったパラメータがどのように作用するのか分からないのだ。


 初期DPの300ポイントをほぼ肉体の才能に割り振った俺は、謂わば感覚センスだけがずば抜けた格闘技未修の人間である。


 つまり、今の俺が強くなるにはDPを使って強くなる他に、冒険者との戦いの中で戦いに関するセンスを磨き上げていく他ならない。


 果たして上手くいくのかが、俺の賭けだ。


 人を殺す忌避、生物を殺める事に対しての畏れは不思議とない。それは体験していないから言えるとかではなく、人間の思考ではないがそう言っている。


 今の俺は人間ではない。手足二本、五指も爪もある見た目人間の少年ではあるが、確かにこの身体は人間ではない。


 …今気付いたが、何故俺は若返っているのだろうか。それに手首と足首、そして首に課せられた枷も何故あるんだ?


 そういえば知識の中に、ダンジョンマスターは必ず何かのモチーフとして生まれるケースがある。つまり俺は、五つの枷を付けられるような存在がモチーフとなった存在なのか。


 …少し、釈然としない。邪魔だし。

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