第3話 私はどうしよう?

 私は、何者だろう?落ち着いてくると、ますますわからなくなってきた。私の体は、私を殺した女、屑婚約者の側近女アレア・ギアだということがわかった。彼女の記憶が入り込んで来た。いや、私の記憶が入り込んで来たようにも思える。私が過去に戻って彼女の体に入り込んだのだろうか?それとも、私はこの女に転生して、この17年間を生きて・・・じゃなくて、それは私の方か・・・、20年間を生きて、今前世の記憶を思い出したのだろうか?


「いつの間にか、眠っていたのね。」

 上に王太子スギイの顔があった。気分が悪くなりかけたが、何とか落ち着けることができた。

「あ、申し訳ありません。会合は。」

と身を起こした。

「大丈夫だよ。終わったよ、無事にな。まあ、もともと形の上の立場だし、いるだけでいいわけだから。そんなことより大丈夫か?気分はどうだ?」

 彼は心配そうだった。

 でも、私はフン、思いたかった。全てあんたのせいでしょう?あなたがいるからいけないのよ。それでも、弱弱しく起き上がり、

「申し訳ありません。」

「いや、いいんだ。もう帰るか?たてるか?」

「だ、大丈夫です。」

ベットから降り立ち上がろうとしたが、体と頭がまだ1本化できていないのか、立ち上がることができなかった。

 その時だった。

「何をなさっているのですか?」

と強い勢いで扉が開かれた。その荒々しい声の主は、王太子の婚約者であるロイド公爵家令嬢ステアだった、その顔が王太子の肩越しに見えた。つまり私である。見事な金髪で中背な気品のある美しい令嬢である。容姿も抜群だわ、流石に私ね。学院の白と黒を基調にした制服で着痩せしているけど、それがまたスマートに見える。


「婚約者の私との時間をなおざりにして、家臣の女の方が私より大切ですの?」

 怒っている顔も素敵だわ。でも、そんな言い方はないんじゃないのかしら?まあ、婚約者の私より、こんな女に夢中というか、優先するのがいけないのよね。あれ、彼女、私の後ろから、扉のところで隠れながら覗いている女が・・・あの寝取り男爵家娘じゃないの・・・。あれ?何時だった今日は・・・。あ、既視感が・・・男爵家娘を虐めから助けたということで、彼女とべたべたして・・・いや、あの女がまとわりついて、彼ったら私をなおざりにして・・・、あ、今日だったわ。

「自分の側近を大切にしない、主人としては失格だからね。それに彼女がいないと仕事ができないダメ王太子殿下になっちゃうからね。」

 笑って答えた。あの時も笑っていた。あー、怒り心頭の私ーが目の前にいるー。

「で、殿下。私は、もう大丈夫ですから。」

慌てて立ち上がろうとしたら、ふらついてしまった。

「危ない。今日は家まで送る。帰るぞ。」

「まあ、殿下に負担をかけて、そけでは側近失格ですわ。」

「婚約者殿。今日は我慢してくれたまえ。明日の夜、公爵邸に伺うから。」

「わかりましたわ。」

 ちょっとあなたが私の体を・・・だから気分が悪いんだったら・・・でも、殿下・・・優しいのは変わらない・・・。


 そのまま手を取って私を馬車に連れて行ってくれた、殿下は。あの糞男爵娘は、隙を見てそばに駆け寄って、

「今日はありがとうござます。」

 小柄で小悪魔的な可愛さを持つ金髪娘に、彼は、

「別に大したことはしてないから、気にするな。」

と素っ気なくそのまま彼女を残して立ち去った。その時の彼女の残念そうな顔ったらなかったわ。ざまあみろ。

 家に着くと、心配し、殿下に感謝する両親に迎えられ、

「明日は念のために休養しろ。」

と言って殿下は馬車に乗り去った。わたしは、着替えて、入浴して、軽食をとって、ベッドに横になった。 

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