砂時計
かねおりん
砂時計
ある日おばあちゃんの家ではなくあたしの家に一枚の招待状が届いた。
送り主は母親と名乗る人からだった。
「珍しいな」そう呟いては中身を確認してみた。
そこには彼女が出演するフラメンコの舞台の日付と時間と場所が書かれた紙が入っていた。
そういえば、あたしは小さい頃バレエ教室に通わされ先生にも物覚えがいいと褒められて主役に抜擢された発表会の練習の最中、急遽塾に行かされる事になり発表会に出る事が叶わなかった事を思い出した。
元々は母親と名乗る人がバレリーナになりたいという夢があったから通わされていただけだったから特に気にもしていなかったけど。
丁度休みの日でもあるし、と彼女が出る舞台をおばあちゃんと一緒に観に行くことにした。
「あんたの母さんはこれまで色んなダンス教室に行っては次から次へとベリーダンスやら日本舞踊やらやっていたんだよ。でも、なんでだろうねぇ?あれだけ昔憧れていたバレエだけは自分ではやらなかったのは」とおばあちゃんは言う。
華やかな衣装に身を包み大勢の中の一人として舞台に立つ母親と名乗る人のダンスを見て、夢を叶えられたのならいいな。と心の中で思った。
舞台が終わると、華やかなドレスのままそれぞれの呼んだ観客のところにダンサーさんたちは舞い降りた。
母親と名乗る人は真っ先にあたしとおばあちゃんのところにやってきたので、念のため用意しておいた小さなブーケを渡した。
「来てくれてありがとう。小さな頃発表会に出させないようにしてしまってごめんね」と涙を流し、小さな箱を手渡してくれた。
「気にしてないからいいよ。ダンス良かったよ」とだけ伝えておばあちゃんちに帰った。
箱を開けてみると沢山の砂時計が入っていた。
「何で砂時計?時間は有限ってことかな」とおばあちゃんに言うと、
「さあて、こういう時は何て言うんだったかのう?くくれ?だったかのう?」と笑顔で分からない事を言っていた。
布団の中でハッ!としてググって見た。
【砂時計を贈る意味は家族の絆を深めよう】
母はとても不器用ながら気持ちを伝えてくれたんだ。家族で居たい事を。
どんなお母さんも喜怒哀楽を経験させてくれる天下無双のエンターテイナーだなと涙がこぼれた。
完
砂時計 かねおりん @KANEORI
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます