好きになるには理由がある

 何の取柄もない人が優しいと言う理由だけで好きになるのかと。

 そんなのあり得るわけがない。

 そこから意気投合した俺たちは激しく語り始めた。

 そもそも何もない人間がいるのかと。人は誰しも何かを持って生まれるものだ。

 そして優しいだけでモテるのなら住職とか優しいのだから、皆出家するべきだ。

 だけど現実も物語も違う。陰キャが優しい面を見せたくらいで何にときめくんだよ

 結局はギャップなのだと、それこそが心動く瞬間なのだ。

 人見知りの天才が、喧嘩の強い不良が見せる本当の優しさに心が動くと。

 完全無欠の天才が、誰隔てなく優しい子が見せる弱さに心動くと。

 優しいだけのやつに何て誰も興味がないんだよ、自分の中にある才能と優しさを見たとき。

 それが自分だけが知っているとわかったときに好きになるんだ。

 息切れするくらい語った私たち、そして落ち着いてから2人揃って一言呟く。

「だから恋人いないんだよな俺たち」

「だから恋人いないんだよね私たち」

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