鍼灸師辻友紀乃ー番外編

クライングフリーマン

-------【書き出し指定・現代ドラマ編】--------

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」


======== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。

冬馬晴喜・・・辻鍼灸治療院の常連。

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私の名前は辻友紀乃。

辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。

旦那は「腹上死」した。嘘。

本当は、がんだった。

膵臓がん、って奴だ。

私は、鍼灸師で柔道整復師だ。

お馴染みさんは、これでも多い方だ。

今日も、「お馴染みさん」の話。


冬馬晴喜の場合。「カウンセリング」も行う。

兎に角、気が弱いのだ。伝奇針が基本治療だが、治療をしながら、「身の上話」をする。

気が弱いから、還暦を迎えても、独身のままなのだろう。

冬馬の方が年上だが、後輩の幸田に接する時のように「タメ」だ。

去年、介護をしていた母親が亡くなり、私が助言した通り、行政書士を通じて、「遺産分割協議書」を「裁判所」に提出。

昨日は、実際に「代表相続」した冬馬から、冬馬の姉妹に振り込む日。コレで、預金の相続は完了だ。

遺産相続に関しては、父親の亡くなった頃から、姉婿が「干渉」していた。

今回も、遺産分割協議を行う前から、干渉していた。

冬馬は、何度も何度も悪夢を見た。9回以上って言っていた。

親族で決めた相続が気に入らず、私が紹介した(実は幸田経由だが)本庄弁護士の言うことも聞かず、最終的に夜中に冬馬の家に押し入り、冬馬を殺す。それが、いくら何でも、と自分でも納得出来うる常識とは裏腹に、悪夢にうなされてしまう。

「どやった、冬馬。」

「はい。今の所は・・・。」

「本庄先生も言うてたやろ?法律的には、何の問題もない。冬馬が勝手に作った文書を提出している訳やない。ちゃんと国家試験通った専門家が作った文書や。不服やからって、『ブータレ眼鏡』が裁判起こそうと思っても請け負う弁護士はおらん。そもそも、姉婿であって、腹違いの兄弟やない。勝手なこと言うのは性格や。ギャンブル依存症でタバコ依存症。詰まり、『自分以外の人間依存症』や。しっかりしいや。そんな他人のこと気にせんと、あんたのこと思ってくれている親族を大事にし。何かあったらな、本庄弁護士もついているし、幸田もついてる。私もな。」

1ヶ月後。『癌』だと言っていた『ブータレ眼鏡』の嘘がばれた。

本当の『癌』が見つかったからだ。抑制剤も服用せずに治る訳がない。

冬馬の姉が無知なのをいいことに、『病気で不幸な人』を演じていたのだ。

冬馬は心筋梗塞も脳梗塞も既往症にある。本当に『病気で不幸な人』は冬馬や。

しっかりしいや。私らが守ったるから。

―完―




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鍼灸師辻友紀乃ー番外編 クライングフリーマン @dansan01

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