Take2 関心
「あっ…。」
あの人だ。ちょっとくすんだ金髪と、深い海のような青い瞳。
私が彼のことをじっと見つめていると、彼も私の視線に気づいたのか私の方を見た。そして、少し目を見開いて私に何か言おうとしたが、河野さんがタオルを渡しながら彼に声をかけたので、それに遮られてしまった。
私が2人の方に近づいていくと、河野さんがそれに気づいて
「ああ、ゆらちゃん。ごめんねこの雨じゃ暫くは外に出られなそうだから、少しだけ雨宿りさせてあげてもいいかな。」
と申し訳なさそうに眉毛を八の字にして言った。
「ええ、もちろんです。」
いつも通りお人好しな河野さんを見て、微笑みながらそういった。河野さんも私の笑顔に対して、ニコッと笑ってみせた。
「さあさ、おかけになって。」
河野さんはそう言って彼を席に案内した後、キッチンの方に行った。私は彼の隣の席に座り、彼から濡れたタオルを受け取った。
「…ありがとう。」
「ぜんぜん。」
彼は私の方を数秒間じっと見つめてから、
「君、この前colorのモデルやってた子だよね?」と切り出した。
「うん。やっぱり、カメラマンの人だよね。」
「そう、覚えててくれてたんだ。」
「…覚えてた。」
顔見知りなのが余計に空気を気まずくさせて、それに耐えられなかった彼は目を逸らした。
すぐ横から鼻をやさしく撫でるような雨の香りが漂ってきて、私まで雨に濡れた気分になった。そこでやっと彼から目を逸らし、テーブルの上に置いてあるガラスの飾り物を見つめた。ローズピンクの件について聞こうか考えていた。やっぱり今聞かないともう二度とチャンスがない気がして、
「ねえ。」
と声をかけるたが、ちょうど河野さんが湯気のたったお茶とおしぼりを持って出て来たので、私の声は届かなかった。
「これ、良かったらどうぞ。」
にっこり笑って河野さんが彼にお茶を差し出すと、
「え、さすがに申し訳ないです。何から何まで本当にすみません。ありがとうございます。」
と返したので、思わず
「どっちだよ。笑」
とつっこんでしまった。
すると彼はこちらに振り返ってニカっと笑ってみせた。
(うわ…。)心の中の自分がハッキリそう言ったのが分かった。外見から勝手にクール系だと判断していたが、笑顔がとてつもなく眩しい。
すごく尊いものを見たような気分になって、何度も脳内で笑顔になる瞬間を再生しなおした。
全然関わったことがない人なのに、勝手にこんなことをしてしまっている罪悪感はあったが、それ以上にもう一度見たいという欲があったのだ。
その瞬間から、すぐ隣にあるあなたという存在が気になって仕方がなかった。
もっと知りたい、もっと見ていたいと思ったのだ。
好きって言ったのはあなたじゃない 煌を逃すな @l_kira_
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