俺は天下無双の筈だった…
アオヤ
第1話
天下無双、ソレは正に俺の為にある様な言葉だ。
俺はWBDバンタム級チャンピオンの小野司。
ボクシング界で俺の名前を知らない奴はまず居ないだろう。
蝶の様に舞い、蜂の様に刺す。
ボクシングをする者は『如何にパンチを貰わずに相手に当てていくか』をみんな追求している。
俺は他のボクサーに比べパンチを貰う事が極端に少ない。
これは俺に備わった転生の才能だと思っていたが…
暫く対戦相手が見つからず試合間隔が空いた時、あるテレビ曲からダンス番組への出演のオファーがあった。
俺の蝶の様な舞いを是非テレビで披露して欲しい。
と依頼を受けて、断る理由も無いので引き受けた。
そして当日ダンスのリハーサルに参加した俺は何故かスタジオに居る多くの人々に笑われている様な気がした。
「何だ、何がおかしいと云うのだ?」
「小野さんなんだかリズムが微妙にズレてますよ」
スタッフに言われ必死に直そうとするが周りのクスクス声が益々大きくなっていく。
「何故だ? ナゼ俺は…」
そんな俺を見かねてか休憩時間を取ってくれた。
スタッフの人が俺に飲み物を渡してくる。
「そういえば小野さんって全然パンチ貰わないですよね? もしかするとコレが原因じゃないですか?」
「コレが原因って…?」
「ボクシングのフットワークにもリズムがありますよね?」
「あぁ、あるね」
「そのリズム、パンチを当てやすいリズムと当てにくいリズムがあるんです」
「そうなのか…?」
「そうなんですよ~ 素直なリズムとちょっと捻くれたリズムです。」
「捻くれた…?」
「捻くれたリズムを持ってるボクサーにはパンチを当てにくいらしいです。小野さんはボクサー歴が長いからそのリズムが染みついてるんだと思いますよ。これは直ぐには直らないと思います。だから今回のダンスは諦めましょう」
スタッフの重い一言が俺に突き刺さる。
「まさか俺の才能がマイナスに働くなんて…」
結局、俺の収録は無しで家に帰らされた。
家では妻の真希が俺のダンスを踊る姿がテレビに映る事を期待して聞いてきた。
「ねぇ、いつ放映されるの?」
「ボツに成った」
いつも温厚な妻が俺の一言でキレて俺に右ストレートをかましてきた。
試合だったら避けられたのだが…
妻の不意討ちは俺の鼻の骨を砕き鼻血が止まらなくなった。
「ボツに成ったって… いったい何をやらかしたのよ?」
「何もやってないよ!」
俺の弁明を言い訳と判断した妻は今度はアッパーカットをかましてきた。
コレも俺の顎に綺麗に入り不覚にもその場で俺はダウンしてしまった。
俺は試合中ダウンした相手選手に「そのままずっと寝てな。ほら布団に入って夢観てるみたいだろ?」なんて言っている。
今俺は正に布団に入って夢を観ている様な気分だ。
本当の天下無双は俺の嫁、真希だったのか?
俺は天下無双の筈だった… アオヤ @aoyashou
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